http://www.asyura2.com/15/hasan93/msg/721.html
Tweet |
「日経段階の郵政マネー流入」だが好材料には違いない photo Getty Images
「官製相場」で株高は当分続くというが、死角はないか
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/42185
2015年02月20日(金) 長谷川 幸洋「ニュースの深層」 現代ビジネス
東京株式市場の株価が15年ぶりの高値をつけた。2月19日の日経平均終値は18264円と2万円の大台も射程に入れたかもしれない。株高は投資や消費を刺激して景気にプラスだから、株を持っていない人にも間接的に恩恵がある。はたして株高は続くのか。
■「官製相場、当分下がりません」
15年前と言えば、2000年だから森喜朗政権当時である。それから小泉純一郎、安倍晋三、福田康夫、麻生太郎、鳩山由紀夫、菅直人、野田佳彦、それから再び安倍晋三と8代も政権が変わった。株価がすべてではないが、日本がいかに長き低迷を続けてきたか、を象徴している。ようやく流れが変わってきた。
最初に断っておくが、私は株式投資をしていない。だから株式市況欄にもほとんど興味がなくて、せいぜい年に1度見るかどうかだ。それでも景気の行方には大いに関心があるから、株価が上がると「さて、これからどうなるか」と気にかかる。
そういうわけで、ここは信頼するエコノミストに聞いてみた。なぜ株高になっているのか。これからも高いのか。どちらかといえば、いつも慎重な見方をする彼の返事は「投資家によく聞かれますが、私は『当分は下がりませんね』と答えています」と珍しく楽観的だった。
それはなぜか。「あまりいいとは思いませんが、いまは『官製相場』の色彩が濃いんです」。官製相場という理由は3つある。
「まず日銀が年間3兆円のETF(上場投資信託)を買う。ETFは日経平均やTOPIX(東証株価指数)に連動しているので当然、株価にはプラスです。それにGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)も数兆円単位の資金余力がある。それから18日付の日本経済新聞が報じた日本郵政の件です」
日経の報道とは「郵政グループ収益底上げ、ゆうちょ銀は株式投資拡大、人材公募、専門部署を新設」という18日付5面のトップ記事だ。これによれば、ゆうちょ銀行が「国債に偏っていた資産運用方針を見直し、国内株式などリスク資産の比率を高める」という。
そのために、GPIFのように外部人材を数十人規模で取り込んで「リスク運用を専門的に行う部署を立ち上げる」そうだ。この通りなら、株式市場に新たに兆円単位と思われる郵政マネーが流れてくるので、これまた株価に追い風だ。
記事は「18日に発表する」と書いていた。実際には18日に記者発表はなかった。これは業界用語で言う、いわゆる「日経段階」の典型である。つまり日経が報じたにとどまっている段階であり、会社の正式発表ではない。
そうだとしても、金融市場は「そういうことなら…」と思って、先取りして株を買う動きが加速する。それで株価が上がる。
日本郵政は記者に特ダネを与えて飼いならす。記者は社内で評価され、日経自身もそれで市場に存在感を示すことができる。それで、みんなハッピー。外された他社の記者は頭に来るから無視して、しばらくは報じない。だが、郵政は市場に意図が伝わればOKなので、それはかまわない。関係者ならだれでも知っている企業と新聞業界の一種の慣れ合い構図である。
それはともかく、巨額のマネーが市場に流れるなら当然、株価は上がる。それで海外投資家も追随して買い戻すために日本市場に戻ってきているという。
日本企業自体がROE(株主資本利益率)重視の経営に変わりつつある事情もある。自社株を買って消却するのだ。分母の株主資本を減らせば、ROEが上がる。長期的にはともかく、目先は高いROE比率が株式市場で経営効率が高いとみなされる。
それには「ROEさえ上がればいいのか。企業活動はもっと長期的に見るべきだ」という有力な批判もあるが、マネーゲームに忙しい投資家や株価に振り回される経営者は無視できない。残念ながら、それが市場の現実である。
■内需中心で活性化
さらにNISA(少額投資非課税制度)の非課税枠が2016年から100万円から120万円に拡大され、子ども1人当たり80万円の非課税枠も新設される。これらが相まって「株価は当分、高い」という見通しが強まっている。
景気回復の主役はあくまで民間企業部門である。だから株高が「演出された官製相場」というだけなら、景気全体にはいまひとつ心もとない。ただ、元気づけられる要素もある。株高が日経平均主導というより、TOPIX中心で引っ張られている点だ。先のエコノミストが言う。
「日経平均は輸出関連銘柄のウエイトが高い。これに対して、TOPIXは東証1部全体の時価総額を基に算出されていて、日経平均より内需関連銘柄のウエイトが高い。つまりTOPIX主導であるのは、日本経済が内需中心で活性化しつつあるとも言えます」
これはいい話ではないか。
そういえば、円安でパナソニックをはじめ海外展開していた輸出関連製造業が国内に回帰している、という報道もある。原稿を書いている愛知県名古屋市のホテルで中日新聞を見ていたら「小型SUV、東北で生産 トヨタ、円安追い風に」という記事もあった(19日付経済面)。
トヨタは小型スポーツタイプ多目的車(SUV)の新型車を当初、トルコの工場で生産する計画だったが、岩手県金ケ崎町の岩手工場で「生産する方針を固めた」という。円安で採算がとれるめどが立ったからだ。ちなみに「方針を固めた」というのも新聞の業界用語で正式決定ではない。これは「中日段階」だ(笑)。
■もちろんリスクはある
以上を踏まえたうえで、注意すべき要素も指摘しておきたい。それはなんといっても、世界情勢がきわめて不透明になっている現実である。中国は南シナ海で、ロシアはクリミア半島でそれぞれ国際法を無視した行動に出ているだけでなく、ISIL(いわゆるイスラム国)などテロリスト集団が各地で暴れ回っている。
テロリストたちは戦後世界が築き上げてきた自由や民主主義、人権、法の支配、市場経済といった理念や価値をまったく共有していない。それどころか、まるで中世に戻ったかのように暴虐の限りを尽くしている。
こうした暴挙に世界が対処できているかといえば、残念ながら、できていない。とうに国連は事実上、機能していない。違法行為をする当の中国とロシアが安全保障理事会の常任理事国であるからだ。テロリスト集団に対抗しているのは、米欧を中心とする有志連合である。
大胆にいえば、世界は「平和と繁栄の時代」から「テロと戦争の時代」にモードチェンジしたのではないか。たとえば、G20(20カ国財務相・中央銀行総裁会議)が成長の方策を語り合意を目指しても、米欧が中国やロシアと根本的に対立しているなら、会議は建前だけの「歌舞伎」にならざるをえない。
対立が抑えがたくなって表面化すれば、その途端に金融市場は大きく動揺するだろう。いま債務減免問題をめぐって揺れているギリシャもそうだ。いまの株高が、やがてあるかもしれない大激動を前にした「うたかたの宴」でなければいいが。
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。