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「大赤字」国保のこれから
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/42257
2015年03月01日(日) ドクターZ 週刊現代 :現代ビジネス
自営業者などが加入する国民健康保険(国保)。厚生労働省によると、その赤字額が3100億円規模に膨れ上がった。日本は国民皆保険制度で海外に比べて保険医療が恵まれているが、平均寿命が世界最高レベルと言われるほどに高齢化が進展しているため、このままでは制度の維持が危うくなるとも言われる。
政府はこうした事態を受けて、国保の運営主体を現在の市町村から、より財政が安定している都道府県に移管しようとしている。それで問題は解決するだろうか。
まずは、国民皆保険制度について見ていこう。「皆保険」といっても皆が同じ保険に入っているわけではなく、75歳未満の国民は「どれか」の公的医療保険に入っている。
自営業者、年金生活者、非正規雇用者等の約3800万人は国保、中小企業のサラリーマン約3500万人は協会けんぽ(協会)、大企業のサラリーマン約3000万人は健康保険組合(健保)、公務員約900万人は共済組合(共済)。さらに、75歳以上の国民約1600万人は後期高齢者医療制度。これで、すべての日本人は「どれか」の公的医療保険でカバーされているというわけだ。
後期高齢者医療制度は当然に出費がかさむので、公費、高齢者の保険料のほかに、国保、協会、健保、共済が支援金を出している。その国保、協会、健保、共済のそれぞれの加入者平均年齢は、50・4歳、36・4歳、34・3歳、33・3歳('12年度)。国保が相対的に高齢者が多く、他に比べて加入者一人あたりの医療費は2倍程度高い。また、国保の加入者一人あたりの平均所得は、他の4〜6割程度しかない。
つまり、国保は支出は多いが、収入が少ない状況で、赤字体質になっているわけだ。その原因は加入者の高齢化と低所得化。運営主体を市町村から都道府県に移管しても、それらを抜本的に解決できるはずがない。
国保で高齢化と低所得化が顕著である背景には、一つには、サラリーマンが退職後に国保に加入するためとの事情がある。このため、65歳〜74歳については、協会、健保、共済から国保への交付金が交付され、財政調整が行われている。それでも、国保が赤字体質なのは、「65歳未満」のところでも、他に比べて低所得化しているのが大きい。では、この問題をどう解決すればいいのか。
75歳以上の後期高齢者医療制度は、国保、協会、健保、共済という職業別の縦割りから脱却して、年齢による横割りの制度にした。65歳〜74歳についても、前期高齢者として、国保、協会、健保、共済の間で財政調整が行われ、職業別の縦割りは事実上年齢別の横割りになっている。そうすれば、職業による所得格差の影響は最小限度に食いとどめられるためだ。
65歳未満についても、国保、協会、健保、共済の縦割りをなくして、特に、大企業サラリーマンの健保、公務員の共済が国保を助けるしか方法はないだろう。さらに、国保、協会、健保、共済の職業別の縦割りは、30歳未満を若年者、30歳〜44歳を壮年者、45歳〜64歳を中年者として、それぞれの年齢別の横割りに再編。その上で、中年者以下が、高齢者を支えていく制度が望ましい。これが、将来の国民皆保険制度の姿になるだろう。
『週刊現代』2015年3月7日号より
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