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ピケティ氏が1月に来日した際には、さまざまなメディアが大きく取り上げた。
ピケティの『21世紀の資本』を読んだ後、何をすべきか
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20150223-00014645-president-nb
プレジデント 2015/2/23 09:15 茂木 健一郎 撮影=相澤 正
トマ・ピケティ氏の『21世紀の資本』。この本が、ピケティ氏の母国のフランスだけでなく、アメリカや日本でもベストセラーになったのは、時代の必然であろう。
経済のグローバル化に伴い、さまざまな変化の波が各国に押し寄せている。そんな中、人々は、自身の働き方や、ライフスタイルについて模索し、新しい方向性を探っている。未来に対する不安が、ピケティ氏の論への関心を高めた。
「r>g」。資本収益率は、経済成長率を上回る。真面目に働いているだけでは、経済成長に見合う賃金の上昇しか享受できず、資本、すなわちすでに蓄積された富の増大に追いつけない。そのような格差を是正するために、富裕な層に対する累進課税を国際的に進めるべきだというのがピケティ氏の主張の根幹である。
たいへん興味深い論点だが、税制の変更などは国の政策であり、個人でどうこうできることではない。『21世紀の資本』の論を受け、社会の中で生きる一人の人間として、できることは何だろう?
ピケティ氏の著書から受け取るべきメッセージの一つは、それぞれの個人も、自分のできる範囲で株式などへの投資を行うべきだ、ということかもしれない。
もともと、日本人は、貯蓄があっても、リスクを伴う投資に振り向けることが少ないと言われている。資本収益率が、経済成長率を長期的に上回るのならば、各個人も、いわば人生の「ポートフォリオ」の一部として、自身の資金を(たとえ少額でも)資本に投入するのが正しい。そのためには、国としても少額投資をしやすい環境をつくるという政策が有効だろう。
ピケティ氏の議論を、一人の人生における「生き方」へと応用すると、そこには、さらに興味深い論点が表れる。
私たちは、資本主義の社会に生きている。大前提になるのは、資本が、新たな価値の創造のための基盤になるという事実である。
資本の大切さは、個人の生涯も同じこと。お金はもちろん、知識やスキル、人脈もまた、一人ひとりにとっての「資本」になる。
日々真面目に働くということももちろん大切だが、それは、ともすれば時間の切り売りになる。より力強い成長軌道に乗るためには、個人としての「資本」の蓄積が必要である。
働いて賃金を得ることを「フロー」だとすれば、「ストック」も拡充しなければならない。たとえば、外国語や、プログラム能力、システム思考といった知やスキルの「ストック」を拡充することが、中長期的なリターンを増やすことにつながるだろう。
知識やスキル、人脈といった個人レベルでの「資本」には、それに伴う収益がある。どんなに熱心に働いても、将来のための「資本」が蓄積しないようでは、虚しい。
もともと、『21世紀の資本』の原題は、カール・マルクスの『資本論』を意識したとも言われている。このため、本書も、『21世紀の資本論』という邦題でもよかった、という声も聞こえる。
労働と資本の関係という、資本主義社会における古くて新しい、永遠の課題。働くということは、時間を切り売りしてお金をもらうということだけではないはずだ。
働くことで有形無形の「資本」を蓄積する必要性。それこそが、ピケティ氏の「r>g」から受け止めるべき、最大のメッセージだろう。
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