01. 2015年2月27日 07:22:03
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米国の中国重視は変わらないみずほ総合研究所・安井明彦欧米調査部長に聞く 2015年2月27日(金) 細田 孝宏 ゴールデンウィークに安倍首相の訪米が計画されている。オバマ大統領との首脳会談が予定されるが、残り任期が2年弱となり「レイムダック」化も指摘される大統領の影響力に陰りは見られるのか。日米交渉が進むTPP(環太平洋経済連携協定)、今後のアジア政策はどうなるのか。ヒラリー・クリントン元国務長官ら大物の出馬が焦点となる2016年の次期大統領選の焦点は…。 長年にわたって米政治、財政問題をウォッチしてきたみずほ総合研究所・安井明彦欧米調査部長に聞いた。 (聞き手は細田孝宏) 安倍首相はゴールデンウィークに訪米し、オバマ大統領と首脳会談する予定です。そのオバマ大統領は、2017年1月の任期終了が見えてきていて、支持率もぱっとしません。影響力を失い「レイムダック」となっているのでしょうか。 安井 明彦(やすい・あきひこ)氏 1991年東京大学法学部卒業、同年富士総合研究所(現みずほ総合研究所)に入社、1997年在米国日本大使館専門調査員、2000年富士総合研究所(同)ニューヨーク事務所、2003年国際調査部、2007年ニューヨーク事務所長、2012年政策調査部長、2014年から欧米調査部長。米政治、財政問題などに詳しい。主な著書に『アメリカ 選択肢なき選択』(日本経済新聞出版社)、『やっぱりアメリカ経済を学びなさい: 世界経済はアメリカを中心に動く』(東洋経済新報社)などがある。 安井:方向としてレイムダック化していくことは間違いありませんが、大敗した昨年11月の中間選挙後に想定されていたのと比べると、意外とがんばっていると言っていいでしょう。残り2年の任期のうちに自分でやりたいことをはっきりと言った。富裕層増税や移民改革などがその代表的なものです。
ただ、がんばるのは結構なのですが、その副作用として、野党である共和党との対立で物事が進まないという課題は依然として残っています。当初は、上下両院で共和党が多数を占め、議会のねじれが解消したことで、野党との交渉がシンプルになる可能性も考えられました。また、多数派を取った共和党に、何らかの結果を残して次回の大統領選(2016年)につなげたいというインセンティブが働き、協調の機運が生まれることも期待されました。 TPPは自然体で野党と歩み寄れる 現実は在任中のレガシー(遺産)を残したいオバマ大統領の思いが強くて、歩み寄りの気配はありません。 中間選挙で負けたことは棚に上げているように見えますね。 安井:ここまで強気なら、今年の夏を超えて秋まで自分がリードしようとするでしょう。 ただし、実際にできることは限られると思います。やれるのはまず法人税改革です。最高税率の引き下げなどでは超党派の合意があって比較的進めやすい。それから通商政策、つまりTPP(環太平洋経済連携協定)です。オバマ大統領の立場は共和党に近くて、その共和党は中間選挙で圧勝しました。自然体で歩み寄れる。 交渉国と話をまとめるには、TPA(大統領貿易促進権限)という権限を議会から取り付ける必要があります。共和党もそれについては前向きだし、難航していた日米交渉も進んでいる。 首相訪米までにTPPの日米交渉の進展が期待されていますが、オバマ大統領の身内である民主党にも反対派がいます。 安井:通商問題で民主党に反対が出るのはいつものことです。票数はぎりぎりの攻防になるでしょう。民主党の反対派や共和党内の右派であるティーパーティーあたりは反対を貫くと思います。問題はどこまで反対派を説得して身内からの取りこぼしを減らすか。大統領が直接電話して説得するとか、肩をぽんぽんと叩いて「よろしく」と声をかけるとか。オバマ大統領は、あまりそういうことをしないと言われてきましたが…。 誰が大統領でもアジアの最大イシューは中国 一般教書演説で「中国が世界で最も成長している地域の貿易ルールを作ろうとしている。アメリカこそがルールを作らなければならない」と言いました。これは中国を牽制するというよりも、身内の反対派へのメッセージと見るべきです。 一方、日本が念頭に置いておくべきことは、為替の話がクローズアップされることですね。米議員のTPP反対派からは、為替操作を行わないと相手国に確約させるべきだという声があります。主に自動車業界を支持者に抱える議員なんかがそう主張しています。オバマ政権は、金融緩和の結果としての通貨安にはとやかく言わない方向でやってきましたが、今後、為替の話には注意しておく必要がある。政府だけではなく、議会や議員の動向を含めて複眼で見ておかねばなりません。 外交関係はどうでしょうか。オバマ政権は「アジア重視」を掲げましたが、具体的な姿が見えません。 安井:確かに進展はありません。欧州ではウクライナを巡ってロシアとの対立が続き、中東ではイスラム国の問題が深刻化しました。世界情勢がアジア重視への転換を許してこなかったわけです。ヒラリー・クリントン国務長官(2013年2月に退任)がアジア重視を言い出した頃からほとんど何も進んでいません。 ただ、米国にとってアジア重視は誰が大統領でも変わらないはずです。オバマ大統領やその後任が実際にどこまでできるかどうかは、中東、欧州次第でしょう。 秋口からは事実上、次期大統領選がスタートします。「ポストオバマ」ではどのようなアジア政策になると見ていますか。 安井:アジアの中で最大のイシューは何かいうと、これは中国。対中関係が最重要課題であることは動きません。民主党の大統領でも共和党の大統領でも同じです。 共和党の大統領の方が日本寄りだという見方もありますが。 安井:たしかに日本にとっては共和党の方がやりやすいと言われてきました。かつてジョージ・W・ブッシュ大統領と小泉首相が個人的にも良好な関係を築いて、同盟関係を大事にしてきた。そういう印象が残っているのかもしれません。ですが、勘違いしてはいけません。 対中関係は誰が大統領になっても力を入れるテーマです。大統領選の過程で為替問題など中国に対する不満に焦点が当たれば、強硬姿勢を見せる候補が出てくる可能性はあります。でもそれをもって判断するのは早計でしょう。あるいは、アメリカ経済が極端に悪化して有権者の歓心を買わねばならないような局面になれば、中国に厳しい姿勢を見せるようなことも考えられますが、可能性は高くありません。 米国の基本は中国との関係を良くする方向で考える。そういう意味では、これからの米大統領はすべて中国寄りになると考えておいた方がいい。 もっとも、対中関係を重視したからといって、別に友達や同盟国であることを意味するわけではありません。二国間関係が同盟国なのか競合関係にあるのか。そういう問題です。単純に「中国寄り」とか「日本寄り」といった言い方をするのではなく、冷静に見る必要があります。 ヒラリー待望論は実務力求める時代の要請 次期大統領選はどのような選挙になるでしょうか。ヒラリー・クリントン元国務長官やジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事(ジョージ・W・ブッシュ大統領の弟)といった知名度の高い候補の名前が挙がっており、話題になりそうです。 安井:注目点の1つは世代だと思います。ビル・クリントン、ジョージ・W・ブッシュ、バラク・オバマと、現職を含めた直近3人はベビーブーマー世代。オバマ大統領をその世代に含めるかどうかという議論はありますが、もしヒラリー対ジェブ・ブッシュになったら、どちらがなってもオバマより年上。再びベビーブーマーに戻るということです。共通しているのは、実務はできるということ。どちらかと言えば理想が先行したオバマ大統領の後にこの2人が取りざたされるというのは、時代の要請にも見えます。 政治の世界で日米のパイプが細くなったと心配する声があります。日本はどういう関係を築くべきでしょうか。 安井:米国では議員の世代交代が進んでいます。かつて日本が強かった時代の政治家はリタイアする年齢になっています。今、主流を占めるようになった議員は、日本が影響力を失ってからワシントンに来た人たちです。その現実を踏まえて対応する必要があります。 このコラムについて キーパーソンに聞く 日経ビジネスのデスクが、話題の人、旬の人にインタビューします。このコラムを開けば毎日1人、新しいキーパーソンに出会えます。 http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20150225/277982/?ST=print 世界のゴミ捨て場と化した中国
流入する海外ゴミと溢れる国内ゴミ 2015年2月27日(金) 北村 豊 2月22日付の“人民網(ネット)”は、国営通信社「新華社」の“張鐘文”という記者が浙江省“杭州市”から報じた「浙江省のある村、ゴミに悩まされて27年、政府の承諾はいつも空手形」という記事を掲載した。その内容は以下の通り。 27年放置のゴミ村 今年の“春節(旧正月)”、記者(張鐘文)は浙江省“温州市”の管轄下にある“蒼南県”の“金郷鎮橋頭連村”にある実家へ帰って旧正月を迎えた。しかし、橋頭連村が過去27年間も悩まされて来たゴミ問題が未だに何ら解決されていないとは思ってもみなかった。村に入ると、遠くの道路に白煙が漂い、大量のゴミがぼんやりと見えた。近づいて見ると、本来4m幅の道路の半分はゴミに占拠されていた。道路に沿って山を上って行くと、各種の生活ゴミ、軽工業廃材、病死した動物の腐った肉などが堆積しているのが見え、一番高いゴミの山は2階建の建物に匹敵した。ゴミ焼却による大量の白煙が噴き出しており、その臭いは鼻を突いて耐え難く、たとえマスクをしたとしても吐き気を禁じ得ないほどのものだった。 “村民委員会”主任の“林為根”によれば、ゴミが堆積している道路は村の主要道路ではないものの、隣接する“炎亭鎮”につながる緊急道路で、大量のゴミに占拠されて車両が通行不能となっているという。“共産党橋頭連村支部”の前任書記である“林義塊”によると、ゴミの投棄が始まったのは1988年であり、投棄したのは環境衛生部門の車両であった。本来のゴミの投棄場所は山の上であり、夜を徹して焼却していたから、黒煙がもうもうと立ち上っていた。その後、山上が満杯となったことから、2000年から山下の道路に投棄するようになったのだという。 林為根の話では、歴代の村幹部は間断なく金郷鎮政府や蒼南県政府に問題を提起し、その都度政府は数カ月以内にゴミ投棄を止めると約束したが、その約束が守られることはなく、問題は27年間解決されぬままとなっているのだという。林為根によれば、2014年4月に彼は蒼南県の“衛生局”および金郷鎮政府に電話を入れて解決を迫ったところ、金郷鎮政府は5月からは投棄しないと約束したが、これも守られることなく現在に至っている。 今年の春節(2月19日)の早朝5時頃、「“環衛(環境衛生)”」というマークがついたトラック数台が大量の“鞭炮(爆竹)”や紙くず<注1>を投棄して行った。これに文句を言うと、金郷鎮の“環衛所”の所長が村にやって来て、春節期間中はゴミを投棄しないと約束すると同時に、別の投棄場所さえ手配できれば、橋頭連村にゴミ投棄はしないから、村幹部が鎮政府へ出向いて問題を処理するよう要求して帰って行った。 <注1>中国では春節前日の夜11時過ぎから午前0時の春節明けまで、1時間にわったって花火を打ち上げたり、爆竹を鳴らしたりして、魔を切り、神を迎える。 筆者が金郷鎮“環保監理所(環境保護監督管理所)”に電話を入れたところ、副所長が電話に出て、同所は工業ゴミだけを管轄しており、生活ゴミは関係ないと答え、ゴミの投棄場所は村と鎮政府が協議して決めたものであると応じ、橋頭連村の状況はよく知らないし、鎮政府から何らかの指示を受けたこともないと答えた。そこで、筆者は金郷鎮の副鎮長である“黄昌堯”に何度か電話を入れたところ、ようやく電話に出た黄昌堯は、「すでに環保監理所に対応するよう指示した」とだけ述べて電話を切った。さらに筆者は、蒼南県の“衛生局”に電話を入れて副局長と話したが、彼は村民が鎮政府と話をすればよいとだけ答えて電話を切った。筆者は県の“環境保護局”にも電話を入れたが、誰も電話に出なかった。橋頭連村の村民たちは、浙江省は現在全省挙げて環境整備に注力して好成績を上げているというのに、どうして我が村の長年の問題は解決されないのかと嘆いている。 ゴミは政治的弱者へ 上述の橋頭連村と類似の問題は中国各地に多数存在する。地方政府にとってゴミ処理は極めて厄介な問題であり、政治力の弱い村落にゴミを投棄することで一時しのぎを図る。その後は、県政府と鎮政府がその責任の所在をあいまいにすることにより、臭いものに蓋をし、当該村落へのゴミ投棄を永続的なものとする。その結果として、村民に健康被害がでても、地方政府は知らぬ顔の半兵衛を決め込み、村民が騒いでも暖簾(のれん)に腕押しを続ける。それがいつか表面化してメディアに叩かれると、地方政府は初耳のような振りをして責任を回避し、慌てて善処策を検討する。ただそれも、メディアの熱が冷めれば、元の黙阿弥となり、当該村落へのゴミ投棄が再開されることも稀ではないのである。 一方、2015年1月5日、新華社は『中国はすでに世界のゴミ捨て場となったという説は決して大げさな話ではなくなった』と題する記事を発信した。同記事がその根拠としたのは以下の3つのデータである。 英国紙「デイリー・テレグラフ(The Daily Telegraph)」は、英国は2012年に17個のコンテナで420トンの生活ゴミを輸出したが、そのうちの7割は中国を含む東アジアへ運ばれたと報じた。 米国国際貿易委員会(ITC)の統計によれば、2000年から2011年までに、中国が米国から輸入したゴミ・スクラップの取引額は7.4億ドルから115.4億ドルに急上昇し、2011年には中国の対米輸入総額の11.1%を占めた。 2007年1月、経済紙「上海証券報」は、2003年に中国のプラスチックゴミ、くず鉄、紙くずの輸入量は、それぞれ1990年の125倍、50倍、21倍となったと報じた。 海外ゴミ流入も深刻化 上記の前提の下で、記事は、海外から輸入された“洋垃圾(海外のゴミ)”(以下「海外ゴミ」)が中国国内の生態環境にもたらす影響および国民の健康に及ぼす被害は甚大であり、金銭で換算することは到底不可能であるとして、「我々がたとえどんなに貧しくなろうとも、海外ゴミの加工で財をなすところまで落ちぶれることはできない。たとえどんなに困難であろうとも、海外ゴミを宝物と見なすことはできない。それを許せば、中国は世界のゴミ捨て場と化す」と論じている。そしてさらに、中国国内で排出されるゴミがすでに地方政府の頭痛の種となっているというのに、どうして世界各地の海外ゴミを受け容れることができようかと締めくくっている。 新華社は中国“国務院(日本の内閣に相当)”直属の国営通信社である。その新華社が「中国はすでに世界のゴミ捨て場と化した」と、本来なら隠ぺいしておきたい事実を自ら認める記事を発信したということは、中国にとってゴミ問題が極めて深刻な状況にあることを暗示している可能性が強い。中国が“面子”を捨てて、自国の体面を汚すような記事を発信せざるを得なくなった理由は何なのか。 13.7億人の人口を抱える中国は、過去20年間の急速な富裕化によって物質文明を謳歌するようになり、節約という伝統的美風が急激に失われ、国民は使い捨て文化に抵抗を感じなくなった。市場にはありとあらゆる種類の商品が並ぶが、一般に品質が悪く、寿命が短いことから、廃棄されるまでのサイクルが短く、先進諸国に比べてゴミの排出量が多い。さらに、伝統的にゴミ処理は埋め立てに頼って来たことから、ゴミ焼却施設が依然として不十分であると同時に、国民にゴミ分別の意識が乏しく、分別規則を作っても進んで順守しようとする人が極めて少ないのが現状である。 ゴミ分別は進まず、大気汚染は進む 一方、PM2.5に代表される大気汚染は中国全土を覆い、健康被害が報じられるようになったことで、中国国民の環境保護に対する意識はますます強化されつつある。この結果、都市部におけるゴミ焼却場の建設計画は住民の反対運動により遅々として進まず、埋め立て処分場は満杯となって、年々増大するゴミは処分場所を求めて農村部へ運ばれて行く。こうして、上述した橋頭連村のような堆積したゴミによって占拠された農村が全国各地に点在する状況を作り出しているのである。 国内のゴミだけではない。すでに述べたように、中国には世界各地から大量の海外ゴミが輸入されている。フリーランスのカメラマンである“王久良”は3年間を費やして中国沿海部の各省を踏査し、中国が膨大な量の毒性の強い海外ゴミによって包囲されていることを発見した。しかも、その海外ゴミは諸外国より2倍以上の高値で中国へ輸入されていたのである。王久良はメディアのインタビューに応えて、次のように述べている。 これらの高値で買い入れた海外ゴミは、中国沿海部にあまねく分布している大小様々な“廃旧塑料回収工廠(廃プラスチックリサイクル工場)”へ運ばれる。工場に搬入された海外ゴミは洗浄した後に粉砕処理されるが、その過程で大量の水を消費する。その廃水は何ら処理されることなく直接に周辺の河川へ排出され、有毒物質を含んだ河川水は魚や蝦などの生物を絶滅させる。河川水のみならず、地下水の汚染も深刻なものとなり、井戸水は飲めなくなり、農民たちは水を買って生活することを余儀なくさせられている。粉末処理された後の残渣は焼却されるが、そこから発生する有毒ガスは人々の健康に多大な影響を及ぼしている。 こうした工場で働くプラスチックを分類する労働者の大多数は農村の婦人たちであり、彼らの賃金は毎月わずか700〜800元(約1万3000〜1万5000円)に過ぎない。最年長の婦人は70歳以上で、工場の操業以来20年以上もここで働いているが、彼女の両手の関節は変形し、S字型に湾曲してしまっている。授乳期の婦人はゴミの山の上で子供に乳を与えている。子供たちはゴミの山の中を駆け巡り、無邪気に医療ゴミの中から注射器の管を拾って玩具にしており、時にはそれを口にくわえて遊んでいることもある。 空気も水も悪いが、カネは良い 王久良は働く婦人たちに「どうしてここで頑張って働き続けるのか」と尋ねたところ、ある婦人がこう答えた。すなわち、本当は働きたくはない。これらのゴミは汚いだけでなく、汚染されているので、身体に悪いことはよく分かっている。但し、生活して行くためには、嫌でも働かざるを得ない。空気は悪いし、水も悪いが、カネは良い。毎月700〜800元も稼げるのだから。 2014年5月に中国政府「人力資源・社会保障部」が発表した統計によれば、2013年末時点における“外出農民工(故郷を離れて働く出稼ぎ農民)”の平均月収は2609元(約5万円)であった。上述した婦人たちは“本地農民工(故郷で働く出稼ぎ農民)”であるが、それにしても月収700〜800元は低すぎる。それでも貧しい彼女たちにとっては貴重な収入源なのである。婦人たちをこのような低賃金で働かせている工場主は、多大な利益を稼ぎ出しているのが実情で、ここにも貧富の格差の縮図が見える。 さて、本題に戻る。1月5日に新華社が配信した『世界のゴミ捨て場』の記事は、「海外ゴミで財をなすところまで落ちぶれることはできない」、「海外ゴミを宝物と見なすことはできない」と述べているが、これらはすでに中国国民も知る既成の事実であり、どんなに虚勢を張っても否定することはできない。そればかりか、国内ではゴミを埋め立てようにも場所がなく、焼却しようにも新規の焼却施設が建設できず、都市部が持て余したゴミを農村部に不当に投棄する状況が今後も続くようなら、中国が真の意味で「世界のゴミ捨て場」となり、世界に冠たるゴミ捨て場になることは間違いない。 今年2月に改定して公布された『“軍隊基層建設綱要(軍隊下部組織建設綱要)”』の第二条第5項には、人民解放軍の任務に”維護社会穏定(社会の安定を守る)”という言葉が新たに追加された。従来、社会の安定維持は“武装警察”の主要任務であり、国防を主体とする軍とは一線を画していた。中国では環境保護を名目とするゴミ焼却場建設反対などの“群体性事件(集団抗議行動)”<注2>が年々増大しており、地方政府の各種建設計画の推進に大きな障害となっている。“維護社会穏定”がテロ防止などを意味するのであれば問題ないが、軍隊が環境保護を目的とした集団抗議行動の鎮圧に使われることになれば、由々しき事である。 <注2>集団抗議行動の発生数は2012年時点で年間20万件を超えたと推定されている。 中国が「世界の工場」と呼ばれた時代は去り、今や中国は「世界のゴミ捨て場」と化した。この汚名を一刻も早く返上することは、世界第2の経済大国である中国にとって責務である。 このコラムについて 世界鑑測 北村豊の「中国・キタムラリポート」 日中両国が本当の意味で交流するには、両国民が相互理解を深めることが先決である。ところが、日本のメディアの中国に関する報道は、「陰陽」の「陽」ばかりが強調され、「陰」がほとんど報道されない。真の中国を理解するために、「褒めるべきは褒め、批判すべきは批判す」という視点に立って、中国国内の実態をリポートする。 http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20150225/277953/?ST=print
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