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[真相深層]米シェールにしぶとさ
原油大幅安でも減産進まず 経営環境悪化、効率化促す
原油価格の低迷が続いている。米国指標のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)は1バレル50ドル前後で推移。値下がりに歯止めがかかってきたものの上昇に勢いはない。焦点となる米国ではシェール油田の新規開発が減少するなか、生産量は過去最高の水準が続く。浮かび上がるのはシェールオイルの意外なしぶとさだ。
相次ぐリストラ
米石油産業の中心地、テキサス州がレイオフ(人員整理)に揺れている。1月上旬、同州でシェール開発を手掛けるWBHエナジーが経営破綻。さらに世界最大の石油サービス会社、シュルンベルジェが全社員の約7%に相当する9000人の人員削減を発表した。
市場では需給の緩みが長引くとの観測を受け、原油価格は昨年6月から一時6割近く下落した。多くの生産業者の財務状況は急速に悪化し、世界各地で油田開発の延期や中止の発表が相次ぐ。
中東産油国による「シェールつぶし」の圧力を受ける米国。油田開発に使う掘削設備(リグ)の稼働数は20日時点で1019と昨年10月のピークに比べ4割近く減った。3年半ぶりの低水準だ。
稼働数の減少は増産を続けてきたシェール企業の投資意欲に変化が生まれている一つの証拠だ。中小の生産企業では運転資金が続かず、今夏以降に生産量の伸びは鈍化するとの指摘も多い。「年後半にかけて、WTIは70ドル台を目指す」(三菱UFJリサーチ&コンサルティングの芥田知至・主任研究員)との見立ての根拠ともなる。
ただ、リグの稼働状況の内訳を分析すると、異なる景色が見えてくる。在来型の油田で使われる垂直に掘り進めるリグは1年前と比べて5割減ったが、シェールオイルの開発で一般的な水平に掘削するリグ稼働数の減少率は17%にとどまる。
米金融大手シティグループによると、水平掘削リグの生産効率は、垂直掘削リグに比べて3倍だ。米国では水平掘削リグへの切り替えが進んだこともあり、昨年のシェール油田の生産性は2割上昇した。「生産性の向上を考慮すれば、今年の米国の1日あたりの原油生産量は昨年比で70万〜90万バレル増えるだろう」(シティグループ)
地域的にもイーグルフォード(テキサス州)、パーミアン盆地(同)など「ビッグ3」と呼ばれる優良鉱区に開発が集中する公算が大きい。ビッグ3は米国での増産の8割を担う主力の油田地域だ。
足元でビッグ3の水平掘削リグの稼働数は500を超え、昨年末に比べ約2割しか減っていない。20日時点でパーミアン盆地での稼働数は前週比で横ばいとなり、米ゴールドマン・サックスは「今後は生産性の向上はより明確になるだろう」と予測する。
シェールオイルの今後を占う上で、参考となるのはシェールガスの実績だ。2000年代後半から生産量が急増し、供給の過剰に陥った。米国の指標ガス価格は08年の高値圏から、足元で4分の1の水準まで下げた。開発も大幅に圧縮され、ガス開発に使われるリグ稼働数もピークから5分の1まで減っている。
価格ヘッジ寄与
注目は同期間のガス生産量は大幅に増えていることだ。ガス田の生産性が上昇したほか、北東部のマーセラスなど有望ガス田に投資が集中したためだ。石油天然ガス・金属鉱物資源機構の野神隆之・上席エコノミストは「ガス価格の下落が開発業者に経営効率の改善を促した」と指摘する。
米エネルギーコンサル大手パイラ・エナジーによると、多くの開発業者は生産した原油を1バレル80〜90ドルで販売できるヘッジ契約を結んでいる。国際決済銀行(BIS)は今月にまとめたリポートで、「生産業者は負債の返済資金を確保するため、減産に動きにくい」と指摘した。
シェールオイルの生産調整が見えてこなければ、「WTIの40ドル割れが再び視野に入ってくる」(ニューエッジ・ジャパン証券)。調整が始まる時期を巡り、市場は答えを探しあぐねている。
(金子夏樹、ラスベガス=稲井創一)
[日経新聞2月25日朝刊P.2]
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