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日米でこの春最大の注目「賃金」、物価と金利の先行き占う
2015年 03月 5日 17:28 JST
［東京 ５日 ロイター］ - この春、市場が最も注目するのは賃金動向だ。米国では利上げ時期を２月雇用統計の時間当たり賃金で予想し、日本では経済の好循環に入れるか春闘で判断する見通し。デフレリスクが後退するとみられれば、物価の下落圧力が低下し、金利も上昇しやすくなる。一方、ＩＴ化やグローバル化の中では本格的な賃金上昇は期待できないとの声も根強い。
＜米雇用統計の注目は時間当たり賃金＞
日米では、この先の相場を占うイベントが接近している。
６日に発表される２月雇用統計。最大の注目点は、非農業部門雇用者数よりも、時間当たり賃金だ。雇用者数が増加基調にあるのは織り込み済み。「多少、悪化しても市場のセンチメントを損ねることはない」（国内証券）とみられている。
一方、時間当たり賃金が減少すれば、早期の米利上げ観測は後退し、最近上昇していた米金利は低下、ドル／円JPY=EBSにも下落圧力がかかる見通しだ。時間当たり賃金は前月比０．１─０．２％増を見込む声が多い。前年比では１．８─２．１％増だ。
市場予想通りであれば、１月の前月比０．５％増・前年比２．２％増から鈍化となる。しかし、昨年２月が前年比２．１％増と比較的高かったことの影響が出る可能性を指摘する声があるほか、最近の市場では米国での賃金上昇観測も根強い。市場予想から上振れれば、早期利上げ観測が強まる見通しだ。
＜米国では大手企業の賃上げの動きも＞
米国企業では最近、大手企業の賃上げが目立っている。小売り最大手ウォルマート・ストアーズ(WMT.N)は２月１９日、時間給正社員およびパートタイム従業員の賃金を時間当たり９ドルに引き上げると発表。ファストフードのマクドナルド(MCD.N)とその加盟店も、時給引き上げを余儀なくされるとの見方も出ている。
実際、格付け会社フィッチ・レーティングスは４日、マクドナルドの格付けアウトルック（見通し）を安定的からネガティブに引き下げた。その理由の１つとして挙げているのが労働コストの上昇だ。ただ、消費者の可処分所得の増加は販売面でプラス要因とも指摘している。
原油安は一服。反発力は依然弱いものの、下げ止まり感が強くなったことで「消費者物価の上昇率鈍化がそろそろ止まりそう」（大手証券ストラテジスト）との声も出てきた。米国のＢＥＩ（ブレーク・イーブン・インフレ率）もじわり上昇。米市場では、個人投資家からＴＩＰＳ債（インフレ連動債）に関する問い合わせが増えてきたとの指摘もある。
米非農業部門雇用者数は、１月までの３カ月間で１００万人増加。１９９７年終盤以来の大幅増となった。失業率は労働参加率の上昇で下げ渋っているが、労働需給の改善を見込む声も市場で増えてきている。
ソシエテ・ジェネラル証券東京支店のチーフエコノミスト、会田卓司氏は、今年は世界的に実質賃金が上昇すると予想している。「各国の財政緊縮が一服し、景気が持ち直す一方、企業のリストラも一巡しており、労働需給が引き締まってきている。実質賃金の改善が物価上昇圧力につながる」という。
＜企業は依然厳しい環境下＞
日本でも「春闘」が市場の大きな注目点だ。「円安効果は功罪両面がある。輸入物価上昇を上回る賃金上昇となり、経済の好循環に入れるか、アベノミクス成否の最大のポイント」（外資系証券エコノミスト）という。
ただ、本格的な賃金上昇は期待しにくいとの声も根強い。みずほ証券・チーフマーケットアナリストの上野泰也氏は「ＩＴ化、グローバル化が進む中で、企業は引き続き厳しい競争環境の中にあり、継続的な賃金引き上げには踏み切れない」とみる。
昨年、賃上げを求める従業員のストがあったウォルマートの賃上げなどは、あくまで個別の動きで、全体的に賃金上昇の波が広がるか、不明だとの見方もある。世界的なカネ余りのなかで、株式や債券など金融市場ばかりが活況なのは、実物経済のなかで投資機会が少なくなっている裏返しともいえるからだ。
日米金利は足元でやや上昇気味とはいえ、水準的にはまだまだ低い。１０年債で日本は０．４％、米国は２．０％だ。株価が高値を更新する一方で、金利は昨年ピークさえも超えられないままだ。金融緩和による影響もあるが、物価がなかなか上がらない環境が続くことを市場が予測しているのであれば、賃金上昇にも期待は高まりにくい。
（伊賀大記 編集：田巻一彦）
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0M10PN20150305
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