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[十字路]金利水没と浮輪
今や金融市場は各国中央銀行の金融緩和で水没競争状態だ。異例の国債購入やマイナス金利政策によって金利水準全体を押し下げて自国通貨を引き下げ、自らの経済浮揚を図っている。
1月に欧州中央銀行は月600億ユーロ(約8兆円)の国債購入を含む異例の量的緩和を決定。ドイツを中心に5年近辺の金利までマイナス、水没状況だ。スイスやスウェーデン等、近隣中央銀行は自国通貨高を恐れ、強力な金融緩和に踏み切り、金融市場は水没に至った。2月10日の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では自国のマンデート(政策使命)に沿う金融緩和を「歓迎する」とし、水没競争はお墨付きを得た。
ただ、各国が水没することで自国通貨安を実現するには、誰かが支えになって持ちこたえなければならない。周囲が水没する中、「浮輪」のような存在が不可欠になる。米国は今やその役割を一手に担っている。利上げ姿勢で浮輪を押し上げ、他国が水没する中で支えとなり、その結果がドル高につながっている。
過去を振り返れば、リーマン・ショックで米欧が未曽有の経済危機に陥ったとき、米国が真っ先に金融緩和を行ってドル安を促し、それに欧州も追随した。そのなか、支えの浮輪役が日本、そして中国を中心とした新興国だった。日本は痩せ我慢ながらも円高で世界の支えとなったが、その代償は大きかった。
足元は新興国まで緩和に向かう中、米国の浮輪だけに依存するのは危うさがある。ここで米国も沈んだら、世界同時沈没になってしまう。ただし、世界が水没するほどの経済環境の帰結が原油価格の下落だけに、その恩恵を享受しやすい米国へ依存せざるをえない。日本も原油安の恩恵を受けつつも、今回は自らの金利水没をばねに今しばらく米国の浮輪につかまり経済回復を期待するしかないだろう。
(みずほ総合研究所チーフエコノミスト 高田 創)
[日経新聞3月11日夕刊P.5]
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