http://www.asyura2.com/15/hasan94/msg/283.html
Tweet |
[真相深層]加工食品、逆風下の「メーカー値上げ」
店頭で3分の2の品目値下がり 増税後、強まった節約志向
原材料高や人件費の上昇などで収益性が厳しい加工食品。出荷価格の引き上げを表明するメーカーも相次ぐ。にもかかわらず、調味料や飲料、カレールーなど主要商品のトップブランド100品目のうち、67品目は2014年の1年間で店頭の販売価格が下落した。消費増税後、一段と強まった節約志向。メーカー、小売りは身を削るコスト削減を迫られている。
省力化でしのぐ
ポップコーン最大手のジャパンフリトレー。看板商品「マイクポップコーン バターしょうゆ味」は14年の1年間で販売価格が1.0%下がった。稼ぎ頭の収益性が低下する一方、人手の確保のために膨らむ人件費。「喫緊の課題」(江原信社長)の省力化に向け、今夏までに主力の古河工場(茨城県古河市)に約3億円を投じ、人手に頼ってきた梱包工程を自動化する。
乳業大手の明治でもヒット商品の「明治ヨーグルトR―1ドリンクタイプ」の販売価格がここ1年で0.8%下落した。14年12月に稼働した新愛知工場(愛知県稲沢市)ではペットボトル容器の厚みを薄くし、プラスチック原料の使用量を2割減らした。収益確保のために製造原価の低減を積み重ねる。
定番商品「ポテトチップスうすしお味」の販売価格が3.8%下がったカルビー。食用油や包装資材などの調達コストが上昇するなか、伊藤秀二社長は「消費者は定番商品の価格に最も敏感。値上げで売り上げが落ちれば、工場の稼働率が悪くなり、結果的には逆効果」とみる。当面は出荷価格引き上げや減量による実質値上げを避ける一方、期間限定商品はコスト高を反映。適正な価格、内容量を見極めて収益確保を狙う。
PBを盾に圧力
ギリギリまでコストを削り込んだ製粉大手。「自助努力でどうにかなる水準を超えている」と取引条件の改善を訴えたものの、小売り大手の対応は「PB(プライベートブランド=自主企画)商品で棚は埋まる」と取り付く島もなかった。
メーカーによる値上げ表明が前回相次いだのは07年前後。当時と大きく異なるのは消費者に浸透したPBの存在だ。年間17兆円の加工食品市場のうち、PBは3兆円規模に達している。PBを盾に小売り大手が圧力をかけ、「一部のメーカーは商品を置いてもらうために厳しい取引条件を飲まざるを得ない状況に置かれている」(大手卸社長)。
14年4月の増税後、消費者の節約志向は一段と強まった。イオンや西友など大手スーパーが仕掛けた低価格競争は競合店が追随し、「特売日にならないと来店客が増えない」(首都圏スーパー)傾向が続く。定番商品ほど消費者は価格に敏感に反応するため、いったん下げた販売価格は「簡単には上げられない」という事情が小売り側にもある。
メーカーに一段のコスト削減を強いる一方、小売りもより安く売るための自助努力を模索している。イオンは日本貨物鉄道(JR貨物)と手を組み、14年12月から江崎グリコやネスレ日本など4社の荷物をイオンに納めるための専用列車の運行を始めた。東京―大阪間など基幹の物流をトラック輸送から鉄道輸送に切り替えることで大幅なコスト削減を見込む。
食品スーパーでも販売価格を抑えるために人件費を絞る取り組みが相次ぐ。ライフコーポレーションやヤオコーなど有力スーパーはそろって精肉加工や総菜の下ごしらえなどの作業を郊外の加工センターに集約する。店内作業の削減で人件費を抑制し、商品の品質の安定にもつなげる。
政府は脱デフレに向けて笛を吹くものの、消費者の足元の実質所得は高まっていない。消費の低迷が続くなか、値上げが受け入れられる環境にはない。一方、新興国の需要増加などで原材料相場は今後も高止まりが続く見通し。メーカー、小売りともに一層のコスト削減が迫られている。
(宮住達朗、細川幸太郎)
[日経新聞3月4日朝刊P.2]
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。