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ソニーに「夢」「感動」を期待するのは、もうやめにしよう 10年超も構造改革の異常さ
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150307-00010003-bjournal-bus_all
Business Journal 3月7日(土)6時1分配信
ソニーは今、劇的に変わろうとしている。ただ、「夢」と「感動」のソニーではない。「普通の会社」として、再生に向けた第一歩を踏み出そうとしている。その主役は、社長の平井一夫氏というより、改革派のソニー取締役 代表執行役 EVP CFO(最高財務責任者)吉田憲一郎氏である。その改革手法は、財務畑出身の吉田氏らしく財務戦略を基本としている。
平井氏は2月18日、本社で開かれた経営方針説明会で、2015年度からの「第二次中期計画」を発表し、「17年度にROE10%以上、連結営業利益5000億円以上」の目標を掲げた。収益力すなわち「稼ぐ力」は、経営の最重要指標であり、企業の活力そのものといっていい。逆にいえば、あらためて「収益重視」を掲げた今のソニーは、それほど「稼ぐ力」が落ちているということである。
振り返ってみれば、3年前の12年4月12日に発表された「第一次中期計画」では、「グループ売上高8兆5000億円、営業利益率5%以上、ROE10%」が掲げられた。ところが、14年5月14日に発表された14年3月期の連結業績は、売上高が7兆7673億円、営業利益が265億円、最終損益が1284億円の赤字となった。中期計画の最終年となる15年3月期の最終損益は200億円の黒字が見込まれてはいるものの、中期計画の達成は難しい。
つまり、目標の未達により、15年度から成長フェーズへ移行するという思惑は完全に外れた。15年度以降も構造改革に取り組まざるを得ないわけで、03年の「ソニーショック」以来、10年を超えて構造改革を続ける結果になる。構造改革は、続けてせいぜい3年といわれるが、ソニーは10年以上続けているのだから、もはや尋常ではない。
●資本効率を重視する経営へ転換
私が「第二次中期計画」で注目したのは、大きく2つだ。ひとつは、事業を3つに分類し、投資の選択と集中を明確に示したことである。これまでも売り上げ至上主義、シェアを追うのはやめると平井氏はさんざん表明してきたが、その取り組みは中途半端だった。今回やっと方向転換を全面的かつ具体的に打ち出した。これは、多分に財務担当の吉田氏の経営判断とみていい。
まず、3つの分類の1つ目は、デバイス、ゲーム・ネットワーク、映画、音楽などの「成長牽引領域」だ。例えば、デバイスのCMOSイメージセンサーは、増産のための設備投資や技術開発投資などを行い、売り上げ成長と利益拡大を目指す。
2つ目は、デジカメ、放送機器、オーディオ機器関連の「安定収益領域」である。この領域は、着実な利益計上とキャッシュフロー創出を重視した経営を行う。
3つ目は、スマートフォンとテレビの「事業変動リスクコントロール領域」である。ここでは、事業リスクの低減と収益性を最優先した経営を行う。投下資本を抑えるとともに、他社との提携などの選択肢も検討する。
つまり、資本効率を重視する経営へと転換を図る宣言とみていいだろう。投じた資本を使ってどれだけ効率的に利益を出すかを示す「投下資本利益率(ROIC)」を各事業で導入し、事業を選別する財務的改革手法である。
●“脱エレクトロニクス”
ご存じのように、テレビ事業は14年7月、ソニービジュアルプロダクツに移管・分社化されているが、収益性が見込まれなければ他社との提携も視野に入るわけで、その行方が注目される。また、モバイル事業は14年9月、1800億円の減損損失計上が発表された。モバイル事業は、ゲーム、イメージングとともに「コア3事業」と位置づけられ、平井氏は「これからもモバイル事業は重要」と言ってきたが、もはや生き残りのためには投資の縮小もやむを得ない情勢だろう。
さらに、注目すべき点は「分社化」である。14年7月のテレビ事業分社化とパソコン事業「VAIO」の売却に続き、15年10月1日をめどに携帯音楽プレーヤー「ウォークマン」やブルーレイ・ディスク録画再生機などを扱うビデオ&サウンド事業を分社する計画だ。また、センサーをはじめとするデバイスなど、全事業の分社も進める方針である。
つまり分社化は、赤字が続くエレクトロニクス分野の自立を促すと同時に、投資の減少をはっきりと示した。エレクトロニクス分野は、ソニーを悩ませ続けてきた経営悪化の元凶だ。分社化によって収支の悪化が顕在化すれば、事業の売却も辞さない構えとみていい。ここまで“脱エレクトロニクス”が明確化されたのは今回が初めてで、画期的な決断といえる。
ソニーの主力はエレキ部門と信じて疑わないOBにとってみれば、この“脱エレキ宣言”ともいうべき方向転換は、ソニーの独自色否定につながるだけに、断腸の思いで「第二次中期計画」の発表を聞いたのではないだろうか。
分社化の狙いについて、平井氏は、「経営方針説明会」の席上、次のように語った。
「厳しい環境の中で、いかに会社を伸ばすか、自立経営することによって、危機感をもってもらう。本社に頼らず、自分たちで考え、責任をもって経営指標のもとに責任を果たしてもらいたい。経営指標をもとに説明責任を果たしてもらうことで、分社する会社がより強くなってくれることを希望しています」
分社化すれば、経営のスピード化が図られるほか、コスト削減にも効果がある。ただし、分社化をとことん進めていけば、持ち株会社の形態に限りなく近づくことになる。今のソニーならば、それもありなのかもしれない。
問題は、改革の方向性を間違えず、計画を確実に実行することである。私は、ソニーにはまだ技術を軸にした底力が残っていると思う。ブランド力もある。その意味で、「第二次中期計画」の示した方向性は正しいというか、「稼ぐ力」を身につけるしか、再建の道はないだろうと思う。そもそも、株主から預かった資金を使って効率的に収益を上げることは、上場企業の責務であり、「普通の会社」の条件である。
●「普通の会社」になったパナソニック
「普通の会社」で思い出されるのが、パナソニック社長の津賀一宏氏が12年10月の第2四半期決算発表の席上で口にした「当社は今、普通の会社ではないと、我々はしっかり自覚するところからスタートしなければいけないと考えています」という言葉である。パナソニックは12年3月期連結決算で7720億円の純損失を計上した。13年3月期連結決算には、純損失は7540億円に上った。
津賀氏は80以上あったビジネスユニットを約半分に見直し、すべてのビジネスユニットにBS(貸借対照表)やPL(損益計算書)を持たせて、自主責任経営の最小単位とした。そして、営業利益率5%以上の基準を満たせない場合は、最悪売却あるいは収束させるという厳しい手段をとった。
その結果、パナソニックは14年3月期に3期ぶりに黒字転換し、14年度の通期業績見通しでは売上高は7兆7500億円と据え置いたものの、営業利益は3100億円から3500億円に、当期純利益は1400億円から1750億円と上方修正した。また、15年度の達成を目標にしていた中期経営計画を1年前倒しで達成できる見通しだ。パナソニックは、「普通の会社」になったといえるだろう。
●ソニーのジレンマ
ソニーもまた、パナソニックと同様に、「普通の会社」でないことを自覚し、「普通の会社」を目指さなければならないのはいうまでもない。しかし、ソニーの場合、それは簡単ではない。「ユーザーに感動をもたらし、好奇心を刺激する会社であり続けます」と、平井氏は「経営方針説明会」の席上、語った。
「感動」「夢」「好奇心」は、ソニーの創業以来のDNAである。平井氏は、これからもソニーのDNAを継承していくことを約束した。ここに、実はソニーの悩ましさ、ジレンマがある。業績がここまで落ち込んでも、なお、ソニーに「夢」を求める声が内外にある。「夢」と「収益重視」は、極めて両立が難しい。いや、そこにこそビジネスチャンスがあるのだが、今のように巨大企業化して官僚化がはびこり、ベンチャースピリッツが消え失せたソニーにおいては、それを求めるのは酷だと思う。
ソニーは、99年にエレクトロニクス事業を中心に1万7000人の人員削減を発表して以来、ほぼ3年ごとに1万人から2万人の人員削減を繰り返してきた。その過程で、優秀な技術者は社を去ったともいわれている。社員のモチベーションの低下が指摘される折から、果たして「夢」のある商品をつくることなどできるのだろうか。ソニーに「夢」や「感動」を託すのは、もういい加減に終わりにしてもいいのではないか。
考えてみれば、「夢」ある企業の代表としてソニーが輝いていたのは、60〜70年代である。多くの日本人が共同創業者の井深大氏と盛田昭夫氏が育てた「トランジスタラジオ」や「ウォークマン」などのAV製品に「夢」を託し、みんなで「感動」を共有してきた。OBやソニーとともに時代を歩いたシニアにとってみれば、まさしく「僕らのソニー」である。ノスタルジーにひたりたいのはよくわかる。
しかし、時代は変わった。韓国など新興国メーカーが台頭するなかで、エレクトロニクス事業の看板を下ろさざるを得なくなった今となっては、かつての「夢」や「感動」を追うのはしょせん無理がある。はっきりいって、「夢」や「感動」は、一昔、二昔前のソニーの企業像である。それは、もはや幻想でしかない。
現に今回、「成長牽引領域」に位置づけられたのは、デバイス、ゲーム、映画、音楽である。かつて「夢」を託し、「感動」を求めた、「夢」にあふれたエレクトロニクス商品群とは大きく様変わりしている。
ソニーは、大胆な事業戦略の転換によって生き残りを図るしかない。それは、「夢」や「感動」をもたらすソニーとは大きくかけ離れているかもしれないが、ソニーが復活を遂げるためには、やむを得ない選択ではないのではないだろうか。吉田氏が、いかなる次の一手を打つのか注目される。
(文=片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家)
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