ＨＳＢＣ脱税指南疑惑で波紋　スイスが捜査着手［日経新聞］
2015/2/20 1:00

　【ロンドン＝小滝麻理子】英金融最大手ＨＳＢＣホールディングスがスイスに持つプライベートバンキング部門が、過去に多くの富裕層の脱税や資産隠しを助けていた疑いを巡り波紋が広がっている。スイス検察当局が資金洗浄を助けた疑いで捜査に着手し、英議会も聴取に乗り出す。顧客には、テロ組織や地域紛争に関連する人物も多数含まれており、事態は収束の気配を見せていない。

　ことの発端は2007年、05年から07年にかけての大量の社内文書をＨＳＢＣ元社員が告発のため持ち出したことだった。国際調査報道ジャーナリスト連合（ＩＣＩＪ）などが文書を分析した結果を今月上旬に公表。スイス法人が多くの富裕層に脱税指南や秘密口座の売り込みを行っていた疑惑の詳細が明らかになった。

　ある事例では、アフリカ紛争地などで採掘されるダイヤモンドの著名な輸出業者に関し、ＨＳＢＣの担当者が「彼のための法人口座をドバイに開いた。ベルギー税務当局から追及されており、彼はとても慎重になっている」とのメモがあった。ロンドン在住の顧客を「画家」という暗号で呼び、イタリアに帰国する際の課税逃れ策を協議したこともあったという。

　顧客リストには、俳優や世界各国の王族、シリアのアサド大統領のいとこや中国要人の家族らに加え、国際テロ組織アルカイダへの資金提供が疑われている人物も名を連ねている。

　スイス・ジュネーブの検察は18日、同国にあるＨＳＢＣ法人を資金洗浄を手助けした疑いで捜査し始めたと発表。今後は個人に対象を拡大する可能性もあるとしている。
　ＨＳＢＣは報告書を受け、過去に秘密口座などを売り込んでいたことを認めたうえで「08年以降、スイス法人の法令順守体制を根本的に改革し、厳しい基準を満たさない顧客との取引はやめた」との声明を発表した。同法人の顧客を既に７割減らしたという。また、顧客や社員宛ての謝罪広告を新聞に掲載するなど対応に追われている。

　英議会はＨＳＢＣや税当局への聴取を決めたほか、野党・労働党は英政府の対応が遅かったとして批判を強めている。

　一連の動きを受け、市場関係者からは「ＨＳＢＣだけで終わるのか」との不安の声も上がる。12年のロンドン銀行間取引金利（ＬＩＢＯＲ）操作疑惑など不祥事に揺れた金融界は、固唾をのんで情勢を見守っている。

http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM19H02_Z10C15A2FF1000/?dg=1

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