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人口減少でもGDPを維持できれば 人々は豊かになる筈だが…
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2015年03月08日 世相を斬る あいば達也
本日は多忙のため、“日本のピケティ”と噂される橘木俊詔教授の話をお届けする。通読してみたが、必ずしも似ているとまでは言えないようだ。ただ、経済成長の必要はありませんと言ってきたのが日本なのだから、今さら、成長と言われても、と云う部分は、大いに笑えた。橘木教授の話の中で、最もヒントになるのは、労働生産性の向上じゃないかと云う点だ。少ない人口でも、現在に近いGDPが維持できれば、一人当たりのGDPは向上するし、結果的に労働生産性の高い国になり、成長がなくても豊かな国に暮らす実感が得られる。
ただし、その為には教育が必要なわけで、これにはOECD中最下位にある、公教育支出(対GDP比)を改善しないと、教育の格差の拡大が広がり、少ない人口でも、同等のGDPを稼ぎ出すことが出来ない、と云うニアンスで話している。筆者は、OECDが公表している国別の労働生産性ランキングは不備だらけの算出方法なので、あまり労働生産性に重きを置く考えには賛同できない。やはり、20世紀的経済重視の価値観を改革すべきだし、その延長線上に、世界が羨む新産業や幸福感が生まれるのだと思う。
欧米型資本主義の追求路線に乗っている限り、日本人には幸福が来る確率の百倍、不幸の来る確率が高い。経済学者の考える国の経済枠組みには、つねに限界がある。現状の政治家を眺めても、期待は不可能だ。多くの人間が、こんな実生活を追いかけて、俺たち、私たちは幸せなのか?と云う心からの疑問が生まれない限り、所謂「空気」は出来上がらないのだけはたしかだろう。少々手抜きだが、本日のコラムなのである(笑)。
≪ “日本のピケティ”が見た日本の格差拡大
橘木俊詔・京都大学名誉教授に聞く
仏パリ経済学校のトマ・ピケティ教授著『21世紀の資本』(みすず書房)が日本のメディアを席巻、その余波は今も続き、格差に関する議論がヒートアップしている。ピケティ教授が政治・世論にもたらした影響や、日本固有の状況に照らした日本の格差問題をどう捉えるか。来日したピケティ教授と対談した “日本のピケティ”、橘木俊詔京都大学名誉教授に聞いた。 (聞き手は広野彩子)
――日経ビジネスオンラインは2015年2月6日に、トマ・ピケティ仏パリ経済学校教授と吉川洋・東京大学大学院経済学研究科教授の対談を 掲載しました(日経ビジネス本誌では2015年2月16日号に掲載)。吉川教授は、橘木俊詔教授が1998年に出版された『日本の経済格差:所得と資産から考える』に言及し、「橘木教授は日本のピケティだ」とピケティ教授に紹介していました。橘木教授も、東京都渋谷区の日仏会館でピケティ教授と対談されました。
橘木:私もピケティ教授も、世界の資本主義国家はどの国でも格差拡大を経験している、という認識は一緒です。ところが、視点が少し違う。彼は、お金持ちがいっぱい増えていることを格差の象徴と考えている。一方私は、お金持ちが増えたのも確かに格差拡大の1つの象徴ですが、貧困者の数が増えていることこそが重要な現象だということを言いたい。
――ピケティ教授は所得税、相続税といった「直接税」を推奨 本誌の対談でピケティ教授は、「高所得層には関心がありません。低所得層の所得がどんどん減っていることが問題だと思っています」と発言していました。
橘木:その件を日仏会館で対談した時に質問して、「あなたは所得層の上位1%や10%に注目しているが、私は低所得層が増えていることに着目しているのです」と言ったら、ピケティは「低所得層が増えていることも分かっているが、自分は書籍では高所得者に特化して書いた」と答えていましたよ。
また、消費増税にピケティ教授は反対ですが、私は消費増税が必要とのスタンスです。対談で私が質問する時に「日本はまだ福祉国家ではないので、消 費税をアップして福祉国家にする必要がある」と言ったところ、彼は、消費税より所得税で再分配すべきだ、と盛んに言っていました。ここがやはり違います。 日本は付加価値税が20%台と高い欧州の国々とは違いますので、福祉の財源がこのままでは枯渇してしまいます。
ピケティ教授が反対する理由は、消費税には逆進性(高所得層が有利になる傾向)があるからです。一方、所得税や相続税は直接税ですね。対談した時に「消費税に反対するのは、消費税に逆進性があるからですか?」と聞いたら「そうだ」と言っていましたから。
――ピケティ教授は、累進所得税と、累進的な相続税についてはグローバルに協調しなくても可能だ、1国でできると指摘していました。
橘木:「累進所得増税・累進相続増税・グローバルな累進資本課税」に関しては、アイデア自体はいいと思います。特に前者2つについては、日本でも増税の動きがありますね。しかし、最後のグローバルな累進資本課税については、現状では大変実現が難しいだろうと思います。なぜなら、資本は国外逃亡するからです。
日本でもかつて、最高所得税率が80〜90%という時代がありました。そこに高所得層の「税率が高すぎて勤労意欲が減退する」という不満が高まり、歴史的に、段階的に引き下げられてきました。
日本の累進所得税については、最高税率がこれから45%に少し引き上げられます。しかし、安倍晋三首相が国会答弁で「最高税率はこれが限界だ」と言っているのを見かけましたので、税率引き上げはこれ以上難しいかもしれませんね。
――ピケティ教授の提案する累進所得増税は、格差解消につながるのでしょうか。意欲の低下など、弊害を指摘する声も根強いです。
橘木:高所得者が、税金が高くなったら勤労意欲が減退する、という証拠はありません。税金を取られて嬉しい人はいませんので、単純に嫌だから言っているだけだと思います。今の会社の CEO(最高経営責任者)に、最高税率を50〜60%にしたらやる気をなくすのかと言ったら、私はそんなことはないだろうと思います。
口では反対するでしょうけれども、役員としてのやりがいを感じながら企業経営をしているに違いないからです。プロ野球選手が年俸を半分にしたら ホームラン数を半分に減らすかというと、そんなことはないでしょう。それと同じことです。ですから、所得税の最高税率を高めるのは悪い話ではないと思います。
■ピケティ著書の面白さは「教養面」にもあり
――橘木教授から見たピケティ教授の著作の斬新さ、インパクトはどういうものでしたか。
橘木:複雑な成長理論ではなく、 ハロッド=ドーマー理論という初期のポストケインジアンの成長理論を使って、誰にでも分かるr(資本成長率)>g(経済成長率)という不等式が世界の先進国20カ国で今も成立しており、格差発生の1つの理由だとデータで示したのが第1の貢献ですね。
もう1つは、英仏の200年以上のデータを集めて分析した、大変な労作だということです。読んでいても面白いです。私もピケティ教授の本にはいろ いろと影響を受けました。明治時代からのデータを集めて分析しようかと試みたのですが、残念ながら日本には、英仏ほど優れたデータは残っていません。 また、文学などから引用して、それをデータで実証しているのが面白い。バルザックの作品については名作の『谷間のゆり』を読んだことはあったのです けれども、『ゴリオ爺さん』は読んだことがなかったので、今回読みました。いやあ、これがとても面白いのです。短いからすぐに読めますしね。
しかしピケティ教授はもともと、経済学に携わる前に数学を修めた人なのです。しかも、22歳で経済学のPh.D.を取得している。そのうえで文学、歴史学、哲学、などからたくさん知見を持ってきている。フランス的な教養人だと思います。
――『21世紀の資本』英語版では、「Wealth(富)とCapital(資本)を互いに入れ替え可能な意味で使っている」と書いてありました。日本語では、富、資本、資産と3つの言葉を使っています。WealthとCapital、違いは何でしょう。
橘木:Capitalという言葉を使うと、経済学の文脈であれば、生産に貢献する生産要素を表す言葉と考えたらいいでしょう。経済学ではマクロ生産関数Y(GDP)はK(資本)とL(労働)の関数である、と言うぐらいですから。
しかし、Wealthというと、必ずしもそうではない。年金基金も住宅もいろいろあります。ですからピケティ教授は全部ひっくるめて「資産」として捉えている可能性が高いです。CapitalもWealthも、「資産も含む資本」と言う意味ではないでしょうか。
■勝者が富んでもトリクルダウンは起きない
――安倍政権になって、豊かな人がより豊かになれば、その恩恵が低所得層にも回ってくるという「トリクルダウン理論」を言う人が多いようです。
橘木:トリクルダウンは起きないでしょう。中国のケ小平が先豊論というのを中国で打ち出しました。強くて有能な人間がまずたくさん稼いだら、いずれ弱いものにも回るというのが先豊論でした。成功していませんね。中国は日本や米国よりも格差社会ですよ。
芸術家について、最初にヒットする人間が全部利益を持っていくということを分析したモデルがあります。Winner-take-allモデルといいます。これは企業社会でも、あてはまると思います。業界トップといえる企業は数社です。独占・寡占の状況が強いですから、結局トップの数社がすべてを持っていってしまい、下請け、孫請けにまで恩恵が及ばないという状況がありますね。
――橘木教授は、日本の格差問題について、長年追ってこられました。
橘木:日本は、戦前は大変な格差社会でした。恐らく、今の米国よりもひどい格差社会だったのではないですか。三井・三菱といった財閥のトップの年収なんて、今の米国CEOの年収なんて吹っ飛んでしまうぐらいものすごい金額だったと思います。
ところが日本の場合は、戦後にGHQ(連合国軍総司令部)が大改革をした。農地改革で土地の所有制度を改革し、地主制度を解体して小作人が自作農 になった。財閥解体で大資本家を解体した。ものすごい改革をして民主化を進めたのです。ピケティは、戦争が終わってからどの国も平等化が進んでいい国になったと言いたいようですが、日本の場合は、GHQがものすごい改革をしたから突如として平等国家になったんです。
――格差の温床というと、最低賃金も1つのテーマです。ピケティ教授は、米国での問題として最低賃金が低すぎると指摘していました。
橘木:日本だって最低賃金は低いですよ。最低賃金水準では、1カ月フルタイムで働いて、稼げるのはせいぜい13万〜14万円ぐらいでしょう。東京・大阪・名古屋・広島では、生活は無理でしょう。東京だけ最低賃金が高いですが、それでも東京でワンルームマンションを借りて、生活をしていこうとしたらかなりつらいでしょう。
――ピケティ教授は吉川教授との対談の最後で、「日本は男女不平等の解消も成長のカギだ」と強調していました。
橘木:実は、“After Piketty?”というタイトルの、私が尊敬する英国人経済学者、トニー・アトキンソン教授の論文をちょうど読み終わったところです。 彼の指摘は、「現代社会では、男女の格差が重要な指標なのに、ピケティ教授の著作ではそれについての言及がない」ということでした。これから格差問題に取り組むのであれば、男女格差というのが1つの重要な指標になるということです。
我々は通常、格差については基本的には家計単位の格差に注目しているわけです。ただこれからは、男と女と分けて分析する必要がある、ということになります。
欧州よりも男女不平等の程度が高いのですから、日本では特に大事でしょう。20代の学生たちを見ると、少しはましになっているような気もしますけれど。しかし、母子家庭の50%は生活保護受給者であるといった事実を踏まえれば、これから注目すべきは男女の格差です。
■これから注目すべきは「男女格差」
――あらゆる場面で、女性が良くも悪くもテーマですね。そういえば橘木教授は『女女格差』という本も書かれていました。
橘木:日本では、長い間、専業主婦が女性の主たる生き方でしたからね。日本で過去に議論されてきた格差は結局、全部男の格差の問題ばかりでした。しかし女性が働くのがだんだん当たり前になって、母子家庭も増えてきた中ではやはり、ここの問題に注目すべきという雰囲気はあります。世の中の半分は女性ですからね。安倍首相まで女性の活躍推進を言っているぐらいですから。
例えば企業で、幹部候補生の「総合職」、そうではない「一般職」という、女性を対象にした採用・処遇の違いが、今でも名前を変えて多くの大企業に残っています。何で?と言いたいですね。地域限定社員とか、あれも女性だけが対象のケースが多いですね。 ただ、担当している大学のゼミなどで聞くと、有能な女性を見つけて結婚したいという男性が出てきているんです。俺は専業主夫やると、働かないで家事育児をしたいということを望む人が少数ながら、います。ですから、今後は変わってくるかもしれないですね。
――格差を解消するためには、やはり経済成長が必要ということで、ピケティ教授は「人口を増やす政策が最優先だ」と指摘していました。
橘木:そこはね、私はまるで意見が違います。超少数意見かと思います。日本はもう、成長しませんよ。経済成長率gを日本で高めるのは無理です。
■日本が経済成長?無理です
―― しませんか?
橘木:しません。だって、労働力が減少するところで成長は無理です。何年も前から、少子化になるよという指摘を、数多くの専門家がしてきたのに政府はそのままにしてきた。つまりは少子化、負の成長率を選択した、と世界に宣言したわけでしょう。
人口ガタ減りのところで成長率が落ちる、家計需要も減る。それなら成長しないのは当たり前です。そこに成長率2%なんて無理だと言うのです。する とgを上げるのは無理だから、rを下げるしかない。もし成長を望むのなら、将来のために子供をどんどん増やすしかありませんが、影響が見えてくるのは今から20年後以降です。
移民について楽観的に言う人もいますが、欧州をはじめどこでも移民問題で悩んでいます。日本政府と日本人が、それを克服できる自信と覚悟があるなら移民を入れてもいいでしょう。覚悟がなければ、難しいです。
あえて成長論の側に立つと、最後の望みを託すとすれば、教育です。1人当たりの教育をしっかりやって、有能な労働者をたくさん生み出して1人当た りの生産性を高めて成長率を高めるのです。日本にも、生産性の高い労働者をたくさん育成して成長率を高くする施策は残されています。
――教育問題は、常に重要ですね。
橘木:日本の成長戦略はもうそれしかないでしょう。子供もできればたくさん産んでほしいですけれどもね。とにかく公教育支出のGDP(国内総生産)比、日本は最低レベルです。お金を出していない。親の所得で子供の教育水準や将来の職業などが決まってしまうのが、不幸にして今の日本です。ここを何とかするのが、格差解消に向けた課題でしょうね。
【橘木俊詔(たちばなき・としあき)氏 京都女子大学客員教授、京都大学名誉教授。1967年小樽商科大学卒業後、69年に大阪大学大学院経済学研究科修士課程修了。73年、米ジョンズ・ホプキンス大学大学院博士課程修了(Ph.D.)。98年、京都大学経済学博士。フランス国立統計経済研究所(INSEE)、経済協力開発機構(OECD)エコノミスト、京都大学経済研究所教授、IMF(国際通貨基金)客員研究員、京都大学大学院経済学研究科・経済学部教授などを経て現職。専門は労働経済学、応用計量経済学、日本経済論。数多くの英語・日本語・フランス語による経済学術論文・書をはじめ 『日本の経済格差:所得と資産から考える』、『格差社会――何が問題なのか』(岩波新書)、『女女格差』(東洋経済新報社)など一般向け書籍を多数出版。 (写真=菅野勝男、以下同)
≫(日経ビジネス:マネージメント・キーパーソンに聞く)
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