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GDPプラス転換はアベノミクスの手柄ではない 消費増税の深刻な後遺症、所得改善の嘘
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150225-00010002-bjournal-bus_all
Business Journal 2月25日(水)6時0分配信
内閣府が先週(2月16日)発表した2014年10-12月期の国内総生産(GDP)速報値で、物価変動の影響を除く実質の季節調整値の伸び率が前期比0.6%増(年率換算2.2%増)に浮上した。GDPの実質伸び率がプラスに転じたのは、消費増税後初めてのことである。新聞報道によると、政府では甘利明経済再生担当大臣がこの発表を受けて記者会見し、「雇用・所得環境が引き続き改善し、堅調な民需に支えられた景気回復が見込まれる」と胸を張り、アベノミクスの手柄と言わんばかりだったという。
しかし、宣伝上手の政府の言葉を鵜呑みにして、手放しで喜ぶのは禁物だ。そもそも政府は、消費増税の影響を「あっても軽微だ」と言っていたにもかかわらず、実際の経済は2期連続のマイナス成長に落ち込んだ。多くのエコノミストが昨年7-9月から景気が回復すると分析していたにもかかわらず、その回復は約3カ月後ろにずれ込んだ例もある。
今回は、実際の問題として、新年度の経済をどう読むべきなのか。経済全体の動向を大きく左右する国民の賃金は上がるのかを含めて、しっかりと考えてみよう。
●GDPプラス転換の立役者
グラフ1「実質GDPの伸び率」をみていただきたい。内閣府が公表した実質GDPの推移をグラフにしたものだ。ご覧のとおり、昨年4月に税率を5%から8%に引き上げる消費増税の後、四半期ベースで2期連続マイナス成長に落ち込んでいたGDPが、ようやくプラス成長に浮上した。ここで問題なのは、何が寄与してプラス軌道を回復したのか、その要因である。
冒頭で紹介した新聞報道と比べて、どちらがより正確なニュアンスを伝えているのかわからないが、内閣府の記者会見録によると、甘利大臣は記者会見の冒頭で、「本日公表しました2014年10-12月期GDP速報では、実質成長率は前期比年率2.2%と、3四半期ぶりのプラスとなりました」と成果を強調したうえで、その要因として、まず「雇用・所得環境の改善傾向を背景とした個人消費」をあげ、次いで「アメリカや中国向けの輸出など」が「プラスに寄与している」と述べたことになっている。
周知のとおり、雇用や所得の改善は、安倍政権がアベノミクスの究極の目標として、常に改善を目指すと表明してきた命題だ。それが実現して個人消費が伸びているのならば、これほど歓迎すべきことはない。
実際はどうだろうか。そこで、みていただきたいのが、グラフ2「実質GDPの科目別伸び率」(本文冒頭の【詳細図表はこちら】よりリンク)だ。前期(14年7-9月期)のマイナス0.6%から今回(14年10-12月期)のプラス0.6%まで、差し引きで1.2ポイント改善する原動力となった部門はなんだったのだろうか。
このグラフをみれば、答えは一目瞭然だ。前期の1.5%増から今回の2.7%に1.2ポイント改善した輸出が唯一最大のけん引役である。輸出の伸びが、原油安もあってあまり増えなかった輸入の伸びを大きく上回り、今回のGDPプラス転換の立役者になったのだ。
●実態は「他人任せ」
しかし、輸出が伸びた主因が、アベノミクスの一環である円安だと断定するのは早計である。なぜならば、輸出は全世界に向けて万遍なく伸びたわけではないからだ。かつての日本より深刻とされるバブル崩壊に苦しむ中国向けや、ギリシア危機の再燃に揺れる欧州向けの輸出は伸び悩んだ。唯一、気を吐いている米国向け輸出に支えられての輸出の拡大だったのである。言い換えれば、アベノミクスではなく外需頼み、他人任せが輸出拡大の実態だった。
次いで、2番目に改善幅が大きいのが、前回の0.1%減から0.1%増に0.2ポイントの改善を見せた民間企業の設備投資だ。伸び率そのものは小さく、横ばい圏を脱したとは言い難いが、それでも3期ぶりのプラスになった。こちらは、消費増税後に積み上がった工業製品の在庫、特に自動車など輸送機器や機械の在庫調整がようやく進み始めたことが寄与したものとみられている。とはいえ、いずれも自律調整の域を出ない。
一方、甘利大臣がいの一番にあげた個人消費は、前期の0.2%増から今回の0.3%増に0.1ポイントの改善で、主要部門の中では3番手の伸びに過ぎない。いくら個人消費の全体に占める割合が大きいからといっても、四半期ベースの実質GDP伸び率のプラス転換の要因の1番手にあげるのは無理がある。
今回のグラフには加えなかったが、個人を中心にした住宅投資は1.2%減と3期連続でマイナス。こちらは、増税前の駆け込み需要の反動からいまだに抜け出せていない状況が浮き彫りになっている。
また、アベノミクスの評価を論じるために見逃せないのが、今回0.1%増と前期の0.2%増から0.1ポイント下がった政府支出である。こちらは、ずばりアベノミクスの「第2の矢」(機動的な財政政策)の力不足の象徴だ。
安倍首相は昨年春から何度も「経済状況を注視し、機動的な財政運営を行ってまいります。とにかく、消費税アップによる経済への悪影響を最小限に抑え、できるだけ速やかに景気が回復軌道に戻るよう、万全を期してまいります」(14年度予算が成立した14年3月20日の記者会見)と繰り返してきた。しかし今回の結果は、首相の公約が十分果たされたとはいえない状況を浮き彫りにしている。原因は、消費増税前に異例の大型補正予算を組んで徹底したバラマキをやったことにある。実際に消費増税が実施された今年度の補正予算規模を縮小せざるを得なかったツケが回ってきたといわざるを得ない。
念のため、安倍政権の中にも、14年10-12月期のGDP動向を冷静にコメントした閣僚がいたことを指摘しておきたい。それは首相の女房役の官房長官をつとめる菅義偉氏で、甘利大臣の記者会見と同じ2月16日午前の記者会見では、「個人消費の伸びが遅れている。物価の上昇に家庭の所得が追いついておらず、消費者マインドがまだ低水準だ」との認識を示したという。
●実質賃金は18カ月連続減
さて、それでは先行きはどうなるのだろうか。日本経済新聞が今回のGDP公表後にまとめた民間シンクタンク10社の15年度経済予測によると、平均でプラス1.8%の成長が見込まれるという。筆者はかねて、15年度は上振れして2%を超えるケースもあり得るとの立場をとってきた。シンクタンクの予測もそれなりの説得力があると考えている。
ただ、けん引役は引き続き米国向け輸出とみるべきだ。米国は、人口の増加と雇用の拡大、そしてシェールガス革命などに支えられて内需が旺盛だ。その米国向け輸出次第で、日本経済も上振れする可能性がありそうだ。
一方、個人消費が力強く経済をけん引すると期待するのは時期尚早だろう。春闘が本格化しており、大企業を中心に賃上げの動きが広がってきたのは事実だ。しかし、厚生労働省が公表している「毎月労働統計」をみると、実質賃金は昨年12月まで18カ月連続で減っている。輸入品の値上げや消費増税に、昇給のペースが追いついていないのである。残念ながら、状況を打開できるほど大幅な賃上げができる企業は多くない。これが、本格的な消費回復にまだ時間がかかる大きな理由である。
(文=町田徹/経済ジャーナリスト)
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