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もはや広告は限界?テレビCMやネット広告は効果減退 動画制作やユーザーとのコラボに活路
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150301-00010003-bjournal-bus_all
Business Journal 3月1日(日)6時0分配信
●コンテンツであふれ返る世の中
ブログの普及、CGM(消費者生成メディア)プラットフォームの充実、ソーシャルメディアによる拡散経路の発達に加え、フォロワー数などによる個人評価の「見える化」は、インターネット利用者が自ら情報を発信することのハードルを下げると同時に、そのモチベーションを向上させました。
テキストはもちろん、イラストや動画・音楽など、あらゆる創作物が無料で大量にネット上にあふれることによって、それまでプロによって限定的に作られていたコンテンツの価値が相対的に下がりました。そして、それに伴って音楽や出版などさまざまなコンテンツビジネスが打撃を受け、従来のビジネスモデルからの変更を余儀なくされています。
この動きは、マーケティングにおいても同じです。例えば、従来のように「無料でコンテンツを提供して、ついでに広告も見てもらう」という広告モデルには限界が来ています。
●「無料でコンテンツ見せるから、広告も見てね」モデルの終焉
テレビCMは、ネット上の無料動画コンテンツとの間で競争する必要が出てきました。最近では、テレビで「YouTube」「Hulu」「ネットフリックス」など動画サイトのコンテンツを楽しむこともできるようになってきています。つまり、従来型の地上波で放映されるテレビCMに接触する機会自体が減りつつあるということです。また、テレビを観ていたとしても、CMになるとスマートフォン(スマホ)をいじる、という光景はすでに当たり前になってきています。
同様に、ネット広告もビジネスモデルの変化が起きています。広告ではない、無料のコンテンツがネット上には数多く存在しており、作り手側はわずかな収益を得るより、ユーザーに「承認」されることを期待します。動画共有サイト「ニコニコ動画」では、クリエイター自身がお金を払って自分の作品を宣伝することが可能です。クリエイター自身が、膨大なコンテンツの中から自分の作品を見つけてもらうために、自らお金を払う時代なのです。すぐに広告だとわかるようなバナー広告やテキスト広告は、年々クリックされにくくなってきています。
ニュースアプリなどで叫ばれている「ネイティブアド」の存在もまた、こうしたネット広告の限界を乗り越えるために考えられた仕組みです。広告と非広告コンテンツとの境界線を曖昧にすることで、ユーザーに広告と認識させずにプロモーションを図りたいという思惑です。しかし、この手法はコンテンツだと思ってクリックしてくれたユーザーを「だましうち」することになります。また、そもそもコンテンツ化できる価値があるのであれば、最初から広告として掲載する必要性はない、という自己矛盾をはらんでいます。
では、この時代にマーケティングはどう変化するべきなのでしょうか?
●あふれるコンテンツの中で、ユーザーに自然に「知って」「選んで」もらう方法
「テレビは多チャンネル、ネットはサイトの氾濫、そんな中で、コマーシャルというものを昔のようにまともに見てもらえる、と思うのは時代錯誤だ。今年は、広告などメディアに投じられるマーケティング費用が1000億ドルを超えると思われるが、インターネット上も含めて、それらのほとんどはドブに捨てた金になる」
以上は、企業のネット上におけるプレゼンスを計測するプラットフォームを運営するConductor社のセス・ベスマートニク氏の言葉です。ニュースサイト「TechCrunch」に2月13日に掲載された『Web上のマーケティング効果は広告よりもコンテンツに…Webプレゼンス管理のConductorが$27Mを調達』という記事の中で語っています。
筆者も、彼の意見を支持します。前述のとおり、現在の社会ではコンテンツが流通しやすい環境が整えられています。大量のコンテンツが毎日、コミュニケーションの材料としてシェアされ、リツイートされて消費されています。この状況で、どうやって自社の商品やブランドの認知を図るべきか。筆者は、ふたつの戦い方があると考えています。
1.コンテンツの送り手となり、ユーザーと同じ土俵で無料のコンテンツを戦わせる
今や、企業がオウンドメディアやソーシャルメディアを使って自ら情報発信を行うことは、珍しくありません。業務内容と読者の興味が交わるポイントを記事にして発信していくという手法は、地道ですが正攻法のひとつといえるでしょう。サイボウズが運営する「サイボウズ式」や、日本IBMが運営する「Mugendai(無限大)」などの自社サイトは、代表的なオウンドメディアといえます。
また、スマホの普及によってネット上での動画視聴が当たり前になってきたことに合わせて、各社の動画コンテンツ制作も盛んになってきています。テレビCMに費やしていた予算を、ユーザーを楽しませるための動画コンテンツ制作費に転換する、という流れも珍しくありません。広告ではなくコンテンツを作ることで、より自然に消費者にアプローチするというわけです。
2.ユーザーとのコラボレーションを促進する
企業が自らコンテンツを作るのではなく、コンテンツの送り手とのコラボレーションを図るのも、有効な手段です。ソーシャルメディアの登場は、消費者を雄弁な発信者に変えました。独自に制作した動画を「YouTube」で共有し、広告収入を得るYouTuberに代表される、ネット上のカリスマ的存在も数多く誕生しています。例えば、ソーシャルゲームの会員獲得において、YouTuberとのコラボはとても一般的なものとなりました。
マックスむらい氏と人気ゲームアプリ「パズル&ドラゴンズ」のように、プレイヤーの実況動画を見たユーザーがアプリをダウンロードするという流れで、カリスマプレイヤーとアプリ会員獲得の間には切っても切れない関係が生まれています。また、単純に広告によって獲得したユーザーと、実況動画経由のユーザーを比べた場合、後者のほうがアクティブ率が高いといった事例も出てきています。
また、ゲーム実況動画においては、任天堂が動画配信者と広告収益を折半する「Nintendo Creators Program」というサービスを発表しています。コンテンツホルダー自ら、動画配信者に歩み寄ることで、さらなるビジネスチャンスを生もうとしているのです。
イラストコミュニケーションサービスの「pixiv」は、定期的に飲料メーカーなどとコラボイラストコンテストを開いています。作品は商品パッケージとして使われるなど、作品を世に出したいユーザーと企業側の双方にメリットがあるコラボが次々と起きています。クックパッドのレシピコンテストなども同様です。
●ソーシャル時代のマーケティングは「いかに消費者と一緒に楽しめるか」が鍵
これまで、従来型の広告を全否定するような書き方をしてきましたが、もちろん、現状において広告を使わなくてはならない場面は多くあります。例で示したコンテンツ中心のマーケティングにおいても、一気に露出する上では広告・メディアの力を借りなければなりません。
しかし、その一方で、従来型の広告手法とは明らかに違った、コンテンツ主導の新しい時代に変化していることは間違いありません。大切なことは、もはや企業と消費者の間に境界線はなく、マーケティングにも、消費者の隣に寄り添う「友人のような存在感」が求められているということです。
文=黒沼 透@torukuronuma/株式会社アクトゼロ取締役
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