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[十字路]米国企業の錬金術
企業が設備や在庫への実物投資を行うのに必要とする資金には、利益から税金や配当を引き、減価償却費を足した内部資金と、銀行借り入れや株式、社債、コマーシャル・ペーパー等の発行などの信用市場で調達される外部資金があてられる。
ただ、米国の非金融企業の場合、資金循環勘定統計を見ると、株式の発行は近年、ほとんどの時期でマイナスだ。つまり、米国企業にとって株式は資金調達手段というより、自社株買いという資金の使途となっているといえる。
また、調達した資金を預金などの金融資産の取得にあてることもできるが、米国では流動金融資産を大量に保有していると買収対象になりやすいため、あまり持たない傾向にある。したがって、内部や外部から調達された資金は、主に実物投資か、自社株買いに使われている。
1990年代半ば以降、米国の非金融企業では、株式の時価総額が増大すると企業の信用力が増して、信用市場で資金調達が増える傾向がある。一方、株価上昇時には企業の自社株買いが増える傾向もある。これは、自社株買いが株価を押し上げていることを示唆している。
そこには、自社株買いで株価が上昇し、時価総額が増大することで資金調達が増え、その資金でさらに自社株買いをして株価が上がるという、連鎖的なある種の錬金術メカニズムが働いているようだ。
しかし、信用市場での資金調達が続き、負債が過大になると、新たな資金調達や自社株買いの動きは鈍ってくる。そうなったときに、このメカニズムは止まる。
現在、米国企業は収益がやや鈍化する一方で、負債の蓄積が進んでいる。今後、錬金術メカニズムが鈍って企業の資金調達が弱まることが、設備投資や株価に影響する可能性には、注意が必要だろう。
(野村アセットマネジメント運用調査本部 チーフ・ストラテジスト 榊茂樹)
[日経新聞2月24日夕刊P.5]
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