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ソニー全事業分社化は、「事業売り飛ばし」への準備である 売却最有力はテレビ事業
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150228-00010000-bjournal-bus_all
Business Journal 2月28日(土)6時0分配信
ソニーは2月18日に発表した中期経営計画で、ビデオ&サウンド事業を10月に本体から切り離して分社化すると発表した。さらに分社の対象を、黒字経営を続けているAV機器やデバイス、デジタルカメラに拡げることも明らかにした。1年前の2014年2月にはVAIOブランドのパソコン事業を売却、テレビ事業を分社化することを発表している。
同日の会見で平井一夫社長は事業分社化の狙いについて、「組織の階層を減らし、意思決定を早め、結果・説明責任を明確にする」と語っているが、本音はどうか。「『本音』は社員へのショック療法? 」(2月23日付「日経BPネット」記事より)という観測もあるが、それもうがった見方だろう。
ソニーの事業分社化は、「事業売り飛ばしへの準備」だと筆者は見る。本社に事業部門として組み込まれているビジネス・ユニットは、それぞれの採算性が不分明になる組織形態だ。また構成員も本社の社員ということで相対的に手厚い立場が与えられているし、それを本人たちも期待している。つまり企業への膠着性が強く、組織風土的にも文化的にも切り離しにくい。
また事業売却先候補が出てきても、その事業が本社に組み込まれていれば、デューディリジェンス(資産査定)の困難性が増す。本社に組み込まれたままでの事業売却を「カーブアウト(切り出し)」と呼ぶのだが、カーブアウトだとその売却の「荒事性」が高まってしまうのだ。
一方、すでに子会社化された事業の売却では、こうした問題はすべて低減できる。買収希望会社や間に入る投資銀行などにとっても、適正価格の算定や交渉などをスムーズに進めることができるため早期の売却が可能になる。
●「衰退期」に入ったテレビ産業
ではソニーが新たな子会社構成によって、売却に動く可能性が高い事業はなんだろうか。筆者はテレビ事業だと見る。
ソニーは昨年7月にテレビ事業をソニービジュアルプロダクツに移管・分社化した際、「売却を一切考えないというわけではない」とその可能性を示唆している。同事業は2014年の第1〜2四半期に連続して黒字となったが、2四半期連続の黒字は実に10年半振りのことだった。その間、年間売上高はピーク時の2兆円から8300億円まで落としている。黒字を辛うじて出した今なら有利な事業売却が可能だろうし、ソニー全体の企業価値が上がり株価が持ち直すはずだ。ソニーはそんなシナリオの元に事業分社化を進めてきているはずだ。
テレビ事業からの退却については、ソニーだけの話しではない。東芝はすでに海外テレビ事業からの撤退を決めている。北米ではブランド供与とし、欧州やアジアではライセンス供与の協議を続けている(1月29日発表)。パナソニックは中国の液晶テレビ生産から撤退する(2月2日発表)。また、シャープについては、2月11日付本連載記事で『赤字転落のシャープ、17年までに消滅の危機』」と予想した。
各テレビメーカーは海外事業を手じまいして、国内で4Kなどの高級路線、あるいは国内市場に傾注して生き残ろうとしているが、それも難しい。筆者は「インダストリアル・ライフサイクル」、つまり「特定の市場における特定の産業にはライフサイクルがある」と提唱している。よく知られているPLC(プロダクト・ライフ・サイクル)では、導入期、成長期、成熟期、衰退期があるとされているが、このサイクルが特定の産業全体に適用できる。
日本のテレビ産業は、まさに衰退期に突入している。PLCでは、衰退期に突入した商品にしがみついて残った企業に利益がもたらされることがある。いわゆる「残存者利益」だ。しかし、テレビ産業のようなグローバル産業の場合、それも期待できない。韓国サムスンやLGなどの海外勢が侵入してきて、日本のプレイヤーの残存陣地もくまなく浸食してしまうからだ。
今後日本のテレビ事業は、液晶パネルなどのデバイス事業へと階段を下りていく。あるいはソニーにこれから起こりうるように、テレビ事業そのものを他社に売却して滅消させていくことになるだろう。大きな時代の流れ、インダストリアル・ライフサイクルには抗うことはできない。
(文=山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役)
山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役
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