http://www.asyura2.com/15/hasan94/msg/221.html
Tweet |
「デフレと人口減少は無関係である」(EJ第3988号)
http://electronic-journal.seesaa.net/article/415068896.html
2015年03月06日 Electronic Journal
藻谷浩介氏という人がいます。現在は、日本総合研究所主席研
究員、日本政策投資銀行特任顧問を務めるかたわら、平成の大合
併前の約3200市町村のほぼすべてを訪れ、地域復興や地域経
済の分野で研究・著作・講演を重ねている著名人です。
この藻谷氏の代表作は、次の著作で、この本は非常によく売れ
ているそうでうす。
―――――――――――――――――――――――――――――
藻谷浩介著/角川oneテーマ21
『デフレの正体/経済は「人口の波」で動く』
―――――――――――――――――――――――――――――
今日のEJはこの本の内容に関連してアベノミクスについて考
えるので、何はともあれ本の内容について知る必要があります。
たまたま神奈川新聞が、本書の内容を次のように要領よくまとめ
てくれているので、この本を読んでいない人のために、ご紹介す
ることにします。
―――――――――――――――――――――――――――――
15歳から64歳の生産年齢人口、いわゆる現役世代の減少に
注目し、日本経済の低迷を分析した。統計データから日本の輸出
力の高さを明示。内需不振については「若者の車離れ」「景気変
動」「インターネットの普及による出版不況」「地域間格差」な
どとは関係がなく、購買力のある現役世代の減少と貯蓄が消費に
回らない高齢者の激増が原因であると指摘している。
経済を動かしているのは景気の波ではなく、人口の波だとし、
「経済成長率」だけを指標にした考え方で経済を再生することは
困難で、人口構造に合わせた対策を進める重要性を訴えた。具体
的には、高齢富裕層から若者への所得移転、女性の就労と経営参
画の促進、訪日外国人観光客と短期定住者の増加による経済の再
活性化を提言する。 ──神奈川新聞 http://bit.ly/1KbHEpj
―――――――――――――――――――――――――――――
この本の発売日は、2010年6月10日で、ちょうど日本の
デフレが最も深刻になった時期であり、実にタイミングのよい発
売だったといえます。しかし、この本は、デフレについての正し
い判断を誤らせる役割も果したのです。この本の発売後「日本の
デフレは少子高齢化による生産年齢人口の減少によって引き起こ
されている」という「人口減少デフレ説」が広がったからです。
しかも、この説に乗ったのが時の白川方明総裁率いる日本銀行
なのです。日銀に対する金融緩和をやれという圧力をかわす格好
言い訳になる考えたからです。浜田宏一教授は、この「人口デフ
レ要因説」について、次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
日銀は、「人口がデフレの要因である」ことも主張したいらし
い。ところが、人口をデフレに結びつけるのは、理論的にも実証
的にも根拠のないものだ。もちろん人口は成長の要因にはなるが
実質生産に、人口あるいは生産年齢人口が影響するのは当たり前
のことである。しかし、貨幣的現象である物価、あるいはデフレ
に人口が効くというのは、経済の解剖学、すなわち「国民所得会
計」から見ても、生理学すなわち「金融論」から見ても、まった
く的外れな議論だ。医学の発達した社会で、床屋での素人談義で
患者の診断と治療法を決めようとしているのが日銀の姿なのだ。
──浜田宏一著
『アメリカは日本経済の復活を知っている』/講談社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
結論からいうなら、藻谷氏の本で述べられている「デフレ」は
経済学でいうところのデフレではないのです。デフレとは「一般
的な物価水準の持続的下落」のことであり、国際機関ではデフレ
を「GDPデフレータの2年連続のマイナス」としています。つ
まり、デフレとは「一般物価」というマクロ経済現象なのです。
これに対して、藻谷氏のいうデフレは、耐久消費財などの個別
品目の価格の下落を意味しているのです。要するに、藻谷氏のい
うデフレはミクロ現象であって、マクロ経済学でいうところのデ
フレではないのです。
ところが藻谷氏のデフレはミクロ経済学であるだけに、一般人
にはかえってわかりやすいのです。普通「物価」といえば、そう
いうものの価格を指すからです。日銀の2%物価目標における物
価が、個別品目の価格ではなく、全品目の加重平均である物価指
数であるといわれてもピンとこないのは当然のことです。
もし、人口減少がデフレの原因であるならば、現役世代の人口
が減少した国では、デフレが起きていることになります。そこで
1988年以降複数年にわたって現役世代の人口が減少した国に
おける生産年齢人口増加率とインフレ率を比較してみます。
―――――――――――――――――――――――――――――
生産年齢人口増加率 インフレ率(消費者物価)
ラトビア −2.6 % 4.8 %
リトアニア −2.3 % 4.8 %
ブルガリア −1.4 % 4.9 %
日本 −0.9 % −0.2 %
クロアチア −0.8 % 3.0 %
ハンガリー −0.4 % 5.0 %
エストニア −0.4 % 4.4 %
ポルトガル −0.3 % 1.9 %
ドイツ −0.2 % 1.6 %
セルビア −0.2 % 9.0 %
──浜田宏一/安達誠司共著
『世界が日本経済をうらやむ日』/幻冬舎刊
―――――――――――――――――――――――――――――
これによると、ラトビア、リトアニア、ブルガリアの3国の方
が日本よりも現役世代の減少が生じています。しかし、これらの
国で起きているのは、日本のようにデフレではなく、インフレな
のです。現役世代の減少でデフレになっているのは日本だけであ
るということです。 ─── [検証!アベノミクス/70]
≪画像および関連情報≫
●デフレと人口減少は関係ない/浜田宏一教授
―――――――――――――――――――――――――――
日本国内では今なお多くの識者がこの「人口減少デフレ説」
を支持している。さらには、当の日銀がこの説を支持し、あ
ろうことか白川方明前総裁までが「日銀にデフレの責任はな
い」ことの根拠としたのである。そして、「人口減少デフレ
説」を支持している人たちは、その裏にある、もう一つの大
切な事実を見落としている可能性が大きい。そもそも「現役
世代」の意味は、「働く現役世代」のことである。「働く世
代の人口」が減った時に真っ先に起こることは、「日本の生
産能力が低下すること」である。これは、「企業の供給能力
が低下すること」に他ならず、それと同時に「需要の量」も
減るのである。つまり「現役世代」が減少すれば、確かに日
本全体の需要が減り、消費や投資が減る可能性はある。「人
口減少は経済成長鈍化の原因の一つである」ことは疑いのな
い事実である。しかしながら、人口減少がデフレの原因では
決してない。仮に生産年齢人口の減少が起きた時に、日本全
体の商品・サービスの供給量は減らず、消費だけが減るとし
たら、確かに、(同じ量の商品・サービスを売ろうとするな
ら)企業は値下げをせざるを得なくなる。すなわち、デフレ
が起こる。しかし生産年齢人口が減少し、現役世代全体の消
費の量が減ったとしても、同時に商品・サービスの供給量が
減れば、消費も供給も減るわけだから、物価に変動は起こら
ないのである。すなわちデータ的にも理論的にも、「人口減
少デフレ説」は間違いである。
──浜田宏一/安達誠司共著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。