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格差批判の伝道師・トマ・ピケティ氏〔PHOTO〕gettyimages
ピケティ先生に言われなくても、みんな分かっている 日本は格差が広がり、そして成長しない
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/42380
2015年03月13日(金) 週刊現代 :現代ビジネス
■その「実感」は正しい
世界的ベストセラー『21世紀の資本』の著者トマ・ピケティ氏は、日本の経済成長率向上には悲観的だ。経済成長率は、生産性の上昇と人口の増加率で決まるが、日本では、人口は減少し、生産性もマイナスが続く。
また、昨年4月から施行された消費税増税が経済に与えた打撃も大きい。早稲田大学教授の若田部昌澄氏は言う。
「消費税率の引き上げにより、GDP成長率は落ち込んでしまいました。'89年の消費税施行、'97年の増税時とくらべて大きく異なるのは、当時は増税に先立つ所得税減税などがあったのに対し、今回はほぼ純粋な増税だったことです。経済全体を痛めつけてしまったため、成長できないのです」
ピケティ氏も、日本経済の停滞による格差の拡大を危惧している。
「日本経済はここ20年、マイナス成長にあります。経済が低成長の社会では、今まで累積していた財産が極めて重要な役割を果たします。すなわち、相続できる者とできない者との間で、格差が拡大する恐れがあるのです」(1月31日の東大講義より)
ピケティ氏は、『21世紀の資本』において、アメリカやイギリスで急激にトップ1%の富裕層の所得シェアが増えていることを問題視している。
日本の場合は、トップ1%の年間所得ラインは約1300万円。これは大手企業の課長クラスの所得に当たり、低所得者との間に深刻な格差はないという意見もある。だが、前出の若田部氏は言う。
「たしかにアメリカやイギリスに比べると、日本は国民全体の富に対するトップ1%のシェアはそれほど増えていません。
けれども、トップ10%(年間所得は約576万円)のシェアを見ると、アメリカ並みに広がっています」
アメリカの大企業のCEOのような、ずば抜けた金持ちは、日本にはほとんどいない。しかし、低所得者層が増えていくことによって、本来なら中間層に分類されるような人々が、高所得者と見られてしまう。これが日本の格差社会の特徴だ。
「日本では、金持ちが増えている実感はありません。むしろ、社会全体が貧しくなっているように感じますが、実際にその通りというわけです」(若田部氏)
一方、アベノミクスは、格差解消よりあくまで経済成長を目指している。全体をしっかりと底上げしていくことで、低所得者層も含めて、みんな豊かになるという発想だ。
■どうすりゃいいのか?
では、どちらの主張が正しいのか。結論を言うと、残念ながら、どちらも正しいとは言いがたい。日本の格差社会が、さらなる低成長を生むと、慶應義塾大学教授の駒村康平氏は指摘する。
「貧困層ほど教育への投資が低下してしまうという事態が起きています。親が裕福であれば、良い学校や塾に行き、高給取りになれる。一方、学歴社会が定着した昨今では、教育におカネをかけられなければ、正規雇用が得られず、不安定な生活を強いられる。
低所得者や失業者があふれてしまえば、物を作っても買ってもらえず、物価は下落し、経済成長の妨げになる。これが日本経済の現状なのです」
日本はまさに、格差と低成長の負のスパイラルに突入しているのだ。
それでは日本はどのような政策を進めるべきか。ピケティ氏は次のように語っている。
「公的債務の支払いがかさむ状態では、日本政府が、低所得者層の教育投資をまかなうこともできません。
格差が進み、経済成長に限界があるならば、日本でも資本に対し、累進課税をさらに強化する必要があります」
次に、若田部氏が言う。
「アベノミクスは、『景気回復』と『経済成長』は非常に重視していますが、『再分配』の視点はまだ弱い。このまま、消費税を10%に引き上げれば、市場で物を買ってくれる人はますます減り、経済は回らなくなってしまうでしょう。
具体的な政策としては、低所得者に対して、給付付きの税額控除などを導入し、富の再分配が下位層にまで届く形に変えるべきです」
駒村氏は、社会保障の面から提案する。
「年金や保険制度において、正規雇用と非正規雇用の壁を取り払うなどの、機会の均等化を早急に進めることが求められます。
また、所得に応じた奨学金返済の制度などを導入し、若い世代を支援する必要があります」
「格差是正か、成長か」—こうした議論を繰り返したところで、残念ながら、現在の日本では、格差が解消することも、経済が成長することも難しい。まず、そのことを自覚しなければ、日本経済に未来はない。
「週刊現代」2015年3月14日号より
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