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ホンダ、相次ぐ品質問題と新車開発遅延の元凶・伊東社長退任 社内外からの批判に抗えず
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150305-00010004-bjournal-bus_all
Business Journal 3月5日(木)6時1分配信
「世界でますます激しい変化が予測されるが、腰を据えてグローバルホンダを引っ張る好機ととらえて新体制を選んだ」――本田技研工業(ホンダ)の伊東孝紳社長は、社長交代の記者会見で順当な人事であることを強調した。確かに伊東氏は今年6月で社長在任6年となり、交代時期に差しかかっていたのは事実。ただ、2015年はF1再参戦やホンダジェットの国内初飛行、ホンダを代表する軽自動車のモータースポーツモデル「S660」やスーパースポーツモデル「NSX」の市場投入など、伊東氏自身が仕込んできた種が花開く時期。本来なら「伊東氏自身がトップとして見届けたかったはず」(ホンダ系サプライヤー)。2つの大規模リコール問題によって、華々しい舞台から降りざるを得なかった。
「最近のホンダは、やることなすことマイナス」(ホンダ系の自動車販売会社首脳)
社内外からホンダに向けられる目は厳しくなっている。為替水準の円安による差益や、北米市場などの新車販売が好調で、国内大手自動車メーカーの業績は好調に推移し、過去最高益も相次ぐ中で、ホンダの15年3月期連結決算は減益となる見通しだ。
業績悪化の理由のひとつが、「フィットハイブリッド」の複数回にわたるリコールによって新型車投入計画に遅れが生じ、国内販売計画を大幅に下方修正したためだ。ホンダはフィットハイブリッドの発売から1年間で5回ものリコールを届け出した。品質チェック体制に問題があったとして開発中のモデルも一旦開発をストップし、開発手法を変更するとともに品質チェックをやり直したことから、商品投入計画が大幅に遅れた。
そもそもホンダ車の品質問題の根底には、伊東社長が進めてきた開発体制の再編によって、ホンダの研究開発力が弱まったと不満を訴えるエンジニアは少なくないことがある。伊東社長は、生産拠点ごとに研究開発部門を置くなど、開発部門の分散を進めてきた。これによって生産しやすいモデルの開発などには役立ったものの、「力の分散による研究開発力の弱体化は避けられなかった」というのが現場の声だ。フィットハイブリッドのリコールが相次いだのも、これら研究開発力の衰えが背景にあると、エンジニアの不満は大きい。
●影落とすタカタ製エアバッグ問題
もうひとつのリコール問題がエアバッグだ。展開時にエアバッグが異常破裂して金属片などの部品が飛散、乗員を傷つける事故が発生し、北米や日本で大きな問題となっている。不具合の原因は不明で、現在はエアバッグを製造しているタカタに批判が集中している。
しかし、ホンダとタカタはエアバッグの開発・普及で密接に協力してきた。タカタ製エアバッグの採用比率が50%と他社に比べてひときわ高く、エアバッグのリコール台数も圧倒的に多いのも密接な関係を続けてきた結果だ。にもかかわらず、ホンダの伊東社長は問題発覚後も、タカタと同様、記者会見を開くなど公の場で説明する責任を果たしてこなかったことから批判にさらされている。米国ではタカタがマスコミや議会、行政から集中的に叩かれているが、今後ホンダにも飛び火することが懸念されている。
●リコール問題が社長後任人事に影響
2つのリコール問題が長引く中で、グループ内外から伊東氏の交代を求める声も強まり、伊東社長は昨年末に社長交代を決断せざるを得なかった。そして後任人事についても、2つのリコール問題が影響を及ぼした。
八郷隆弘常務執行役員と松本宜之常務執行役員が後任社長の有力候補とされてきたが、八郷氏のトップ就任がすんなりと決まった。松本氏は、フィットハイブリッドの開発に関わっていたことが影響したとみられている。また、八郷氏はホンダ社長としては珍しく購買を担当した経験を持つ。タカタ製エアバッグの問題をみても、今後の自動車メーカーの経営にとってサプライヤーが大きなキーになることが、八郷氏にとって社長レースで有利に働いた模様だ。
八郷氏は社長就任会見で「15年は今までいろいろやってきたことが花咲く年になる。私はこうした技術や商品をしっかり出せるようにすることが役目。6極体制の進化で事業基盤をしっかりと固めていく」と述べ、当面は伊東路線を継承する方針を示した。タカタ製エアバッグのリコール事件もいまだ解決していない状況の中、八郷氏はホンダをどう立て直していくのか。
(文=河村靖史/ジャーナリスト)
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