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なぜ、たった月3000円台の節約が「2%複利」の投資に匹敵するか
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20150304-00014665-president-nb
プレジデント 2015/3/4 08:45 ファイナンシャル・プランナー 八ッ井慶子=文
■なぜ「将来が不安」で運用は危険か
「将来が不安なので、運用したいです」
という人は少なくないかもしれません。実際、家計の相談現場でもよく聞かれる声です。しかしながら、私はこの考えはお勧めしません。気になるのは、「なので」の部分。
将来が不安 →(なので)運用
という構図に違和感がぬぐえません。理由はおもに2つあります。
1つめの理由を説明するのに、簡単なシミュレーションをしてみたいと思います。
月1万円を30年間、積立運用を行ったとしましょう。年2%で複利運用できたとすると、30年後の元利合計は約494万円になります。年3%であれば約584万円。投資元本は360万円ですから、それぞれ134万円、224万円も殖える計算です。
これだけ殖えるとなれば、悪くありません。「運用はすべき」と考える人が多いのもうなずけます。
しかし、こうも計算できます。
それぞれのリターンを投資期間の360月で割ってみます。要はひと月あたりの平均リターンを求めるわけです。
134万円÷360≒3,730円
224万円÷360≒6,230円
これで何がいえるかというと、1万円とは別に月3,730円ずつ毎月貯めることができれば、30年後には年2%で複利運用した場合とほぼ同じ額になる、ということです。月6,230円ずつであれば3%複利と同等です。
値動きは一切ありませんから、安心、確実。ハラハラドキドキもありません。低いとはいえ多少なりとも利息が付くと思えば、多少こちらに分があるでしょうか。
月1万円でリスクを取れるような方であれば、それ以外に3,730円や6,230円を捻出するのは難しくないでしょう。現実問題、無理のない数字だと思います。
つまり、運用をする前に、まずは家計を引き締めましょう、ということです。これが、“なので運用”に疑問を感じるひとつめの理由です。
平たくいうと、月3,730円や6,230円の「節約」は運用にも匹敵する、ということです。
■行動経済学で「あぶく銭は散在」
といいつつも、私はあまり「節約」という言葉が好きではありません。「節約疲れ」という言葉があるように、どうも後ろ向きな印象があります。なんだか家計が縮こまる感じがしてしまいます。
そこで、考えました。「節約」に替わるいい言葉がないものかな、と。
収入は「使う」か「使わない(貯める)」のどちらかしかありません。
「使わない」にフォーカスすると、「節約」という表現になるでしょう。節約ができれば、お金を使わないワケですから、お金は貯まります。いくら「節約」という言葉が気に入らないからといっても、この効果は見逃せません。
では、「使う」方にフォーカスします。そうすると、「使う」には2種類あることに気が付きました。「いい使い方」と「悪い使い方」です。「悪い使い方」は、いってみれば「ムダ使い」です。ムダが少なくなれば、「いい使い方」が残ります。そうなれば、結果的に節約と同じ効果である貯蓄ができます。
それを私は「ときめき買い」と呼ぶことにしました。
正直、こんまりさん(『人生がときめく 片づけの魔法』で知られる片づけコンサルタント・近藤 麻理恵さん)のパクリです。
こんまりさんは、ときめくものだけ身の回りに置きましょう。それ以外は捨てましょう、ということを片づけの技術として提唱しています。この「お金版」です。
ときめくものだけ買いましょう。あとは買うのをやめましょう、ということです。これであれば、前向きに家計に取り組めます。
そこで、言い直すと、「運用の前に“ときめき買い”を」ということになります。
さて、「将来不安なので運用」をお勧めしない2つめの理由です。それは、行動経済学でよく知られるところの「あぶく銭は散財しやすい」という点です。
行動経済学では、人の経済的な意思決定は必ずしも合理的ではなく、さまざまな要因によって影響を受けることを説いています。
それによると、人は自分で働いて得たお金よりも、楽に手に入れたお金の方が浪費しやすいといわれています。同じ「自分のお金」であっても、その出所によって使い方に違いがでやすい、ということです。
運用で得られたお金は、楽して手に入れたお金の方に近いでしょう。本来であれば、自己資金でリスクを取って運用していたわけですから、ある意味正当に得られた結果ですが、どこかマーケットがもたらしてくれた“たなぼた”的な要素がからみ、パーッと使おうとする意識が働きやすいようです。お恥ずかしながら、私自身、身に覚えがあります。
「将来が不安」だからこそ運用したにもかかわらず、せっかく得られた利益を浪費してしまっては、意味がありません。運用益には、そもそもそうした“心の罠”に陥りやすい要素がある点は知っておくといいでしょう。
さきほどのシミュレーションを使っていえば、月3,730円や6,230円のムダ使いがあれば、リスクを取って得られたリターンも帳消しになってしまう、ということです。
■お金は「順」が命
これら2つの理由から、大事だと思うのは「順」です。
運用を否定するつもりは毛頭ありません。私自身、運用が大好きでいろんな運用にトライしてきました。ただし、家計改善(ときめき買い)が第一であって、次に運用。大事なのは、この手がける順番です。
いくら運用でお金を殖やせたとしても、そもそも家計にムダが多ければ、単にムダ使いが増えるだけという事態に陥りかねません。行動経済学を用いていえば、そうしたことが運用益では起こりやすいワケです。
逆に家計にムダが少なく、筋肉質な家計であって、その上で運用で殖やすことができれば、さらに強い家計ができあがります。
「なので」をよくないとする意味合いがお分かりいただけたでしょうか。
もっというと、そもそも運用で大事なのは、「リスク管理」です。
「リスク」とは、値動きの大きさをいいます。あるいは、値動きする可能性といった意味合いで用いられることもあります。いずれにしても、リスクはある程度コントロールができます。運用先のリスク度合いを見極めたり、組み合わせたり。あるいは、運用する資金額を調整したり。
しかし、リターンはコントロールできません。いわば他力本願の世界です。エントリーしたら、あとできることはエグジットだけ。結果はマーケットのみぞ知る、なのです。
そもそも「家計」を他力本願でよくしようというのもおかしな話です。まずは自分でできることを尽くす。そして、他人様の力も借りる。
こう考えても、やはり大事なのは「順」ということではないかと思います。
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