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独3%賃上げの背景に企業ブランド戦略、日本に大差
2015年 03月 6日 13:17 JST
田巻 一彦
[東京 6日 ロイター] - 「勤勉さ」をともに誇ってきた日本とドイツの経済のあり方に、大きなギャップが生じていることをご存じだろうか。財政赤字の拡大に苦しむ日本を尻目に、ドイツは今年度予算で赤字国債発行ゼロを達成。今年の主要企業の賃上げは3%台に乗せた。
マクロ面の格差には多様な議論があるだろうが、企業活動からみると、ドイツ企業が頑固に「値下げ」を拒否し、ブランドイメージの確立に力を注いでいる点について、日本企業は見習うべきだ。
<46年ぶりに赤字国債ゼロ、ドイツの底力>
第2次世界大戦の終結から70年という節目でもある今年、同じ敗戦国として国内が焦土と化し、生産設備の多くが灰燼(かいじん)に帰した日独両国の戦後の歩みに、多くの注目が集まることになるだろう。
そこから「奇跡の復興」を果たした原動力として、日独両国民の「勤勉さ」が多くの経済学者から指摘されてきた。
だが、ここにきてドイツ経済のパフォーマンスの良さが目を引き、日本経済はかなりの差を付けられている面が多くなっている。
たとえば、国と地方を合わせた債務残高の国内総生産(GDP)比を見ると、ドイツが約70%なのに対し、日本は200%を突破して250%へと向かう動きになっている。ドイツの2015年度予算案では、46年ぶりに赤字国債の発行がゼロになった。
マクロ面での日独ギャップの拡大については、多くの要素が混ざっており、アカデミズムからも有力な研究がまだ出てきていないようにみえる。
ただ、第1次大戦後のハイパーインフレと財政赤字の累増から「強い教訓」を得たドイツと、第2次大戦後に財政破綻とハイパーインフレを経験しながら、そのことがあまり語り継がれていない日本との差は、歴然としているということは言えるのではないか。
<IGメタルが3.4%の賃上げ獲得>
また、リーマン・ショック後にともに大きな落ち込みを見せた経済と企業業績でありながら、賃上げ率にも大きな「格差」が生じている。
ドイツ国内で最大の労組である金属産業労組(IGメタル)は、主要な企業や地域での交渉で今年の賃上げ率3.4%を獲得。自動車大手の一角であるフォルクスワーゲン(VOWG_p.DE)とは5日に合意した。
一方、日本では連合の要求自体がベースアップ2%以上であり、大手企業の賃上げ率が1%台に乗せれば「御の字」という声も、政府関係者や労組関係者から漏れる。
大幅なベースアップに消極的な経営者の本音には「また、リーマン・ショックのような大波が来た場合、固定費を増やすと経営の死命にかかわる」(大手企業幹部)という部分があるようだ。
<日本企業の弱点、値下げ対応>
政策当局の一部には、経営者にデフレマインドが残っており、期待インフレ率が2%にアンカーされるようになれば、2%プラスアルファの賃上げが常態化するようになるとの声もある。
ただ、大企業の経営者の中にも、将来にわたって売上高が右肩上がりで推移する自信がない、という心理もどうやらあるようだ。
その原因の1つに「国内企業同士の過当競争とその結果としての値下げマインド」(大手企業幹部)を挙げる声がある。
値下げでシェアを維持するという手法が、短期的な経営の落ち込みを回避するのに、最も手っ取り早い手法であるという認識が、かなり広がっているとみられる。
対照的に欧州の大手企業は、ブランドイメージを大切にし、販売価格の引き下げをかたくなに拒否し、値下げ競争から一線を画しているところが多い。
中でもドイツ企業には、ベンツを生産するダイムラー(DAIGn.DE)のように、「高品質」に見合った「価格の維持」にこだわっているところが目立つ。
<見習うべきブランド戦略>
たとえば、このところの円安で欧州の自動車メーカーは、日本での円建て販売価格を値上げしている。「ユーロ高/円安」で円建て価格を維持すれば、ユーロでの手取り価格は減少するが、そういう選択肢はとっていない。
それでも、欧州車の中には、販売額を増加させているところもある。今年1─2月の国産車の販売台数は軒並み前年同期比で大幅マイナスとなっているが、メルセデスベンツは同プラス7.8%と伸ばしている。
高くても売れるのは、日本国内の富裕層が、品質に見合った価格帯の設定を支持しているからではないか。「ベンツ」のブランドに対し、日本の富裕層がその価値を認めているのは、「ブランド戦略」の勝利と言えるだろう。
ブランド力で販売価格を維持できれば、求めている利益率も達成しやすくなり、設備投資、研究開発、人的投資により資金をつぎ込めるという「好循環」を作りやすくなる。
一見すると地味だが、こうした努力を着実に積み上げてきた企業と、値下げでシェアを維持するだけの企業との間には、大きな差がつくということではないか。
内部留保を積み上げているだけでは、「無能」のレッテルを張られるということに、ようやく多くの企業経営者が気付いてきた。だが、「ブランド力の開発・強化」というより高いハードルを越えようというチャレンジングな経営者は、まだ少数派のようだ。
この状況が変わった時に、日本の賃上げ率がドイツを追い抜くことも可能になるだろう。
http://jp.reuters.com/article/jp_column/idJPKBN0M206J20150306?sp=true
円売り「主役」交代、ドル127円予想は健在=鈴木健吾氏
2015年 03月 6日 18:22 JST
鈴木健吾 みずほ証券 チーフFXストラテジスト
[東京 6日] - 約2年前の2012年末、筆者は為替相場に関する中長期の基本ビューとして、「円が売られやすい状況が続く」とのメインシナリオを提示し、その理由として、1)円売りフローの増加、2)政府・日銀の政策、3)米国をはじめとする海外経済の復活、の3点を挙げた。
実際、恒常的にフォローしている12通貨との比較のなかで、円は2013年に南アフリカランドに次いで弱い通貨となり、昨年は最も弱い通貨となっている。そして、前述した3つの理由は引き続き有効であり、今年も円が売られやすい状況が継続すると考えている。
2点目の政策に関しては、「2015年度を中心とした時期に消費者物価を2%にする」との公約を掲げる日銀が年後半にも追加緩和に追い込まれるとの見方が円安バイアスにつながると予想している。また、3点目に関しても景気回復を背景に米連邦準備理事会(FRB)が6月か9月の連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げに踏み込むとの見方が市場のコンセンサスとなっており、実際にドル買いからの円売りを誘発している。
一方で、1点目のフローとしての円安圧力も継続中で、今後も円安の原動力となるだろう。だが、その内容に目を向けると、昨年後半以降、円売りフローの主役交代が進んでいる。
<貿易収支から年金基金へバトンタッチ>
そもそも、昨年半ばにかけて円売りを支えてきたフローの主役が貿易赤字だった。2010年まで30年以上にわたり円高要因として働いてきた大幅な貿易黒字が、11年の東日本大震災後の原発停止による化石燃料輸入の増加などをきっかけに赤字に転換。その後、赤字額は毎年増加の一途をたどり、昨年は12.8兆円に達するなど、3年連続で過去最大の赤字を更新した。
しかし、昨年6月には1バレル=105ドルを上回っていた原油価格が今年1月には一時45ドルを下回る水準に下落したことなどから、1月の貿易赤字は、金額こそ1兆円を上回ったものの、前年同月比では赤字額が57.9%減と昨年の4割程度の水準に激減した。
今後も原油価格が低位横ばいを続けるとみられることや、円安を背景とした輸出の増加などにより、単月ベースでの黒字化を含め、今年の貿易赤字額は昨年に比べ劇的に減少する可能性が高いとみている。年間のトータルでは赤字が継続する可能性が大きいと考えていることから、「円高要因」とまでは言えないものの「円安要因の減少」となるだろう。
こうしたなか、昨年終盤以降、貿易収支に代わり新たな円売りフローの主役として注目されているのが、昨年10月末に資産構成割合(ポートフォリオ)を変更した年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)など年金のフローだ。
2月27日にGPIFが公表した2014年10―12月期の運用実績によれば、この間、ポートフォリオにおける国内債券の割合を5.26%減少させている。12月末時点の同基金の運用資産額は約137兆円であることから、7兆円ほど国内債券を売却した計算となる。その代わり、国内株式を約2%(約2.7兆円)、外国債券を約1.3%(約1.8兆円)、外国株式を約2.7%(約3.6兆円)増加させた。外国債券と外国株式合計で約5.4兆円の円売り圧力が生じた計算だ。
GPIFが最終的な目標とする基本ポートフォリオの中心値までには、国内債券をあと8%強(約11兆円)減少させ、外国債券を約1.9%(約2.5兆円)、外国株式を約5.4%(約7.3兆円)増加させる必要がある。昨年10―12月期とほぼ同様のペースでこれが進むのであれば、年内にもこのような調整が終わる可能性が高く、外国債券・株式合計で約10兆円の円売りフローが生み出される計算となる。
加えて、GPIFは公的年金資金運用の代表的存在であることから、その他の年金基金のポートフォリオもこれに追随すると考えられる。例えば、国家公務員共済組合連合会(KKR)や地方公務員共済組合連合会、日本私立学校振興・共済事業団のほか、地方自治体が独自に運用する各種年金などだ。これらは合計で50兆円を上回るとされており、実際にはこのような資金がGPIFの後追いをすることでプラスアルファの円売りフローが追加されるとみられる。GPIFとあわせて、その規模は15兆円程度を見込んでいる。
貿易赤字は2013年が約11.4兆円、昨年が約12.8兆円規模。前述の通り今年は原油安などによって大幅に減少する可能性があるが、年金を通じた円売りフローがこれに代わって円安圧力をかけ続けるだろう。
今年に入りドル円相場が116円台から120円台といったレンジでのもみ合いが続くなか、いつ相場がバイアスを持って動き始めるかを予想するうえで、「FRBの利上げ」や「日銀の追加緩和」といったイベントのタイミングに焦点が当たりやすい状況が続いている。
しかし一方で、GPIFなどを主役とする、淡々とした円売りフローの継続がドル円の下値を支える重要な要因となっており、年後半に1ドル=127―130円程度への円安が進むというメインシナリオの重要な根拠となっている。
*鈴木健吾氏は、みずほ証券・投資情報部のチーフFXストラテジスト。明治大学経営学修士。証券会社や銀行で為替関連業務を経験後、約10年におよぶプロップディーラー業務を経て、2012年より現職。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0M20NL20150306?sp=true
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