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切り刻まれるソニー、「大手電機」卒業へ 平井社長退任とスマホ&テレビ撤退へ期待高まる
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150222-00010000-bjournal-bus_all
Business Journal 2月22日(日)6時0分配信
ソニーはいったい、どこへ向かおうとしているのか――。
ソニーは2月18日、自らを世界企業に飛躍させた「ウォークマン」を擁するビデオ&サウンド事業を10月に本体から切り離して分社化すると発表した。同事業の年間売上高は3800億円で、同社エレクトロニクス事業の7%を占める。1979年に発売されたウォークマンは井深大、盛田昭夫の2人の創業者のこだわりや経営感覚が発揮された商品だ。「海外に行く飛行機の中で、良い音が聴きたい」という井深氏の言葉が開発のきっかけになった。盛田氏が「再生機能だけでいい」と指示し発売を早め、世界的なヒット商品になった。
ソニーは赤字事業を分社化して止血するだけではない。分社の対象を、黒字経営を続けているAV機器やデバイス、デジタルカメラに広げる。平井一夫社長は18日の会見で「組織の階層を減らし、意思決定を早め、結果・説明責任を明確にする」との狙いを明らかにした。
スマートフォン(スマホ)事業は販売地域や機種を絞り込み2100人規模の人員削減を進めているが、中国新興メーカーの台頭が著しく、利益貢献の見通しは立たない。平井氏は「市場環境を見ながら、売却や提携といった戦略を大胆に考えないといけない」と語り、「スマホ事業の出口戦略に言及したもの」(市場関係者)と受け止められている。
ソニーは昨年7月、今後も低成長が予想されるテレビ事業をソニービジュアルプロダクツに移管・分社化したが、「売却を一切考えないというわけではない」と含みを残した。2兆円から8300億円まで年間売上高を落してきたため、「テレビ事業の売却に踏み出せば株価はもっと上がる」(市場関係者)とみられている。ちなみに競合の東芝はすでに海外テレビ事業からの撤退を決めている。
●新中期経営計画
ソニーが18日に発表した2015〜17年度の新中期経営計画で今後の収益源と位置づけたのは、半導体、ゲーム機、映画、音楽の4分野だ。半導体はデジタルカメラの心臓部であるイメージセンサーと呼ばれる画像処理用デバイスで、自動運転関連や医療分野の用途を開拓する。経営資源を集中投資し、利益拡大を目指す成長牽引領域として以下の3事業を挙げた。
(1)家庭用ゲーム機・プレイステーション関連の「ゲーム&ネットワークサービス」
(2)映画や音楽などの「エンターテインメント」
(3)画像センサーなどの「デバイス」
今回発表された新中計前の12〜14年度中計は未達に終わり、15年3月期決算では上場以来初の無配に転落した。平井氏は経営責任について、18日の会見で次のように語った。
「正直言って、できたことと、できなかったことがある。掲げた目標を達成していない点は反省するが、ここまで3年間やってきて会社は良い方向に向かいつつある。改革をやり切った後に成長のフェーズに会社を持っていくのが私の最大の任務であり責任である」
平井氏はくすぶる経営責任論を否定し、「続投を事実上宣言した」(市場関係者)。
新中経で「最終年度(18年3月期)に営業利益を5000億円以上とする」との目標を掲げたが、この数字は1998年3月期にあげた5300億円以来の高い水準。ソニーは2月4日、15年3月期の連結営業損益(米国会計基準)が400億円の赤字予想から一転して200億円の黒字になると発表、業績回復への期待が高まったが、市場では「営業損益段階で400億円の赤字から200億円の黒字に上振れただけ。売上高8兆円に対する営業利益率はわずか0.25%にすぎない」(市場関係者)と冷めた見方で受け止められている。
人事では構造改革を主導している吉田憲一郎最高財務責任者(CFO)が4月1日付で副社長を兼務し、もう1人の副社長にデバイスや研究開発(R&D)を担当する鈴木智行執行役EVPが昇格する。
●「脱エレキ」加速
ソニーはエレクトロニクス部門の全事業を分社化する。本体には人事や経営企画と研究開発部門だけが残り、「小さな本社でグループ経営戦略のスピードを上げる」(平井氏)。業績の長期低迷で過去の利益の蓄積である利益剰余金は08年3月期の2兆円強から、14年3月期には9402億円へと半減した。過去10年の営業赤字額が合計で3000億円以上に達したエレキ事業が足を引っ張ったという判断から、全事業の分社化に踏み出す。
「これでソニーはエレキの会社でなくなる。電子部品と映画・音楽のエンタメ事業とゲーム、そして金融・保険の会社になる」(市場関係者)
一方、今回発表された成長戦略に対しては、「耳触りはいいが具体性に欠ける」との指摘も多い。投下した資本を使ってどれだけ効率的に利益を出すかを示す投下資本利益率(ROIC)を各事業部門に導入することを明らかにしたが、ROICの数値目標は明示していない。経営責任を追及されるような数値目標は、「18年3月期の営業利益5000億円以上」「自己資本利益率(ROE)で10%以上」のみで、これらの数字を達成するのは並大抵のことではない。
新中計について評価する声もある。あるアナリストは「事業の撤退を含めた選択と集中を続け、収益を重視するという意思の表れ」と高く評価し、野村證券は投資判断を「中立」から「買い」に変更、予想株価である目標株価を従来の2300円から4000円へ上げた。
こうした評価を裏付けるかのように、株式時価総額は2月5日に約1年半ぶりにパナソニックを逆転した。2月16日に株価は昨年高値を更新し、新中経の発表を受けて19日にはさらに上昇した。しかし、同日終値は52.5円高の3227円。朝方は買い気配で始まり、3300円という5年ぶりの高値を付けた後、株価は伸び悩んだ。20日は下げに転じ26円安の3201円となった。
「市場は、分社化したテレビとスマホから撤退し、平井氏が辞任して副社長になる吉田氏が社長に昇格することを期待している。それが実現すれば、ソニーの株価は最低でも1000円、市場環境次第では2000円上げて5000円を突破することになるだろう」(市場関係者)
電機業界において構造改革で2周遅れだったソニーは、今回の分社化を契機として復活への道を切り開くことができるのか。市場は冷静に見極めようとしている。
(文=編集部)
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