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なぜあの製品は、標準の1.4倍の価格でもヒットしたのか?価格競争から脱出する方法
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150310-00010005-bjournal-bus_all
Business Journal 3月10日(火)6時1分配信
本連載では一貫して「顧客が買う理由を考え抜こう」ということを提唱している。筆者は講演でもさまざまな事例を紹介しながらこのテーマについて話をしているが、講演後の質疑応答や懇親会で、次のようなご意見をいただくことがよくある。
「『価格勝負から抜け出して、価値を創り出し、価値勝負にしよう』という話はとても共感します。しかし値引きの要請がとても強く、価格勝負からどうしても抜け出せないのが現実なのです」
そこで筆者は、こんな質問をしてみる。
「御社の商品の品質や価値は、他社と比べてそんなに変わらないのでしょうか?」
すると、次のような答えが多いのだ。
「当社の商品は、他社と比べてまったく違います。絶対の自信があります」
詳しく話をお伺いすると、ありがちな「製品中心」の考え方には陥ってはおらず、実際に消費者からの評価も高いようだ。
では、なぜ価格勝負に陥ってしまうのか。
この会社では、営業担当者の日常業務が、問屋や卸先メーカーといった取引先に会うことに忙殺されている。そして取引先の向こう側にいる最終消費者に会えていないのだ。言い換えれば、営業が最終消費者のリアルな声を把握できていない。
そのような状況で営業担当者が取引先担当者に「当社の製品は高い品質で、消費者からも支持いただいています」と言っても、十分な説得力がないのは明らかだ。そして取引先から、「ところで、これだけの量を買いますので値引きをよろしくお願いします」という価格交渉に陥ってしまう。
では、どうすればいいのか。
まず理解すべき点は、顧客には2種類いるということだ。「仲介者」と「最終消費者」だ。「仲介者」の代表例は問屋などの取引先。一方の「最終消費者」は「ユーザー」と言い換えてもよい。実際に商品の価値を提供する先は最終消費者なので、ビジネスではリアルな最終消費者のことを理解し、彼らが何を必要としているのかを学び続け、「是非欲しい」と常に支持されるような商品を育てることが必要なのだ。
●バリュープロポジション=お客様が買う理由
以下は、筆者が1年半前に上梓した『「戦略力」が身につく方法』(PHPビジネス新書)で紹介した事例だ(出典:「ハーバード・ビジネス・レビュー」<ダイヤモンド社/2006年10月号>掲載論文『バリュー・プロポジションへの共感を促す--法人営業は提案力で決まる』<ジェームズ・C・アンダーソン他>)。
ある樹脂メーカーが、取引先である塗料メーカー向けに新しい化学樹脂を開発した。「環境に優しい塗料が必要」と想定して環境性能に優れた樹脂を新開発し、その樹脂を使った塗料を発売したのだが、取引先の顧客(=最終消費者)である塗装業者の反応は冷ややかで、売れなかった。
そこで樹脂メーカーは、最終消費者である塗装業者を調査したところ、意外なことがわかった。当初想定していた環境性能の優先順位は、塗装業者にとって高くないこと。一方で塗装コストのほとんどは人件費で、実際の塗料コストは全体のわずか15%だったのだ。
そこで樹脂メーカーは、バリュープロポジション(「顧客が買う理由」)を見直した。塗料に用いると、乾燥時間が短くなる化学樹脂を発売したのだ。標準の1.4倍の価格にもかかわらず、塗料メーカーに飛ぶように売れた。乾燥時間の短縮によって塗装業者の生産性が向上し、人件費の削減につながったからだ。これが最終消費者である塗装業者にとって、何よりも強いバリュープロポジションだったのである。
消費者相手の商売では、最終消費者を理解する必要性は言うまでもないだろう。そして「最終消費者が何に対してお金を払うか」を理解することは、素材メーカーや問屋販売のように、直接最終消費者と接することがない業態であっても、まったく同様に重要なのである。むしろ最終消費者と接しないからこそ、最終消費者を理解することが大きな差別化ポイントになり得るのだ。
(文=永井孝尚/ウォンツアンドバリュー永井代表)
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