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中国にまで及んだ「債務中毒」
2015年02月26日(Thu) Financial Times
(2015年2月25日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
行ってみたい世界の電波塔ベスト8
中国は信用中毒の次の犠牲者になるのか(写真は上海の夜景)〔AFPBB News〕
バランスシートは重要だ。これこそが、世界経済に影響を及ぼしてきた先の金融危機の最大の教訓だ。
バランスシートの変化は経済のパフォーマンスを左右する。楽観主義と悲観主義の自己成就的なサイクルの中で貸し出しが変動するためだ。
世界経済はすでに信用中毒に冒されている。次の犠牲者は中国かもしれない。
世界経済のバランスシートに関する4つの疑問
今日の世界経済のバランスシートについて考えていくと、4つの疑問が浮上する。脆弱性を引き起こすものは何か。脆弱性がいま顕在化しているのはどこか。世界の国々は以前の債務危機の遺産にどう対処しているのか。世界経済は新たな脆弱性に対処できるのか、という疑問だ。
では、脆弱性の発生源から考えてみよう。金融セクターが統制されていない国々では、公的セクターの分別のなさが危機の原動力になることよりも、民間セクターの軽率さが原動力になることの方がはるかに多い。
信用供与ブームは、不動産価格の上昇と不動産向け貸し出しの拡大によって生じることが多く、公的セクターのバランスシートが劣化するのは、危機が生じた後であるのが普通だ。
この民間セクターのやり過ぎと公的セクターの借り入れとのつながりを認識しない人がいるとしたら、それは認識できないふりをしているにすぎない。
コンサルティング会社のマッキンゼーがまとめた債務とデレバレッジ(債務削減)に関する調査リポートの改訂版によれば、米国、英国、スペイン、アイルランド、ポルトガルの5カ国の家計部門では、2000年から2007年にかけて所得に対する債務の比率が3分の1以上も大きくなっていた。5カ国はすべて、その後債務危機に見舞われている。
実際、ほかの危機を見ても、発生する前に民間セクターへの貸し出しが大幅に増加していたケースは多い。1982年のチリの危機は、両者がつながっていることの重要な一例だ。
モルガン・スタンレーのルチル・シャルマ氏によれば、これまでに生じた信用供与ブームのうち最も勢いの強かった30件はすべて景気後退に至っており、危機に発展したケースも多いという。
ここでは、債務残高の水準よりも、その国内総生産(GDP)比の変化の大きさの方が重要になる。これは、債務が多くても上手に管理できる社会とそうでない社会があるためでもあり、貸し出しの急増が貸し出し基準の急激な低下と関係することが多いためでもある。
従って、新たな脆弱性がどこで生じているかを見つけるためには、民間の債務が急増している国を探す必要がある。この点で突出しているのが中国だ。
中国の信用ブームの気がかりな特徴
中国では、企業および家計の債務残高のGDP比(%)が2007年から2014年にかけて70ポイント上昇している。金融セクターの債務を加えればこの上昇幅は111ポイントに拡大し、政府の債務まで加えれば124ポイントになる。
中国の大規模な信用供与ブームには気がかりな特徴がいくつかある。第1に、債務の増加分の大半が不動産セクターに集中している。第2に、マッキンゼーによれば、債務残高の30%は「シャドーバンキング」(正規の金融機関のバランスシートではないところで実行される貸し付けのこと、影の銀行)が占めている。
第3に、借り入れの大半は、地方政府がオフバランス*1にしている事業体によって行われている。そして第4に、債務の急増はそれに見合ったトレンド経済成長率の上昇にリンクしておらず、むしろその低下にリンクしている。
こうした特徴があることは、中国が制御不能な金融危機を経験する公算が大きいことを意味するものではない。それどころか、中国政府は危機の封じ込めに必要な道具をすべて手にしている。
しかし、これらの特徴は、需要における経済成長エンジンのスイッチが近々切られることを意味している。景気が減速するにつれ、多くの投資計画が再考を余儀なくされることになるだろう。その発火点は不動産セクターかもしれないが、火の手がそこだけにとどまることはない。
投資がGDPの50%近くを占める経済だけに、需要の(そしてGDPの)下降は予想をはるかに上回る厳しいものになるかもしれない。
*1=関係があるにもかかわらず自らのバランスシートに載せないこと
では、2007年以降に大変な危機に苦しめられた国々の状況を振り返ってみよう。マッキンゼーによれば、デレバレッジが全般的に進んでいる国は1つもない。
確かに、金融以外の民間セクターでデレバレッジが進んでいる国は米国、英国、スペインなどいくつかある。このうち、英国とスペインはともかく、米国では金融セクターのデレバレッジもかなり進んでいる。
しかし、これら3カ国では、民間セクターの債務残高の減少幅よりも政府の債務残高の増加幅の方が大きくなっている。マッキンゼーの調査によれば、債務残高のGDP比はイスラエルを除くすべての高所得国で大きくなっている。
おまけに、多くの高所得国では民間セクターの債務ですら増加し続けている。カナダとフランスはその好例だ。
公的セクターの債務増加にも限界
危機が発生した後に、民間セクターに代わって公的セクターが借り手になることは理にかなっている。ほぼ永久的に借り手である公的セクターは、過剰な借り入れを行っていた民間よりも信用力がはるかに高い場合がほとんどだ。とはいえ、公的セクターの債務の増加にも何らかの限度は間違いなく存在する。
また、以前であれば、危機の直後に公的セクターの債務を膨らませた国が、債務に頼らない経済成長を輸出によって成し遂げることも可能だった。しかし、世界の大部分が過剰債務と格闘している今日においては、この戦略は広く利用できるものではない。
今日では多くの国々において、金融抑圧、マネタイゼーション、インフレ、そして債務再編といった手法が組み合わされて使用されることが確実であるように思われる。経済成長のスピードが速くなればなるほど、そのような結果に至る公算は小さくなる。人口動態と債務の多さを考えれば、日本が抱える課題は特に困難だ。
もっとも、これは長期の話だ。これよりも差し迫った問題は、資産価格の上昇を糧とする大規模な信用供与ブームを演出できる(あるいは、演出してもよいと考えている)大国が世界からついになくなってしまったら一体何が起こるのか、というものだ。
例えば、世界経済の成長は、多くの人々が望んでいるペースより大幅に遅くなってしまうかもしれない。あるいは、先週論じたように、信用バブルの災禍から立ち直りつつある国々がまた新たなバブルに引き寄せられてしまうかもしれない。その候補として思い浮かぶのは米国と英国だ。両国が実際にそうなれば、間違いなく悲惨なことになるだろう。
新たな経済運営法を必要とする世界
世界はいま、債務の制御不能な増加を招かずに需要を下支えする、経済の新しい運営方法を強く必要としている。もし債務の増加による痛みが中国を襲っているのであれば、すべての大国がこれに冒されてしまったことになるだろう。
債務が膨張し続けていることから、この痛みはさらに広がっていく公算が大きい。抜本的な改革を行わなければ、世界経済は、脆弱なバランスシートを作ることに依存してしまうことになる。これに代わる、もっと優れたやり方はいくつか想像することができる。しかし、それらはまだ選択されていない。これらを選択しなければ、危機はまたやって来る。
By Martin Wolf
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43023
アルゼンチンの政治:沈黙の行進と国民の怒り
2015年02月26日(Thu) The Economist
(英エコノミスト誌 2015年2月21日号)
行進に参加した人たちは検察官の死の真相を求めているが、事の真相は政治的な戦いの犠牲になるかもしれない。
検察官の不審死めぐり数万人がデモ、アルゼンチン首都
2月18日、アルゼンチン・ブエノスアイレスで行われたアルベルト・ニスマン検事を追悼する「沈黙の行進」に参加した人たち〔AFPBB News〕
アルゼンチンの抗議行動は通常、鍋を叩き、ドラムを鳴らし、スローガンを叫ぶ音が鳴り響く騒々しいイベントだ。だが、2月18日の大規模な行進は、沈黙に近い状態の中で行われた。
行進は、アルゼンチン最悪のテロ行為に対するイランの関与の隠蔽を図ったとして同国大統領を告発した検察官、アルベルト・ニスマン氏の死から1カ月後に行われた。およそ40万人の人が、雨が降りしきる中で議会からニスマン氏の元オフィスへ、さらに大統領宮殿へ向かって行進した。
ナゾの死を遂げた検察官の追悼
参加者たちは、自宅浴室で銃で撃たれて死亡しているのが見つかったニスマン氏と、1994年にブエノスアイレスで起きたユダヤ人協会本部ビル爆破事件の犠牲者85人のために「真相」と「正義」を求めるプラカードを掲げていた。
亡くなった同僚に敬意を表する行進を組織した連邦検察官は、自分たちの抗議が政治を超越することを望み、沈黙を呼びかけた。それは考えが甘かった。
ニスマン氏は、クリスティナ・フェルナンデス・デ・キルチネル大統領を犯罪で告発していた。行進の参加者の中で特に目立った著名人は、大統領を最も激しく批判していた人たちだ。その中にはマウリシオ・マクリ氏とセルジオ・マサ氏も含まれていた。両氏は今年行われる大統領選挙でフェルナンデス氏の後を継ぐ有力候補だ。
行進には農家のロビー団体も参加した。農家ロビー団体は農業税を巡ってフェルナンデス氏と衝突し、2008年に大統領が失脚しかけた。抗議行動の責任者である検察官数人は、フェルナンデス氏と、前任の大統領で2010年に死去した夫のネストル・キルチネル氏の汚職疑惑の捜査を率いていた。
不用意なフェルナンデス氏が政治的な熱気を煽ることになった。「我々は自分たちの歌、自分たちの喜び、そして『祖国万歳』のスローガンを守り続ける」。2月11日に同氏はこう宣言した。「彼ら(行進の参加者)は好きに沈黙すればいい」。追悼されている悲劇を考えると、フェルナンデス氏の発言は控えめに言っても無神経だった。
大統領の報道官は、集会は「司法クーデター」の一環だと述べた。一部の検察官は麻薬密売と関係していると、ある大統領側近は示唆した。この側近はさらに奇怪なことに、検察官たちはユダヤ人協会本部ビル爆破事件の捜査を妨害しようとした反ユダヤ主義者だと付け加えた。
辛辣な批判の応酬が示しているように、爆破事件とその捜査を取り巻くナゾは、有害な内部対立の一環だ。大統領は、政府の他機関――特に司法と諜報機関――と対立しており、それらの機関内部の派閥が互いに対立しているのだ。
「検察が正義を確保する責任を負っている時に、なぜその検察官が行進しているのか戸惑う人もいるだろう」。ブエノスアイレスにあるトルクァト・ディ・テラ大学のアレハンドロ・ボンベッキ氏はこう話す。
その答えは、一部の検察官がフェルナンデス氏と対立しているからだ。そして彼らは大半のアルゼンチン国民と同じくらい、ニスマン氏の死を取り巻く状況と、もしあったとすれば、爆破事件の真実隠蔽で大統領が担った役割が説明される日が来ることに懐疑的なのだ。
世論を二分する大統領
前ファーストレディーがアルゼンチン初の女性大統領に就任
2007年12月10日、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスの国会議事堂で行われた就任式で、夫であるネストル・キルチネル前大統領(左)から政権を象徴する職杖を引き継ぐクリスティナ・フェルナンデス・デ・キルチネル大統領〔AFPBB News〕
2007年に夫の後を継いで大統領に就任したフェルナンデス氏は、通常は大統領の管轄権外で活動する政府機関を支配下に置こうとした。
政府の支出を賄うために中央銀行の準備金を奪い、国家統計局に圧力をかけてインフレ統計を改竄させ、自身の政権に批判的なメディアを解体しようとした。
フェルナンデス氏は決して、高圧的に振る舞った唯一のアルゼンチン指導者ではない。20世紀初頭に大統領として近代化を進めたイポリト・イリゴージェン、ポピュリストのフアン・ペロン、1976年から1983年にかけてアルゼンチンを支配した軍事独裁者らは皆、独立した機関を大統領の意思に従わせようとした。
独裁体制が終わった時、民主的に選出された指導者たちは、司法府の独立性をある程度回復させ、軍事政権を擁護する大物をパージした。だが、民主主義が復活して以来、最も世論を二分する指導者となったフェルナンデス氏の指揮下で、この進歩が反転した。
同氏はある集会で「Vamos por todo(一か八かすべてを賭けるの意)」と述べたことで知られている。それが彼女の非公式のモットーになった。
司法および諜報機関との確執
ニスマン論争の中心に位置する司法と諜報機関については、フェルナンデス氏は部分的にしか成功しなかった。2013年、フェルナンデス氏に不利な司法判断が相次いだ後、同氏は裁判所を大統領の影響力の下に置く措置を導入した。最も物議を醸す措置は最高裁によって却下されたが、この試みは多くの裁判官を怒らせた。
検察官は割れている。アルゼンチン検察のトップである検事総長は大統領の盟友だ。一方、行進を組織したのは、大統領の影響力を拒否する検察官たちだ。
フェルナンデス氏は諜報機関にはもっと説明責任が必要だと考えている。それは正しい。だが、同氏は説明責任を要求する立場にない。何しろ、キルチネル夫妻の大統領在任期間の大半を通じて、諜報機関SIは彼らの政敵にスパイ行為を働いてきた。
フェルナンデス氏が2013年に突如イランを受け入れ、ユダヤ人協会本部ビル爆破事件を調べる「真実委員会」を立ち上げる共同合意を発表したことは、爆破事件へのイランの関与を暴くことに尽力してきた多くのSI職員を怒らせた。
フェルナンデス氏は、ニスマン氏の告発文書の基礎となった大統領に対する虚偽の疑惑はスパイがでっち上げたものだと話しており、悪徳工作員がニスマン氏を殺した可能性があると考えている。フェルナンデス氏は今年1月、SIを解体し、新たな連邦諜報機関を創設する法案を提出した。
爆破事件とニスマン氏の死に対する捜査の責任を負うさまざまな機関同士、また各機関内の分裂のせいで、どちらの事件も解決されない可能性が高い。
独立志向の検察官にはその意志があるが、「自分たちに必要な手段がないと感じている」とボンベッキ氏は言う。同氏によると、検事総長と司法の全面的な支持がなければ、「彼らは必要な情報や保護が得られない」という。
2月13日、連邦検事はニスマン氏による告発の捜査を継続することを決めた。証拠が十分強力だと裁判官が判断すれば、その後、正式に立件される可能性がある。
大統領在任中にフェルナンデス氏を訴追できるのは議会だけだ。10月の大統領選挙の後、同氏は南米南部共同市場(メルコスール)の疑似立法府であるメルコスール議会の選挙に出馬することで訴追免除を図るとの憶測が飛んでいる。
アルゼンチン国民の怒り
アルゼンチンは、司法を強化し、諜報機関をコントロールしつつ、両機関を政治化しない大統領を必要としている。司法の独立性に関する世界経済フォーラム(WEF)のランキングでは、アルゼンチンは144カ国中127位という冴えない順位につけている。
フェルナンデス氏の後を継ぐ有力候補は、誰も熱心な改革派に見えない。ブエノスアイレス大学の社会学者、リリアナ・デ・リス氏は「個性重視の政治を控えそうな人はまったく見当たらない」と嘆く。
もしそうだとすれば、アルゼンチン国民は今後も怒り続けることになるだろう。それも恐らく、常に沈黙の中で怒るとは限らない。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43019
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