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原子力を国家戦略の柱に据えよ(キャノン)
http://www.asyura2.com/15/hasan94/msg/132.html
投稿者 猫侍 日時 2015 年 3 月 02 日 17:31:31: De1pMGrYJHTyk
 

原子力を国家戦略の柱に据えよ(キャノン)


産経新聞に掲載(2015年2月26日付)
澤 昭裕 リサーチ・オーガナイザー
澤 昭裕


エネルギー政策は国家戦略である。国家共同体の完成形に近い欧州連合(EU)でさえ、エネルギー政策については各国とも権限は移譲していない。再生可能エネルギーに力を入れている面ばかり強調されるが、ガスの市場統合や原発の新設など、エネルギー安全保障の確保に向けた戦略的な投資も続いている。


■幼稚な議論に陥っていないか


ロシアは天然ガスや原子力技術の輸出をテコとして、旧東欧諸国への政治的影響力を行使している。中国は資源開発・調達力を武器に他の途上国の意思を左右してきたうえに、最近ではロシアに倣って原子力産業を国家的に育成し、成長のために電力を必要とする有力途上国にアクセスしようと試みている。米国は、シェールガスの恩恵をフルに活用し、エネルギーの対外依存度を低下させて外交的な自由度を確保する戦略をとっていることは明らかだ。


主要な先進国がエネルギーを国家と国民の生存と繁栄の糧と考えている。そして、軍事、政治、経済の諸側面で自国の影響力と存在感を維持すべく、どのようなエネルギー技術やシステムに投資していくかに知恵を絞っているのだ。


振り返って、日本のエネルギー政策をめぐる議論の実情はどうか。福島第1原発事故によるショックから覚めやらず、太陽光や風力といったいわゆる「クリーン」なエネルギーに夢を託すといっただけの幼稚な議論に陥っていないか。そのような問題意識しかない中では、原発が何パーセントになろうが、再エネが何パーセントになろうが、諸外国から見れば、日本は先進国の仲間からとうとう落ちこぼれてしまったな、という印象しか持たないだろう。


■国際貢献と技術の温存


今の安倍晋三政権の歴史的使命は、長く続いたデフレの真っ最中に、東日本大震災によって大きな打撃を受けた日本経済の活力を取り戻すとともに、日本の技術力や経済力、国家経営力に国民全体が自信と誇りを取り戻すことにある。なかんずく、原子力は技術自体の複雑性や先端性から戦略的重要性を持っており、原子力をエネルギー戦略にどう組み込み、安倍政権の政治的課題とどう結びつけていくかが問われているのだ。


そのための戦略はこうだ。日本は原子力の平和利用の成功国として、原子力技術を軍事から徹底的に切り離した形で開発普及を促進し、それを人類全体の発展と社会的安定に結びつけていくことを大きな政策目標として掲げる。


それを具体的に実践する方策として、福島第1原発の事故の経験を、原子炉の新たな設計や運転技術に反映するという前向きな形で消化し、その新たな技術力に裏付けられた原子力発電システムを世界に普及させることに注力する。これによって、人類共通の危機である気候変動に対して、再エネと手を携えて挑み、電力に恵まれずに困っている十数億の民を抱える国々の経済発展と国民生活の安定に協力することができる。


このように国際貢献の面では胸を張りつつ、他方では原子力技術を温存することによって、日本の宿命的なエネルギー資源の欠如を補うことも実現できる。ドイツが再エネを進めている理由の一つは褐炭資源の温存にあることを見習わなければならない。どの国でも、自国のエネルギー自給率は国力そのものの尺度なのだ。


■リスクに立ちすくむな


もちろん国内戦略にとっても原子力は最重要要素の一つだ。安倍政権で最も重要な政策であるアベノミクスは、経常収支の黒字が縮小している傾向が続けば、財政赤字とあいまって市場の信頼を失いかねない。野田佳彦政権時に大飯原発再稼働を決めた翌日、液化天然ガス(LNG)のスポット輸入価格が急落した。市場も産ガス国も日本のエネルギー政策の動きを注視しているのだ。


化石燃料費増や再エネ賦課金による電気料金の続騰は、中小企業も直撃している。このままでは地方創生も夢で終わってしまうだろう。原発の再稼働はマクロ経済や成長戦略と表裏一体なのである。


また、福島第1原発事故の収束や地域の復興には財源が必要だ。さらに再エネを含む戦略的なエネルギー技術開発投資にも資金が要る。原発再稼働で生まれる経済的価値は、直接的あるいは間接的にこうした財源を生み出すのだ。


これらの戦略を遂行するためには、国内の原子力技術や施設や人材を最大限動員することが必要である。また、将来においても原子力は日本にとって国家戦略としての価値を有する技術だという共通認識も必要だ。再稼働一つできないままでは、技術や人材は腐っていく。安全性の確保はもちろんだが「ゼロリスクはない」ということに立ちすくんではならない。


国家戦略の立案・遂行の責任者である政治家や官僚、そして最高リーダーとしての安倍首相には、現在のエネルギーミックスの議論をエネルギー政策の内部に閉じた議論に矮小化するのではなく、国の生存と繁栄という観点から適切な結論を導きだしてもらいたい。


http://www.canon-igs.org/management/akihiro_sawa/20150227_3004.html


キヤノン、どうした。


2015.02.27「原子力を国家戦略の柱に据えよ」NEW
2014.12.08「リスク恐れず原子力政策に挑め」
これ、キヤノン・グローバル戦略研究所の寄稿。


しかも、産経新聞に連載されているそうだ。寄稿というよりも、奇行だろう。
共生、自然との共生を、社のトップビジョンとして掲げ、ここまで成長してきたキヤノン。語源は、「観音」(カンノン)にある、キヤノン。なぜここまで、落ちぶれてしまったのか。


今の安倍晋三政権の歴史的使命は、日本の技術力や経済力、なかんずく、原子力は技術自体の複雑性や先端性から戦略的重要性を持っており、原子力をエネルギー戦略にどう組み込み、安倍政権の政治的課題とどう結びつけていくかが問われているのだ。


日本の歴史的メインテーマは、原子力の温存と活用だそうだ。そのための戦略はこうだ。日本は原子力の平和利用の成功国として、原子力技術を軍事から徹底的に切り離した形で開発普及を促進し、それを人類全体の発展と社会的安定に結びつけていくことを大きな政策目標として掲げる。


それを具体的に実践する方策として、福島第1原発の事故の経験を、原子炉の新たな設計や運転技術に反映するという前向きな形で消化し、その新たな技術力に裏付けられた原子力発電システムを世界に普及させることに注力する。それだけではない。


原子力に向かう人材、確かに、40年前には、いたなあ。小出さんもその一人だったろう。
東大の原子力工学科も無くなった。「ゼロリスクはない」ということに立ちすくんではならない。ゼロリスクにすべき、数少ないリスクが、原発である。そこの区別を隠蔽しようとしても無理だろう。


まさか、巨額の赤字決算の補てんとして、東芝や日立に見習って軍産企業傘下となり、政府助成金をアテにしているとは考えてたくないが・・・・。
もう一度くりかえす、どうした、キャノン。


北川 高嗣FBより
https://www.facebook.com/kitagawa.takashi?fref=nf
 

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コメント
 
01. 2015年3月02日 18:25:41 : L9O16fGdFY
ここまで言うなら今度は街頭でチラシでキャノンを名指しで糾弾させてもらう。

冗談では書いていない。やります。


02. 2015年3月02日 18:38:49 : h2MxkmmjqB
キヤノンは過酷事故を誰が収めるのか、これを明白にしてから言え。
東電、社長、会長は責任も取らず逃げている。
キヤノン銭ゲバは、自衛隊にその任務に当たらせると言うなら、自衛隊のトップに了解を
得てから発言しろ。
了解が無ければ役員、社員全員がその任務を担う覚悟を示せ。
政府、官僚もだ。

03. 佐助 2015年3月02日 19:07:24 : YZ1JBFFO77mpI : 439YTZK3Rc
第二次世界信用収縮恐慌と世界金融恐慌では,原発「キャノン」や「輸出」の神風は吹きません。2008年にスタートした世界恐慌を救済する第二次産業革命を開始させています。

1989年に破裂した日本のバブルは、十五年の間に、平均株価を五分の一に暴落させ、地価を十分の一にし、十大銀行を3行に収縮させ、多くの企業を倒産させて、やっと沈静化しました。沈静化させた最大の要因は、輸出の神風です。今回の世界バブルの崩壊では、輸出や原発稼働の神風は吹いてくれません。

世界信用恐慌から早期脱出するためのマニフェストは、第二次産業革命へ大胆にシフトすることですが,政府・大企業は既得権益(設備・技術)を失うため、国家から補助金をもらいながら、ゆっくりと進行させたいと考え抵抗し遅延させていますが,すでにiPad やiPhone革命で産業革命がスタートしています。

第二次産業革命とは動力エンジンを、水素発電&電磁波起電力に移行させて発生する技術革新です。先進工業国の基幹産業は、自動車とエレクトロニクスと住宅です。この基幹産業の好不調が、約3年半ごとの景気の上昇下降を決定しています。だから、三大基幹産業の製造は上昇すると、全産業に第二次産業革命は拡大し、景気は上昇します。

信用恐慌の早期脱出のためのマニフェストの実行が遅れると、地方銀行の取り付け騒ぎや倒産が避けられなくなる。そして、2016年―2017年に予告どおり全国の銀行のモラトリアムが世界中で発生します。

蒸気機関の発明が、汽車から船、そして自動車から飛行機と驚くべき産業革命を牽引したが、燃料電池からコンデンサー電子半導体電池は、電子機器から家庭と工業電力、そして、電車・船・自動車・飛行機・ロケットにも使われ普及するために、第二次産業革命の中心になります。

そしてエンジンレスに成功した巨大な産業が誕生します。原発や化石燃料の時代は終わります。


04. 2015年3月02日 19:09:48 : nJF6kGWndY

原子力を国家戦略の柱にするには

放射脳が蔓延し過ぎている


05. 2015年3月02日 23:46:42 : gWro6EPibk
これを言っているのは、キャノングローバル戦略研究所とか言うところ。

キャノングローバル戦略研究所
http://www.canon-igs.org/

ここ、新自由主義だね。TPP大賛成だし。
2008年に設立されたそうです。
NHKの朝のラジオでやっている「ビジネス展望」にも、ここの研究員が出ています。

●当方も、外国からキャノン不買運動に参加させてもらいます。


06. 2015年3月03日 05:51:29 : jXbiWWJBCA
http://www.asyura2.com/15/hasan94/msg/132.html

2015年3月3日 新村直弘 [マーケット・リスク・アドバイザリー代表取締役]
原油価格は今年後半上昇へ 企業は“急変”リスクに備えよ
原油価格の先行きは、日本経済にとっても企業経営にとっても、極めて影響の大きい重要事である。このまま低価格が続くとの見方もあるが、年後半には、上昇に向かうことになりそうだ。ただし、上ブレ、下ブレをもたらすリスク要因が多数あり、“決め打ち”は危険だ。上下双方向のリスクを想定し、備えておく必要がある。

底打ちした原油価格
ただし生産調整はまだこれから


稼働油井数の減少を材料に原油価格は底打ちしたが…。写真は米国の油井設備
Photo:underworld-Fotolia.com
 昨年夏以降続いている原油価格の急落は、年初に付けた40ドル台前半でとりあえず底を打った感がある。だが、上昇に向かうのは年央以降となるだろう。

 原油価格反転は、産油国の生産調整が進む、との期待感が高まったためだ。「材料」として注目されたのが、油田サービス大手、米ベイカー・ヒューズ社のリグカウント(稼働油井数)の減少である。しかしこれは、新しく原油の井戸を掘るあるいは水平掘削を行うための掘削装置の稼働数が減少したということであり、原油の減産を意味するものではない。リグカウントの減少からいえるのは、「将来の増産ペースが鈍化した」ということだけである。

 米エネルギー省の推計では、油田掘削から生産開始まで4ヵ月程度の時間差があるとされている。そのため掘削作業が減速しても、掘削が完了しているが生産をしていない油田の「在庫」がまだあり、実際に減産に結び付く中小生産者の破綻や高コストな油田の生産停止が起きるのは、先のことになる。

 また、先物やプットオプションを活用して、80〜90ドルよりも価格が下がったときのリスクを回避している企業も多数あると想定されるため、生産調整が実感できるようになるには、まだ時間が掛かると考えられる。

 原油価格は、年央から年末に向けて上昇することになるだろう。ただし、大幅な価格上昇は想定できず、2015年末でブレント原油は1バレル68ドル、WTI原油は65ドル程度を目指すと予想している。

 また、大きな振れを伴いながらの上昇になると考えている。上下双方のリスクに備えが必要だ。

原油価格急落の背景と
サウジアラビアの思惑

 そもそも、原油価格はなぜここまで急速かつ大幅な下落になったのだろうか?

 まず、ウクライナ問題の拡大やイスラム国の台頭による供給懸念が、原油価格を高止まりさせ、これが高コスト生産者の増産を可能にして、市場は供給過剰の状態にあった。

 そこに、IMFなどが経済見通しを下方修正、それに伴い原油の需要見通しも下方修正されたため、需給バランスが急速に悪化するとの懸念が強まった。そして、価格の調整役として期待されていたOPECが、11月の総会で減産を見送った。

 さらに金融面では、米国の金融政策が正常化に向かう中でドル高が急速に進行していた。ドル高は消費国の自国通貨ベースの価格を上昇させるため需要の減少に繋がり、ドルベースでの残高維持のためファンドの調整売りを誘発しやすい。

 価格の急落は、これらの複数の要因が重なったためである。特にOPECの減産見送りが、価格の下落を顕著なものにしたといえる。

 今回の減産見送りは実質的にはサウジアラビアが決断したものと考えられるが、その背景には、イラン革命をきっかけとする第二次オイルショックの発生した1980年代前半に、サウジアラビアが講じた価格維持策が、有効に機能しなかったという苦い経験がある。

 このときサウジアラビアは価格維持を目的として生産削減を行ったが、他生産者にシェアを取られたのみで、原油価格を維持することができなかった。これを機にサウジアラビアは、一定のシェアを確保するために、市場価格を基準に価格を決める方式とせざるを得なくなった。その結果生産調整は進まず、湾岸戦争などの地政学的リスクの顕在化といったイベントで急騰する局面はあったものの、この価格低迷は、非OPEC生産者も巻き込んだ大規模な生産調整が起きる1998年まで続いた。

 昨年から今年にかけての世界の石油市場の状況は、この頃の状況に似ている。高コスト生産者の増産(米国に限らない)、需要の減少、サウジアラビアの決断、といったキーワードはほとんど同じだ。

 IMFが経済成長見通しを引き下げ、米国のシェールオイルの増産も続き、需要増加の牽引役であった中国の人口動態がピークアウトして需要の見通しが不透明な中で、サウジアラビアだけが減産しても、シェアを奪われるだけで価格に歯止めをかけることは難しい、と考えたのは想像に難くない。そのような状況で原油価格を低くして「高コスト生産者を退場させよう」という戦略を、サウジアラビアが選択したことは理にかなっていると考える。

 よく、サウジアラビアがアメリカと組んで、イランと組んで、ロシアと組んで、オイルメジャーと組んで……といった陰謀説を目にすることがある。そういった理由も全くないとは言わないが、サウジアラビアが原油の安定的な供給者の立場を維持するために、どのように振る舞うのが適切かを総合的に判断した上での決断、と考えたほうがより適当だろう。

 1998年の協調減産とは異なるが、価格を引き下げることによって“自然に”生産調整が起き、一定のシェアを確保できれば、来るべき需要増加時にメリットを享受できる。

今後の焦点は新興国需要へ
ただし価格上昇は限定的

 需要に関しても前回と似ているが、原油価格が本格的に上昇を始めたのは中国の需要が顕在化する2000年以降である。要は原油価格が上昇するには、生産調整も重要だが、需要の方がより重要ということである。

 恐らく今年の末から来年にかけて、人口ボーナス期入りするインドネシア、2018年にはインドの需要が顕在化すると期待される。中国も伸びが鈍化はするが需要の増加は続くと予想され、今後も新興国を中心に化石燃料の需要は旺盛と考えられる。やはり中期的に価格は上昇していくと考えるのが妥当だろう。

 よって今年の後半は需要面に焦点が当たり、原油価格には上昇圧力が掛かる展開になると予想している。

 ただし大幅な価格上昇は想定していない。それは今回、シェール革命によって、北米という地政学的リスクが低く、開発がしやすい供給地区が誕生したからだ。

 生産コストの面では圧倒的に中東湾岸諸国の方が有利であるが、ホルムズ海峡の閉鎖リスクや、国境を越えて拡散するイスラム国の破壊行為やテロ行為により治安が悪化するリスク、エボラ出血熱等の致死性の高い病気の蔓延による不慮の供給途絶リスク、といった数々の地政学的なリスクを考慮しなければならない。

 もちろん米国が全く環境汚染のリスクを無視してシェールオイルを生産している訳でも、テロが一切発生しない国な訳でもないが、中東諸国に比べればその類のリスク要素は大きくない地域であるといってよい。

 現在の価格水準で増産が可能でないことはリグの稼働数の減少によっても明らかだが、価格が再び70ドルを上回って上昇すれば、シェールオイルは在来型の油田よりも短い時間での生産が可能であるため、比較的速やかに増産が行われると考えられる。これは価格の上昇を抑制することになるだろう。

無視できないリスクイベント
再下落も十分あり得る

 しかし、この見通しにはアップサイド、ダウンサイド両方のリスクがあることに注意が必要だ。

 2015年は人口動態的に需要の伸びの端境期に当たるため、外的なショックに対して、原油価格は下方に反応しやすくなる。

 具体的には、この2月も問題になったギリシャ問題をはじめとする欧州危機の拡大などがそれにあたる。今のところギリシャ問題はとりあえず先送りされているが、4月末までに詳細提出と予定されている改革案にギリシャとユーログループが合意しなければ、この支援延長も白紙に戻り、再び信用リスクの顕在化に晒されることになる。仮に合意しても6月末が支援延長の期限であり、このタイミングで市場が混乱する可能性は高い。

 ギリシャ問題が仮に穏当に解決できたとしても、ユーログループが何らかの譲歩を見せれば、その他の高債務国は黙っていないだろう。緊縮財政反対を訴える極左政党ポデモスが支持率を伸ばし年後半に選挙が予定されているスペインが、ギリシャと同様の立ち居振る舞いをした場合、経済規模からみてその影響はギリシャの比ではないだろう。最終的に救済合意するにせよ、いったん問題が持ち上がれば原油をはじめとするリスク資産価格にとってはマイナスに作用することになるだろう。

 同じ信用リスク系では、長らく言われ続けている中国の不動産・投資バブルの崩壊の顕在化も挙げられる。信用に関するリスクの顕在化は、他のリスクと違って即時に波及するため非常に厄介である。さらに、政治家の判断がトリガーになることも多い。時として政治家は経済合理性を無視した決断をすることがあるため、政治イベントからは目が離せない。

 また、今年後半と見られている米国の利上げで起こり得る、新興国経済の混乱も、将来の価格下落リスクを高めるものだ。

 今後の原油需要の増加は先進国ではなく、中国やインドネシア、インドをはじめとする新興国からくるのは明白であり、もし米国が利上げを拙速に行いこれらの国から資金が流出してしまえば、顕在化すると期待される潜在需要が顕在化しないことになる。2月のイエレン・FRB議長の議会証言ではこのリスクも意識し、慎重な言い回しに終始したことから、足元ではその可能性は低下していると考えているが、影響が小さくないため無視することはできない。

“穏やかな上昇”にはならない
重要なのは“変化の速度”への対応

 一方で、より大きな上昇となるアップサイドのリスクもある。

 まず、原油価格の低迷が続いて、鍵となるような産油国の経済が混乱し、原油供給に支障が出る場合だ。

 今のところ表面化していないが、財政状況が悪化しているベネズエラやナイジェリアでの治安が悪化し、あるいは政府に抗議するためのストライキが起きるなどして供給が停止してしまうことは、可能性としてあり得る。「アラブの春」でリビアからの供給が停止して原油価格が上昇したのは記憶に新しいところだ。また、原油価格が低ければ、積極的な開発投資が行われないため、このことも将来の価格上昇リスクを高めよう。

 原油価格の下落によって供給が途絶する、というリスクに関してはロシアもその対象となり得るだろう。プーチン大統領の支持率は高く(体制崩壊の可能性は低い)、外貨の重要な調達手段である原油販売を停止するとは考えにくいが、欧米の制裁強化に対する報復措置として、原油やLNG、天然ガスの供給を停止するという選択をする可能性も排除できず、予断を許さない。

 価格が下落することは消費国にとってメリットであるため、その面が強調されやすいが、原油価格には程よい上昇があった方が、将来の世界経済にとってはプラスなのである。

 また、イスラム国が中東諸国に拡散し、中東諸国の治安を悪化させていることも将来の原油供給の懸念を高めるものである。

 景気の先行きを懸念して、下落リスクとして挙げたFRBによる利上げが見送られ、ドル安が進行してドル建て資産である原油価格が上昇する、という逆リスクシナリオも想定される。

 原油価格は前述の通り年末に向けて上昇するとは見ているが、穏やかな上昇にはならないだろう。過剰流動性が市場に滞留する中で、上述のように2015年〜2016年にかけて原油価格を大きく変動させるリスク要因は多いことから、大きな振れを伴う上昇になると考えている。

 重要なのは、その上昇トレンドを確実に当てることよりも、価格変化の速度にいかに対応していくかを考えることである。メインシナリオ通りの相場展開になればリスクは限定されるが、短期間に市場価格が大きく変動する場合、企業活動に影響が出るのは必須である。

 そのリスクが顕在化してから対応しても余地は限られるため、比較的相場が凪であるうちに様々なリスクシナリオを想定し、対応を行う必要があるのではないだろうか。
http://diamond.jp/articles/-/67740


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