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『税金を払う奴はバカ!』(ビジネス社)
「日本は金持ちの税金が高い」は嘘! 医者、大企業、投資家に有利な税制
http://lite-ra.com/2015/02/post-882.html
2015.02.20. リテラ
格差拡大、富の集中という資本主義への処方箋として、グローバル累進資本課税が必要だとしたトマ・ピケティの『21世紀の資本』。世界で、この“ピケティ税”の実現可能性、実効性が議論されているが、日本の税制の現状は、その導入の議論をする以前の問題かもしれない。
実は日本の税制には抜け穴があり、その抜け穴からとるべき税金が漏れている──というのは『税金を払う奴はバカ!』(大村大次郎/ビジネス社)だ。著者の大村氏は10年間主に法人税担当調査官として勤務した経験のある元国税調査官。『あらゆる領収書は経費で落とせる』(中公新書ラクレ)など節税に関する著書が多く、この2月〜3月の確定申告の時期にもっとも読まれる著者の一人だが、今回は日本の税制の抜け穴の多さに憤っているのだ。
「ネットの掲示板などを見ても、『日本の金持ちの税金は世界一高い』ことを前提に経済を語る人がかなりいる。しかし、これは大嘘である。政府と財界の嘘にまんまと引っかかっているのである。
確かに日本の所得税の税率は、高額所得者には高く設定されており、税率だけを見るならば、日本の金持ちの税金は世界的に見て高い部類に入る。しかし日本の金持ちの税金にはさまざまな抜け道が用意されており、実質的には冗談のように安い税金しか払っていないのである」
たとえば、先進主要国の国民所得に対する個人所得税負担率を見ても、日本は7.2%。アメリカ、ドイツ、フランスはどこも国民所得比で10%以上の負担がある。イギリスにいたっては13.5%で日本の約2倍なのだ。
「先進国の所得税収の大半は、富裕層が担っている。だから国全体の所得税負担率が低いのは日本の金持ちがどれだけ税金を払っていないかということになる」
具体的には、配当所得の分離課税と開業医の優遇税制だ。まずは配当所得の分離課税。所得が高ければ高いほど税率も高くなる累進所得税から分離しているのだ。
「会社経営者(兼オーナー)は、自社の株を保有しているわけであり、投資家でもある。この投資家に対する税金が、日本は著しく安いのだ。日本では配当所得は分離課税となっていて、他の所得税の税率よりも相当に低い。(略)現在の税率はなんと20・315〜20・42%である。つまり、配当所得は何千万円、何億円収入があろうと税率は20・315〜20・42%なのである」
主要国の税率に比べても低い。もし、日本の金持ちが先進諸国と同程度の税金を払ったらどうなるか。
「単純に考えても、今よりも10兆円以上(所得税、住民税合わせて)は税収が増えることになる。10兆円の税収というと消費税を5%増税したときとほぼ同じである。つまり、金持ちが先進国並みに税金を払ってさえいれば、消費税の増税は必要なかったということなのである」
次に開業医の優遇税制だ。
「具体的に言えば、社会保険診療報酬の72%を経費として認められている(社会保険料報酬が2500万円以下の場合)。本来、事業者というのは(開業医も事業者に含まれる)、事業で得た収入から経費を差し引き、その残額に課税される。しかし開業医の場合は、実際の経費が多かろうと少なかろうと無条件に売上の72%が経費として認められているのだ。現在は段階的に縮小されているが、現在もこの制度は残っている。
また開業医は、普通の事業者ならば払わなければならない事業税も優遇されている。収入が多い上に、税金が優遇されているのだから、金持ちになるはずである」
大企業も税金が優遇されている。大企業の税金の抜け穴が「租税特別措置法」だ。
「要は『特定の人(企業)の税金を安くしてあげましょう』という制度である。いわば、国が定めた税金の抜け穴といえる。日本は名目上の税率は高いけれども、この租税特別措置法があるので実質的な税負担が低くなっている」
たとえば、2003年に導入された、試験研究をした企業はその費用の10%分の税金を削減する制度(限度額はその会社の法人税額の20%)「試験研究費の特例」だ。大企業のほとんどは、この特例を受けて事実上、法人税が20%切り下げられたのと同じ状態になっている。つまり、「試験研究費の特例」とは「大企業の20%減税」だったのだ。
さらに、著者は「バブル崩壊以降も日本企業はしっかり稼いできた」点を指摘している。
「日本経済は、原料を輸入し製品加工して輸出することが『主産業』である。この輸出入に関しては、日本経済はバブル崩壊の影響はまったく受けていないのである。バブルの絶頂期だった1991年と2007年を比べると、輸出は約2倍になっているのだ。貿易収支も、バブル崩壊以降もずっと10兆円前後の黒字を続けている。赤字になったのは、東日本大震災の後になってからである。(略)バブル崩壊以降、国民の多くは『日本経済は低迷している』と喧伝され、低賃金に耐えてきた。そして大企業には優遇を許してきた。しかし、その前提条件が間違っていたのである。大企業が稼ぐだけ稼ぎ、その金を自社の口座に貯め込むばかりで社会にまったく還元してこなかったことが、今の日本社会の疲弊を招いているのである」
国民の税金を食い荒らし、日本経済の屋台骨を蝕む「タックス・イーター」(tax eater)の存在を元財務官僚で弁護士の志賀櫻氏が明らかにした『タックス・イーター──消えていく税金』(岩波新書)でもこの租税特別措置を特別会計、財政投融資などとともに、タックス・イーターが群がる利権の巣窟としている。
「税務六法を買うと分厚い二分冊になっている。一冊目は所得税、法人税、消費税、相続税など本則の税法が載っている。二冊目は丸ごと租税特別措置法である。本則の税法の合計と租税特別措置法がほぼ同じ分量あるわけである。これはじつに驚くべきことなのだが、税金の専門家でも何も不思議に思わない人がいるのには驚かされる。租税特別措置の問題点を認識していないのである」
その複雑さから利権の巣窟になりやすい租税特別措置、一度は見直しがされた。
「民主党政権時代の二〇一〇年、峰崎直樹財務副大臣の強力な主導により『租税特別措置透明化法』が成立した。このような対策がとられるのは、租税特別措置は税制という毛皮をかぶった補助金であり、ひとたび悪用されればたちまち利権の巣窟になるからである」
しかし、この透明化法による改革も、財界・業界、財務省主税局の猛反対で尻すぼみ。自民党政権に返り咲くと再びタックス・イーターの巣窟に戻ったのだ。前述の開業医の優遇税制も自民党とべったりの日本医師会の絶大な組織力があることが大きい。
メディアでは自民党、財界に都合のいい法人税引下げの議論だけが注目されるが、その陰で、利権の巣窟にひそむタックス・イーターが日本経済をむしばみ続けるのだ。
(小石川シンイチ)
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