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プロスペクト理論
なぜ、損している人はもっと損する運命なのか
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150224-00014635-president-bus_all
プレジデント 2月24日(火)10時15分配信
■過去の失敗を取り戻したい気持ちにつけ入る
失敗しない人など、この世にはいない。
仕事や人間関係において「ああすればよかった」という後悔の思いを誰もが持っているに違いない。特に、お金にまつわる失敗は、より大きな後悔の念を残しがちである。
詐欺や悪質業者はそこへつけ込んでくる。
近年、原野商法の被害者らが再び狙われている。原野商法とは、ほとんど価値のない土地を「必ず値上がりするから」と嘘の説明をされて、時価よりも高い金額で購入させられるものだ。特に、土地の値段が上がっていた1980年代のバブル期に、被害に遭った人が多く、詐欺業者らはこれらの被害者名簿を手に入れて、電話をかける。
数十年前に北海道の土地を購入した高齢女性のもとに、近頃になって突然、業者から「海外の人が、あなたの所有地を欲しがっています」という電話がかかってきた。女性が業者の話を聞くと、「所有地を売却するためには、まずその土地の調査が必要になります」と言われた。そこで、その費用として30万円を払ってしまっている。こうした相談が、全国の消費者センターに数多く寄せられている。
この「原野2次商法」では、過去に高額で土地を買ったものの、それを処分できずに困っている気持ちにつけいり、「あなたの土地が、水資源やリゾート地として外国人が必要としています」と囁きかける。そして、土地の売却のためには「まず、土地の測量や整地が必要になります」「外国のサイトで宣伝します」などと言い、その費用をせしめるのだ。なかには、土地の買い手がいることを信じさせるために、「買付証明書」なる書類を渡して、信ぴょう性を持たせることもある。
被害者の多くは、所有地から遠い場所に住んでいるため、おいそれとは現地に赴けない。そのため、どうしても業者に、調査などを任せなければならない事情もあるが、それにしても、なぜ、このような眉唾な話に多くの人が簡単に乗ってしまうのだろうか。
■負けがこむと、人は「万馬券」を狙う
損得勘定のなかで、人がどんな行動をとってしまうのかを説明しているものに、「プロスペクト理論」がある。プロスペクトとは、英語で、「期待」や「見通し」という意味がある。
この理論を説明するのに、次のような2つの質問がよく用いられる。
1つが「何もせずに5万円をもらえる」場合と、2つ目に「サイコロを振って奇数が出れば50万円がもらえ、偶数が出ればお金はもらえない」という選択肢があった時、どちらを選ぶかというものである。おそらく多くの人は、 確実にお金をもらえる前者を選択するに違いない。
しかし、もし次のようなシチュエーションだったらどうだろうか。
自らが50万円の借金を抱えて苦しんでいたとする。そうした状況のなかで、同じ問いをされた場合、多くの人は、リスクの高い後者を選択してしまう。
つまり、人は損失を抱えていない場面では、確実にお金をもらえる方を選ぶが、借金をしていると損を取り戻し、それをゼロにしようとする行動をとってしまうものなのだ。
わかりやすいのは、競馬などのギャンブルであろう。
負けがこんでいない状況では、確実に利益を得ようと、人気のある馬を中心に、堅実な倍率の馬券を買う。しかし、負けが込んでくると、失った金を取り戻したいと思いから、当選するのがほぼ難しいであろう高倍率の馬(万馬券)に、お金をつぎ込んでしまいがちである。そして結局、当選せずに、さらに負けが込んでしまう。
人は何事もなく利益を得られる場面では確実な道を選ぶが、損失を抱えた状況だと、リスクある選択肢を選んでしまうものである。
これを先の原野商法にあてはめれば、過去に土地を高値で買わされて、損をしている状態である。その損失を取り戻すため、相手が面識のない業者で、信ぴょう性を確認できないリスクある提案であっても、その話を受け入れて、お金を払ってしまうのだ。
よく過去に詐欺や悪質商法の被害に遭った人は、再び、儲け話を持ち掛けられると、その話に乗ってしまい、さらに金を騙し取られてしまいがちといわれる。これも同じで、以前に失ったお金を取り戻そうとして、リスキーな選択してしまうためである。
■客は「利する」より「損する」に敏感
ここでいえるのは、人は「利する」ことよりも、「損をする」ことに、より敏感に反応するということだ。
2人の営業マンがいて、ある工場の経営者に最新機械の売り込みをしたとする。
1人はそれを導入することで、「生産性が上がり、いかに収益が上がるか」という、メリットのある話を展開する。だが、経営者は借金までして高額な機械を購入するまでの決断にまでは至らない。
それに対して、もう1人の営業マンは、機械の老朽化に目をつけて、次のような話を展開する。
「もしこのままこの機械を使って故障し、万が一、作業がストップしたら、納期までに商品が納められず、多額の損失を抱えることになりかねませんよ」
利益を得られる話ばかりしていても、相手の心には響かない。それよりも、いかに損をするかを話すことで、相手は話に興味を持つようになる。ビジネスにおいて、相手の状況次第で「○○すると、得をします」よりも、「○○すると、損をする」という言葉の方が相手の心に響くものだ。
そして、「メンテナンスに莫大なお金をかけるよりも、ここで新しい機械を導入して生産性をあげた方が、間違いなく売り上げがあがるはずです」といえば、契約にグッと近づけることだろう。
営業マンのなかには、顧客から「当社は借金をしているから、新しいもの(新商品)にお金を出せない」と言われると、その言葉を真に受けてすぐにあきらめる人がよくいるが、それは早計である。先の理論からいえば、新たな機械を導入するというリスクを伴う意志決定は、置かれた状況に左右される。要するに、相手が借金をして、経営が厳しい状況であればこそ、「ものを買う」可能性も十分にあるのだ。
「利する」と「損する」をうまくコラボさせることで、さらに相手の購買意欲を引き出すことができる。
最近、通販サイトや旅行サイトを利用すると、知らぬ間に1000円分のポイントがついていることがある。だが、そのポイントが利用できる期間は1カ月ほどで、それを過ぎると、失効してしまう。私を含めた、多くの利用者は1000円を儲けたとの思いから、「使わなければ、もったいない」という気持ちが生れて、特に買う予定もないのに、商品などを購入してしまう。
これはまさに、「得をした」という気持ちに、有効期限を決めることで、「損をしてしまう」という心理的効果をまじえたものであろう。この手法は、ビジネスの様々な場に生かされているのである。
ルポライター 多田文明=文
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