http://www.asyura2.com/15/hasan93/msg/878.html
Tweet |
燃料電池車、エコは「究極」?
水素製造時のCO2排出減が難題、再生エネの活用急ぐ
トヨタ自動車の世界初の一般向け燃料電池車(FCV)、「ミライ」の販売が好調だ。昨年末の発売からわずか1カ月で、受注台数が約1500台に達し、早くも増産を決めた。走行時に水しか排出しない「究極のエコカー」として政府も普及を進めるが、環境性能を疑問視する見方もある。課題は水素の製造過程で出る温暖化ガスの二酸化炭素(CO2)だ。
「水素時代の幕開けだ」。安倍晋三首相は1月15日、首相官邸の前庭でミライのハンドルを握りこう語った。トヨタの豊田章男社長も「歴史的第一歩だ」と力を込めた。
HVと大差なし
FCVはタンクの水素を空気中の酸素と反応させて電気を生み、モーターを回して走る。走行時に水素と酸素からできた水しか排出せず、大気汚染物質や温暖化ガスを出さず究極のエコカーとされる。政府は車両購入や水素ステーション設置に多額の補助金を出し、官民一体で次世代自動車の主力に育てる狙いだ。
こうした動きに批判的なのが、米国の電気自動車(EV)ベンチャー、テスラ・モーターズのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)だ。1月に米デトロイトで開かれていた北米国際自動車ショー。マスクCEOは「フューエル・セル(燃料電池)」のつづりを変え「フール・セル(ばかげた電池)」と批判。水素は製造時に多くのエネルギーを消費するなど「水素はロケットにふさわしく車に向かない」とした。
EV拡販を狙うマスクCEOの批判は割り引く必要があるが、FCVの環境性能に懐疑的な見方はある。水素の製造から走行までのCO2排出量はハイブリッド車(HV)と大差がないからだ。
これは「ウェル・ツー・ホイール(WTW)」という指標で、油井(ウェル)での燃料採掘から車輪(ホイール)での走行までにかかる環境負荷を表す。日本自動車研究所が11年にまとめた試算によると、FCVは1キロ走るのに排出するCO2は79グラム。ガソリン車(147グラム)やディーゼル車(132グラム)の約半分だが、HV(95グラム)に比べて2割弱しか減らない。水素を化石燃料の天然ガスから作るのが主因だ。
日本エネルギー経済研究所による09年の試算はさらに厳しく、FCVは168グラムとガソリン車(170グラム)並み。試算は車の走行距離などにより変動するが、エネ研の平井晴己研究主幹は「水素は(燃料などを加工する)2次エネルギーというハンディをどう乗り越えるかだ」と指摘する。
FCVで最もCO2排出量を減らせるのは再生可能エネルギーで得た電気で水素を製造した場合だ。自動車研の試算によれば太陽光発電なら14グラムで、天然ガス製造の5分の1以下。ガソリン車の10分の1となり究極のエコカーに一気に近づく。
経済産業省の水素・燃料電池戦略協議会は「水素・燃料電池戦略ロードマップ」でまず水素利用の拡大に力を入れ、40年ごろに再生エネを使った水素供給を確立するというシナリオを描く。当面はFCVの環境負荷は解消されない見込みだ。
一方、環境省は15年度に26億円かけ、再生エネから水素を製造し走行までに出るCO2がどこまで削減できるか検証する。「一日も早く低炭素の水素社会を実現したい」(望月義夫環境相)
欧米規制が左右
次世代車の主役は燃料電池か電気か――。自動車研の試算では12年度でEVのCO2排出量は77グラムとFCVと同程度としたが、太陽光を使えば1グラムとFCVを下回り、EVに軍配を上げた。
こうしたFCVへの批判に対し、トヨタは「EVは必ずしも長く走れるクルマではない」(ジム・レンツ専務役員)と反論する。EVは急速充電でも20〜30分かかり航続距離も200キロ程度。FCVは3分間の水素充填で650キロの走行が可能。確かに車の走行性能だけを見れば差は歴然だ。
勝負の分かれ目は欧米が進める環境規制になるかもしれない。米カリフォルニア州は自動車メーカーに温暖化ガスを全く出さない車の販売台数を一定割合義務付けるZEV規制を強化する。欧州でも同様の動きがある。HVだけでは対応できず各社は究極のエコカー開発にアクセルを踏むことになる。
(浅沼直樹)
[日経新聞2月28日朝刊P.2]
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。