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今年1月、ラスベガスでの見本市ではサムソンも「IoT」を見据えた photo Getty Images
第4次産業革命に出遅れたニッポン
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/42332
2015年03月04日(水) 井上 久男「ニュースの深層」 現代ビジネス
■第4次産業革命を推進するドイツ
「industry(インダストリー)4.0」という言葉が日本の産業界でも普及し始めている。この言葉には、「第4次産業革命」という意味がある。
第1次産業革命が18世紀に誕生した蒸気機関による機械化、第2次が19世紀の電力の産業への利用、第3次が20世紀後半に普及し始めたインターネットの製造工程へ応用。第3次産業革命がさらに進化し、開発から生産、販売、物流までのサプライチェーン全体を「スマート化」し、品質、価格、納期、サービース等商品力全体の向上を目指すことが第4次産業革命の狙いだ。
この「industry(インダストリー)4.0」を強力に推進するのは日本ではなくドイツで、2011年に国家戦略として、2020年までの産業界のあるべき姿として提唱したのが始まりだ。現在はメルケル首相自身が推進する国家プロジェクトとして、「エネルギー」「健康・食品」「モビリティ」「セキュリティ」「通信」の5大重点分野を掲げ、取り組んでいる。
「industry(インダストリー)4.0」を推進していくためには、利害関係を超えて業界横断的な標準化のルール作りなども重要になる。だからドイツでは首相自らがリーダーシップを発揮して推進しているのであろう。
■「スマート工場」ではロボットと人が共存
たとえば「スマート工場」では、開発、生産、調達、販売、物流といった各部門間のデータが1ヵ所に蓄積されるため、工作機械など産業システムと物流システムなどのネットワーク化が進み、両システム間で情報がスムーズにやり取りされて、生産調整の自動化なども対応しやすくなる。さらに、センサー技術をふんだんに活用することで、製造工程で流れている個別の製品ごとに、現在の状況や完成・出荷までのプロセスを瞬時に一元管理できるようになる。
また、これまでは、ロボットと人が同じエリア内で作業することは安全性の問題から難しかった。たとえば自動車の溶接ラインでは、ロボット専用のラインがあり、そこには金網が置かれて人は立ち入り禁止だった。しかし、高度なセンサー技術を用いることでロボットと人が同じエリア内で作業ができるようになる。
グローバル競争で勝つためには、短期間で、多様な顧客の価値観に対応するため、多品種の商品を開発し、それが少量生産でも利益が出るようにしなければならないが、顧客ごと、製品ごとに、求められるデザインや仕様、納期、コストなどは違っていると、製造現場のハードウエアの制約によってそれらに柔軟に対応することが難しいか、あるいは対応できたとしてもコストが高くなるなどの課題があった。スマート工場では、こうした課題を解決し、多様な顧客の必要とする時に的確に届けられるように対応していく。
このスマート工場が普及すれば、通信インフラや産業機器などの規格・インターフェースを標準化していくことが求められるだろう。ドイツにはこの標準化で主導権を獲得する狙いがある。グローバル経済が加速する中でEU以外の国でも存在感を示すためだ。
ドイツに限らず、世界の強豪電機メーカーは、この「industry4.0」が進んでいく流れを見て、現在は「IoT(インターネット・オブ・シングス)」と呼ばれる戦略を加速させている。一言でいえば、様々なモノや装置と、インターネットを繋ぐための技術開発である。
米ラスベガスで毎年開かれている世界最大の家電見本市では今年、「IoT」が大きなテーマとなり、大型テレビや携帯電話から「主役」の座を奪った。
米インテルも、「IoT」に対応する超小型の半導体を披露した。日本の東芝も今年1月、「IoT」担当事業の人員をこれまでの約10倍の4000人体制にすると発表している。
ただ、日本の電機業界は総じてこの流れに対応するのは遅く、ラスベガスでの家電見本市でも相変わらず「8K」などの高精細テレビといった映像機器に注力しており、欧米勢に後れを取っている感は否めなかった。このままでは、ソニーやシャープなど日本の電機メーカーの「負け組」は、さらに世界のトレンドから取り残されていくのではないか。
■現場の力を引き出せない「日本の頭脳」
現在の日本には産業に関するまともな国家戦略はほとんどない。安倍政権による「アベノミクス」の第1、第2の矢で、新たな金融・財政策を打ち出したものの、肝心の企業の成長を支える第3の矢ではほとんど成果が出ていない。
現在の株高も年金資金の市場投入などによって支えられており、「官製相場」に過ぎない面がある。安倍首相は「戦後レジームからの脱却」などの国家運営方針を掲げるものの、あまりにも漠然とし過ぎている。成長戦略の起爆剤となるはずの規制緩和も、最初に規制緩和ありきで、何を具体的に行うための規制緩和なのかという視点が欠けているように思う。
筆者は地方取材によく出向くが、農業の取材をしていても、国が農業特区などで規制緩和して実施しようとしていることと、現場の農家が求めていることにはかい離が感じられる。
一例を挙げると、農家が6次化推進のために、自分たちが栽培したものを原料に露店でピザを焼いて売ろうとすれば、地域によっては防火装置の付いた室内でしかピザ用の窯が設置できないなどの規制がある。こうした規制を取り払うべきだが、全くやる気のない県知事もいる。
一方、国は大所高所の見地から、規制緩和で企業の農業参入を謳うが、それによって地域経済にどのような利点があるのかが今一つ見えてこないし、補助金に寄生していないビジネスに意欲的な農家は、そんなことは求めていない。所詮、今、国が力を入れている規制緩和も、霞が関や永田町で考えた机上の空論的な面は否めない。
さて、日本の産業界に当てはめて、日本版「industry(インダストリー)4.0」を推進していくためには何が課題となるのか。特に日本の企業は「弱い本社 強い工場」とたとえられる。この意味は、工場の生産性は高いのに、本社機能が持っているブランド、財務、広報、知的財産などの戦略構築力が高くないために、工場の強さを生かし切れていないということだ。
国についても同じようなことが言える。地方にはやる気のある農業者など内需中心に成長を担えるネタを抱えた人材はまだまだいるのに、「頭脳」である東京の政治家や官僚の力が弱い。弱いというか現場の力を引き出す政策が出せていないと言えるのではないか。
こうした現状を非常に単純化して言えば、日本のホワイトカラーの労働生産性が高くないということに繋がる。第4次産業革命に日本が乗り遅れないためには、ホワイトカラーの働き方を見直し、さらには流動化(特にレベルの高い知的労働をしている人材の流動化)を進める必要があるのではないか。仕事の進め方や働き方を抜本的に見直そうという発想がない限り、この第4次産業革命の流れにはついていけないような気がする。
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