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信用失墜、低報酬…食えない会計士急増 問題監査法人続出、救済策が不祥事の温床にも
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150301-00010000-bjournal-bus_all
Business Journal 3月1日(日)6時0分配信
日本公認会計士協会は2月中旬、社外役員候補を探している企業向けに会計士を紹介する制度を始めると発表した。日本でも上場企業を中心に複数の社外役員が必要になる時代。そんな中、懸念されるのが、なり手不足だ。協会の紹介制度はそれに応えるものとされるが、裏を返せば会計士業界の人余りが近年ますます深刻化しているとの実情がある。
社外役員の複数化は海外投資家の強い声を受け、金融庁や証券取引所が昨年中に「企業統治指針」(コーポレートガバナンス・コード)づくりの中で方向性を打ち出したものだ。東京証券取引所は今年6月に2人以上の社外取締役を置くことを義務化する。そうなれば一度に3000人以上の社外役員が必要となる。ただし問題はそれだけの人数をどう確保するか、である。
会計士協会の新制度は、社外役員への就任を希望する会計士を登録してデータバンク化し、企業から希望する年齢や性別、経歴などを記入した所定の申込書を出してもらい、マッチングさせるというもの。最初、企業にはニーズに合った複数の会計士の情報が自己PRも含め匿名で伝えられ、そこから企業側が1人を指定し、相対で具体的な交渉に入っていく仕組みだという。協会は紹介後の進捗も適宜フォローするようだ。
確かに会計制度に精通した会計士は、社外役員としてありうる選択肢なのかもしれない。事実、会計士出身の社外役員は、弁護士出身者と並び、過去それほど珍しくはない。しかし、業界挙げて企業経営の現場に人を送り込もうというのは、どこか居心地の悪さを感じさせる話だ。今回の新制度は、なり手不足に悩む企業側の問題よりは、むしろ会計士業界の収入確保策の側面が強いように感じる。
●税理士業界との縄張り争い
かつて公認会計士は士業の中でも狭き門として知られた。年間合格者は1000人にも満たず、エリート資格ゆえ高収入のイメージも強かった。しかし、企業活動のインフラを充実させる狙いで2006年に新試験制度が導入されると景色は一変する。ピークの08年には合格者が3000人を突破、門戸は一気に広がった。とはいえ、狙い通りに会計士の活躍の場は広がらなかった。
日本企業が会計監査のため支払う報酬は、米欧に比べ、もともと低いとされる。さらにリーマン・ショック後には既存監査先からの報酬引き下げ圧力が強まり、一方で新規株式公開(IPO)は激減した。おまけに内部統制報告制度(J-SOX)の導入による特需もなくなった。大手監査法人といえども赤字に沈み、10〜11年頃には新日本監査法人や監査法人トーマツが数百人規模の人員削減に追い込まれている。その後も監査法人の利益水準は極めて低い。労働集約型産業なので、それは人件費に直結する。
そうした窮状を見かねた金融庁は一時、「企業財務会計士」なる新資格の導入を目論んだ。会計士の知識・経験を生かし、資格者が企業の財務部門などで活躍できるようにする制度であるが、この中途半端なアイデアは国会への法案提出までこぎ着けたものの、制度導入に熱心な副大臣が去ったこともあり11年についえてしまう。
他方、この間、会計士の近接業務である税理士との間では縄張り争いが勃発した。現在、会計士には税理士資格が自動的に付与されているが、税理士業界も人余りが深刻で反発が強まっている。数年前には会計士が税務業務を始める際に試験を課すよう、税理士業界が声高に叫んだこともあった。
業界の苦境が増すのと比例して「お公家集団」と呼ばれた会計士業界も、かつてより政治との距離を詰めている。13年、日本公認会計士政治連盟が集めた政治資金は8043万円。対する日本税理士政治連盟は1億2913万円を集めており、カネの面を見る限り政治力は税理士のほうが上。会計士業界から税理士業界への流入圧力が強まれば、また反発が起きることは確実で“転職”も楽な状況ではない。
●現れては消える、問題企業の“駆け込み寺”
こうした状況下、「食えない会計士」は間違いなく水面下で増殖している。その象徴的事例は、問題企業ばかりを専門に監査する新興監査法人の存在である。大手監査法人に逃げられた企業の“駆け込み寺”というわけだ。有名なのは07年2月に設立された監査法人ウィングパートナーズ。後に偽計事件が発覚するオーベン(旧アイ・シー・エフ)や東証マザーズ上場第1号ながら不祥事続きだったニューディール(旧リキッドオーディオ・ジャパン)など、20社余りが短期間のうちにクライアントとなった。ずさんな監査は、すぐに発覚する。事務所のトップら所属会計士2人が金融庁から最長1年6カ月の業務停止処分を受けることとなったのである。その後、事務所は雲散霧消した。
問題が根深いのは、むしろそれからだ。新たな“駆け込み寺”が、すぐに続々と登場したのである。代表格は監査法人元和(09年7月設立)や監査法人ワールドリンクス(同年4月設立)、やよい監査法人(10年4月設立)など。ウィングパートナーズを頼れなくなった問題企業は相次ぎ、そうした新興監査法人と契約していった。やよいとワールドリンクスも11年6月にずさんな監査を指摘され、登録取消処分となる。
すると、今度は東京中央監査法人(11年4月設立)が現れ、クライアントはそちらに流れていった。その東京中央にも昨年5月、一部業務停止1年の行政処分が下っている。これら新興監査法人には、同じ会計士が関与している例が少なくない。まるでイタチごっこであり、業界の一部ではモラル低下が進んでいる。
本来、会計士は独立した立場で企業の決算に目を光らせる役割のはず。それが社外役員の立場とはいえ企業経営に参画するのは、根源的な部分で矛盾がありはしないか。前述した新興監査法人では、監査先企業との距離があまりに近い例があったのも事実。例えば、“駆け込み寺”の元祖的存在だった旧国際第一監査法人では、ボス会計士が親族企業の名義で監査先の増資株を取得していた。それでは厳格な監査など期待できるはずもない。そこまで悪質なケースでなくとも、大量の会計士が企業の経営陣に入っていけば、利益相反リスクはおのずから高まらざるを得ない。
05年に元会長兼社長らが逮捕されたカネボウの粉飾決算事件では、旧中央青山監査法人の会計士も逮捕・起訴され、有罪判決を受けた。大手監査法人の一角だった中央青山は解体の憂き目にあっている。その後もIT関連企業で後を絶たない架空循環取引や国際的な企業スキャンダルに発展したオリンパスの粉飾決算事件などが起き、ただでさえ会計士業界は今日、信用を失っている。“食えない会計士”を救済する制度が企業との癒着の温床となり、思わぬ不祥事が発生する恐れは、やはり否定できない。
健全な企業社会を持続させるインフラとして会計士の存在が重要なことは、論をまたない。であれば、それを財政面でどう支えていくのが適当なのか。監査報酬を底上げするルールづくりや、取引所が業界に負担金を支払うやり方など、大胆な方策が議論されていい時期ではないだろうか。
(文=高橋篤史/ジャーナリスト)
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