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ギリシャ財政危機でドイツ儲かる?ギリシャのユーロ離脱とロシア接近を防ぐ外交かけひき?
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150306-00010000-bjournal-bus_all
Business Journal 3月6日(金)6時1分配信
1月に総選挙が行われ、新政権が誕生したギリシャ。現在、債務問題に揺れているが、ヤニス・バルファキス新財務相が「男性的な魅力が漂う」として、ドイツで大人気のようだ。2月10日付ロイター記事によると、テレビキャスターが「バルファキス財務相は疑いなくカリスマ性に満ちた人物で、映画『ダイ・ハード6』に出てきそうだ」と発言、ファッション雑誌も「貧しくてもセクシー」と題した記事で「彼のクールなスタイルは見逃せない」と注目しているという。
EUは、先月行われたユーロ圏財務相会合で、2月末に期限が切れるギリシャへの金融支援を最大4カ月間延長することを決めた。ギリシャから提出された財政構造改革案にマーケットも反応し、欧米の主要な株価指数は最高値を更新した。しかし、この決定はとりあえず問題を先送りしただけであり、根本的な問題は何ひとつ解決していない。
IMF(国際通貨基金)のクリスティーヌ・ラガルド専務理事が言ったように、これはゴールではなく「妥当な出発点」にすぎないのだ。2月末だった期限が4カ月延びたということは、6月にまたこの騒ぎが待っているのだろうか? いや、実はもっと前にハードルが待っている。
EUとギリシャは4月末までに財政構造改革の詳細で合意することになっているが、ユーロ圏財務相会合では「ギリシャ当局に対して、より発展的で広範囲な改革リストの検討を求める」という動きがあった。要するに、「もっと具体的に踏み込め」と要求しているのだ。一見、ギリシャは時間を稼いだように見えるが、猶予はあまり残されていない。
現在、ギリシャがユーロを離脱する可能性は少ないと見られているが、仮にそうなった場合に何が起こるか、想定してみよう。ギリシャの通貨はユーロからドラクマに戻るが、そのドラクマはすぐに大暴落し、急激にインフレーションが進むハイパーインフレが起こる。物価が急上昇するので、一般市民は生活必需品も手に入りにくい状況になるだろう。
また、ギリシャがユーロ離脱を決定するためには国民投票が必要だが、それ以前に大規模なキャピタルフライト(資本逃避)や銀行の取り付け騒ぎが起こる。そして、それを防ぐには預金封鎖をするしかない。そんな事態はギリシャ国民も望んでいないだろうし、そもそも新政権はユーロ残留を明言している。最終的には、EUの支援の条件である財政緊縮策を受け入れざるを得ないだろう。
●実はギリシャの恩恵を受けているドイツ
とはいえ、EU側もそれほど強気には出られないのが実情だ。ギリシャを追い詰めて、万が一ユーロ離脱という結果になった時、「困るのはギリシャのほうだ」とたかをくくってはいられない事情がある。
それは、「ギリシャとロシアが近い」ということだ。両国は地理的に近いのはもちろん、文化的にも結びつきが深い。ロシアのキリル文字は、ギリシャ文字が起源であり、ロシアの多くの国民がギリシャ正教徒である。実際、ギリシャとロシアの経済的な「親近感」は高まっているようだ。ギリシャの新政権は、ウクライナ問題における対ロシアの追加制裁に同意しなかった。また、両国の外相会談では、ロシアはギリシャ政府から支援の要請があれば検討する考えを示している。
EUとしては、こういったギリシャとロシアの接近を看過することはできないだろう。ギリシャを「ユーロの一員」として完全に取り込み、安定させることが地政学的にもとても重要なのである。
そこで、鍵を握るのがドイツだ。ギリシャ支援に関して、最も強く財政緊縮を要求しているのがドイツである。自分たちが堅実に貯めていたお金で、なぜ放漫財政のギリシャを救わなければならないのか、という国民感情は理解できる。しかし、実はドイツはギリシャの恩恵を受けている面もあるのだ。
ドイツは、国内の景況感指数が4カ月連続で上昇するなど経済回復が著しい。その牽引役は輸出だ。2014年12月の貿易統計で、ドイツの輸出は前月比3.4%増と、14年9月以来の大幅な伸びを記録した。ドイツは今や、世界最強の貿易立国であり、かつての日本、そして中国を超える世界一の経常黒字国である。
通常であれば、経常黒字国の通貨は買われやすい。すると、自国通貨高によって輸出が徐々に落ちていき、製造業の海外生産移転を招くことになる。これは、かつての日本がたどった道である。
ところが、ドイツはそういった事態を回避できている。それは、いうまでもなく、通貨がユーロだからである。ユーロ圏にギリシャやポルトガル、スペイン、イタリアなど、近年財政難に陥った国があるおかげで、ユーロ安が進み、そのおかげでドイツはどんどん輸出を伸ばして貿易で稼ぐことができるのである。
ギリシャがユーロ圏にいる限り、ドイツはいくら稼いでも自国通貨高になる心配はいらない。むしろ、ドイツはギリシャに感謝するべきだろう。しかし、前述の国民感情を考えると、表立って「ダンケシェーン(ありがとう)」と言うわけにはいかない。もちろん、支援の条件である財政緊縮の要求も、政治的な建前として緩めるわけにはいかない。
そう考えると、バルファキス財務相が大人気という報道は、表向きには厳しい態度を維持しなければならないドイツメディアによる、せめてもの感謝のしるしなのかもしれない。
文=広木隆/マネックス証券チーフ・ストラテジスト
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