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サントリー「腑に落ちない」ウイスキーの値上げ
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150307-00014685-president-bus_all
プレジデント 3月7日(土)16時15分配信
■ウイスキー2割値上げの衝撃
急速に進んだ円安を背景にした輸入原材料価格の高騰などから、食品類の値上げラッシュがとまらない。「企業努力の限界を超えた」が値上げに踏み切る企業の常套句だ。しかし、他の製品と比べて極端に大きな引き上げ幅と、さらにその理由といい、サントリーによるウイスキーの値上げが「どうにも腑に落ちない」との指摘が挙がっている。
ウイスキー国内最大手のサントリースピリッツ(旧サントリー酒類)がこの4月、国内で販売するウイスキーを希望小売価格で平均約2割という極めて高率で値上げするからだ。国内ウイスキー販売は、折しも国産ウイスキーの生みの親でニッカウヰスキーの創業者、竹鶴政孝をモデルにしたNHK朝の連続ドラマ「マッサン」の人気もあって、追い風に乗っている。
しかし、サントリーの値上げが、せっかくのマッサン効果に水を差す恐れも否めない。同社は4月からの値上げの理由として、新興国を中心としたウイスキー需要の高まりと、「アベノミクス」が誘導した円安が重なり、原材料価格が高騰した点を挙げる。価格を引き上げるのは、同社ウイスキーの代名詞である高級品「響」やシングルモルト「山崎」「白州」と、輸入するスコッチウイスキーのシングルモルト「マッカラン」「ボウモア」などに限られる。
価格的には「山崎12年」の場合、税抜きで7000円から8500円と、1500円もの大幅値上げとなる。しかし、炭酸水で割るハイボール向けの普及品「角瓶」「トリス」などの銘柄は価格を据え置く。国産品の値上げは2008年以来6年ぶりで、輸入品に至っては一部を昨年3月に値上げしたばかりだ。前回値上げから原材料調達費が6〜7割上昇した点を値上げ理由に挙げる。
■数年先のコストアップ分の先取り?
いかにももっともらしい理由に、うなずく向きも多いはずだ。しかし、製品ごとに価格の引き上げと据え置きを棲み分けたところに、ハイボール人気を自ら仕掛け、ウイスキー市場の長期低落傾向に歯止めをかけた同社のしたたかさが色濃くにじむ。半面、ウイスキー党にはこの理由は限りなく腑に落ちない。
というのも、「マッサン」の視聴者なら知っての通り、ウイスキーは原酒を樽で寝かせる熟成が命であり、商品として出荷できるまでに竹鶴政孝は5年と説き、一般的には最短で3年は必要とされる。商品化までの投下資金回収に長期間を要するため、ウイスキー製造にベンチャー企業が不向きとされる所以でもある。言い換えれば、今回のサントリーの値上げは、今後数年先のコストアップ分の先取りとのそしりを免れない。この点は、ウイスキーを扱う専門家の多くも指摘する。
本来なら、ハイボール人気で復権しつつあるウイスキーのファンを一段と広げ、アルコール度数が高く自己主張も強いシングルモルトをはじめとした高級品に誘い込み、裾野拡大を図るのが供給者の努めなはずなのだ。米洋酒大手ビーム社の買収で世界大手に食い込んだサントリーホールディングスは、昨年10月にローソンのトップから“電撃移籍”した新浪剛史社長が2月16日の決算記者会見で「20年にはウイスキーで世界一を目指す」と豪語したほどだ。
そんな折も折、ようやく訪れたウイスキー人気に水を差しかねない大幅値上げに、日本で洋酒文化を育て上げた、ある種おごりに似た香りが漂う。それは、ウイスキー党を引き付けるスモーキーフレーバーとは全く異なった香りだ。スコッチウイスキーの熟成課程で、樽から年々目減りする分を「エンジェルシェア(天使の分け前)」と言う。そんな気の利いた精神は、いまのサントリーには感じられない。
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