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“アベノリスク”に脅える黒田総裁 国債市場に不穏な動き
http://diamond.jp/articles/-/67486
2015年2月26日 山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員] ダイヤモンド・オンライン
日銀の黒田総裁と安倍首相の間にすきま風が吹いている。2月12日の経済財政諮問会議で黒田総裁は発言を求め「財政の信任が揺らげば金利急騰のリスクがある」と首相に直言した。金利急騰とは国債暴落のことだ。毎月8−10兆円もの国債を買いまくる日銀の総裁が「暴落リスク」を口にして、首相に財政健全化を訴えた。耳の痛い話は聞きたがらない、といわれる首相はどう受け止めただろうか。既定路線だった消費税増税を先送りしたのは首相である。
奇妙なことに、諮問会議の議事録には、この緊迫した場面は載っていない。公式には発言は無かったことになっている。政府の中枢でいったい何が起きているのか。
■オフレコ発言に日銀総裁の危機感 米ムーディーズの国債格下げが鳴らす警鐘
経済財政諮問会議は政府側から首相、官房長官、財務相、総務相、経産相、経済財政担当相それに日銀総裁の7人。民間委員として伊藤元重東大教授、榊原定征経団連会長、高橋進日本総研理事長、新浪剛史サントリー社長の4人、計11人で構成される。首相を議長役に財政を軸とする経済政策の指針を議論する。副大臣や事務方の役人が傍聴し、総勢30人余が列席する会合だ。
参加者などの話によると、黒田総裁は自ら発言を求め、米国の格付け会社ムーディーズによる「日本国債の格下げ」に触れ、日本の財政に市場から懸念が出始めていることを指摘した。
格下げは「財政赤字の削減目標の達成に不確実性が増した」というのが理由だ。消費税増税の先送りを受けて発表された。平たく言えば、借金を返そうという姿勢が怪しい、ということである。日本国の信用は中国・韓国より低くなった。「この道しかない」と突き進む安倍さんに、市場が放ったカウンターパンチともいえる衝撃だった。
市場で日本国債はそこまで危ぶまれている、とリスクを語る黒田総裁。首相は「ムーディーズによく説明して理解してもらえばいい」と応じた。
「説明しても彼らは格下げする時は、こちらの言い分に関係なく格下げする」
市場は政府の思い通りにならないことを黒田は強調した。
「黒田総裁は元財務官僚の顔になってきた」。首相周辺でそんな声が上がっている。官邸の意に沿った金融政策を行うと見られていた黒田総裁に、財政の健全化を求める発言が目立ってきたからだ。
「このままでは危ない、と黒田総裁は思い始めたようです。失敗したら責任を問われるのは総裁ですから」
日銀関係者はそう指摘する。恐れているのは、はしごを外されることだ、という。
「日銀が異次元緩和をする。政府は財政の健全化をしっかりやってくださいね、という約束があった。ところが財政再建は政治によって棚上げされ金融緩和だけが取り残された。日銀が国債を買って放漫財政を支えるという最悪の状況になる」というのだ。
政府が毎月発行する国債は10兆円前後だが、ほぼ匹敵する額の国債を日銀は金融機関を通じて買い上げている。財政赤字を日銀がお札を発行して埋めているようなものだ。「日銀による財政ファイナンス」とも呼ばれる財政の禁じ手である。
「極めて異常なことが当たり前のようになった。それが国債の格下げにつながったのに首相に危機感がない。そのことが一番危ない」
財務省の幹部は名を秘してそう語った。首相が言ったとされる「ムーディーズによく説明して理解してもらえ」という発言に、理解の程度がにじみ出ている。格付け会社は米国による金融支配の装置ともいわれる。政府と金融界の濃密な連携の一角にあり、他国の政府の意向など眼中にない。斜に構えた見方をすれば、格下げは経済外交の隠し球であり、投機筋が特定国の通貨に売りを浴びせる飛び道具にもなる。財務官として通貨外交に携わった黒田はそのことを熟知している。
■欧州では国債リスク見直しの動き 財政ファイナンスにブレーキ
日本国債を取り巻くもう一つの不穏な動きがスイスのバーゼルで起きている。きっかけはギリシャ危機だ。国家の破たんが現実味を帯び、国債を保有することのリスクを再検討する動きがバーゼルにある国際決済銀行(BIS)で始まった。
「金融機関が保有する自国の国債はリスクゼロと見なす」というのがこれまでのルールだった。国家に倒産はない、とされていた。財政が行き詰まれば徴税や緊縮財政でカネをひねり出す。国債の保有者が国内にいるなら、税金で国債の支払いをすれば右のポケットのカネで左のポケットを埋めることと同じ、という理屈だった。
ギリシャで左翼政権が誕生したのは、緊縮や増税をやめ債務削減だ、という国民の声が勝ったからだ。増税で財政赤字を埋めることが困難なのは、日本もギリシャも似たようなものだ。
バーゼル委員会と呼ばれる国際金融のルールを決める組織で「国債のリスク見直し」が水面下で動き出した。実現すれば「格付け」が評価のモノサシになるだろう。中国や韓国より低い格付けの日本国債は評価損が出る。保有する銀行に膨大な損失が出る。大量に国債を抱える日銀はどうなるのか。
議論のきっかけは欧州中央銀行が金融の量的緩和を決めたことだった。ECBの量的緩和も日本と同じ手法だ。各国の中央銀行が金融機関から国債を買い上げる。国債はリスクゼロと考えていいのか、という積年の問題がが噴出した。議論をリードしているのは欧州経済を支えるドイツ。健全財政で高い格付けを保っている。財政節度が緩い国の国債とドイツ国債が同列に扱われるのは納得できない。財政規律を抜きにユーロ圏は維持できないと考えている。
人ごとのように見ていたギリシャ危機は日本と無縁でなかった。リスク評価で困る国は少なくない。バーゼル委員会の結論がすんなりまとまるとは思えないが、それぞれの国が国債のリスク評価を迫られるのは国際的な潮流になるだろう。グローバル経済とはそういうものだ。
アメリカ発の国債の格下げ、欧州発のリスク再評価。別のところで進む動きを重ね合わせると、日本国が抱える潜在的リスクは危険水域に入ったように思える。
評価損〜国債暴落〜金利暴騰はアベノミクスの最悪シナリオだ。「そんなことは起きない」とか「財務省の脅しだ」と切り捨てればいいことか。
■危機感の背景にアベノミクス不発 崩れた「2年で手仕舞い」のシナリオ
総裁の危機感の背景には、アベノミクスの空回りがある。年間の60兆円、これまでの2倍のベースマネーを注入して物価を2年で2%上げる。一昨年4月、黒田総裁はそう宣言して異次元緩和に突入した。その2年が間もなくやってくる。マネーをじゃぶじゃぶにすればインフレ期待が高まり、後になれば値段が上がる、と消費者がモノを買い始める、という見立てだった。物価は確かに上がった。1月は2.5%の上昇だった。
それは消費税増税と円安による輸入物価の高騰で、インフレ期待による物価上昇は見えない。4月になれば消費税増税から1年になり、前年同月比の物価上昇で消費税分(約1.5%程度)は剥げ落ちる。「2年で2%」の目標は果たせそうにない。
昨秋には「黒田バズーカ第二弾」と囃された追加緩和に踏み切ったが、効果は出ていない。国債の大量買い上げだけでなく、株式指標投信(ETF)や不動産のJリートなどの購入枠を拡大し、何でもありの姿勢を示したがインフレ期待は起こっていない。
「黒田さんは焦っている。強烈な手法を使う短期決戦で臨み2年で手仕舞いというシナリオだったが、完全に崩れた。このままずるずる行くと最悪のシナリオになりかねない」
そんな見方が金融関係者から出ている。出口が見えない金融緩和。安倍首相は「2017年4月は必ず消費税増税を」と約束したが政治家の言葉だ。増税は先送りされ、金融による景気刺激が求められ、日銀は国債買いの蟻地獄から抜けられない、という事態も予想される。
そんな中で国債市場に異変が起きている。大量の買いあげに、金融機関からの売りが追い付かない。目標数量に達しない「不調」「未達」が続発している。金融関係者は言う。
「物価目標に届かないので日銀は追加緩和を迫られる。国債価格はこの先も上がるから今は売り控えよう、という動きもあって政府の注文に応えるだけの量が出て来ない」
品薄で価格が上がり10年ものの国債金利は0.2%まで下がった。物価上昇を差し引くと実質金利はマイナスになる。
「こんなことをしていたらいつかは暴落が」と心配しつつ、目先はまだ上がるという算段から国債を手放さない。月に10兆円近いカネが流れ込むことで国債バブルが起きているのだ。国債の価格上昇は暴落のマグニチュードを高める。マイナス金利は、浜辺で潮が急速に引く津波の前兆を思わす不気味さがある。
「バブルは弾けた時に分かる」。そう言ったのは米国の中央銀行FRBの議長だったグリーンスパンだった。金融緩和によって沸騰する市場を「根拠なき熱狂」と言い放ったが、後にバブルだったと後悔した。
バブルの後に起こるのはバブル崩壊である。だから黒田は警鐘を発した。
国債格下げ、リスク再評価、市場の熱狂。崩壊への道筋は、不確かながら見えて来たが、政治家の目には「この道」しか見えない。
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