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昨年末には7年ぶりの120円台を記録〔PHOTO〕gettyimages
いつまでも続くわけがない 不気味なこの「円安」、実はプロもみなビビッている 全国民必読 日本経済「異変とこれから」【第2部】
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/42152
2015年02月19日(木) 週刊現代
■急に円高に振れるかも…
異常事態とも言える円安進行の先には、落とし穴が—。為替のプロ、小口幸伸氏と山田勉氏が徹底討論。
小口 昨年12月には一時的に1ドル=120円台を突破し、現在でも117~118円台で推移している円相場ですが、この状況はあくまでもイレギュラーで、いつまでも続くとは思えません。円安基調が一転して、円高に転じる可能性は十分あるでしょう。
山田 そうですね。個人的には、日本経済にとっては、このまま円安がなだらかに進んでいくことが望ましいと考えています。円安基調のほうが、グローバル輸出企業の業績も拡大する。今、パナソニックや東芝、日産などの大手企業では、国内生産回帰の動きが出てきています。持続的な円安が進行するからこそ、日本企業は安心して帰ってこられる。そのシナリオが崩れると、日本企業は壊滅的な状況に追い込まれかねません。
小口 円安社会が良いか悪いかと言えば、私は行き過ぎた円安は、日本にとって良くないと考えています。たとえば円相場が130円台まで上がっても、中小企業の賃金が上がる可能性は低いですから。
そうなると、低所得の人の可処分所得は、どんどん減ってしまう。円が120円を超えようとしたとき、麻生太郎財務大臣も「さすがにちょっと行き過ぎた」とこぼしましたが、本音でしょう。
山田 いずれにせよ、このまま円安が進むかといえば、そうは問屋が卸さない。
小口 ひとことで表現するならば、今、円相場は、決定的な影響を及ぼす外的な要因に取り囲まれている状況です。
山田 小口さんは円高に振れる懸念材料として、何が挙げられると考えますか。
小口 最大の不安要素は、今年6月に予定されていたアメリカの利上げ時期がずれ込むのではないかということです。
一般に、FRB(米連邦準備制度理事会)が政策金利を上げる利上げを行えば、円安ドル高の方向に進む。逆にその利上げが行われないとなると、一気に円安基調にストップがかかることになる。
山田 同感です。現時点の為替も、120円台を目前にして足止めを食っている状態。これは、本当にアメリカが利上げをできるのか、その時期はいつなのかという点が不透明なためです。
小口 アメリカが利上げを行わないという予測は、昨年の第4四半期GDPがプラス2・6%と、5%の増加だった第3四半期から大きく減速したことがきっかけになっています。
山田 実際、昨年末のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、FRB議長を務めるジャネット・イエレンが「金融政策はアメリカ国内の雇用とインフレ、それに国際金融情勢を見極めて判断する」と言っている。原油価格が下振れし、世界的にデフレ傾向が拡散している中で、FRBが本当に利上げに動けるのかという疑問は残ります。
小口 場合によっては、FRBが利上げは12月まで持ち越し、あるいは今年は行わないという判断を下すこともあり得るでしょう。もしも今年上半期が終わった時点でアメリカの景気が回復していない、インフレも起きていない、賃金も上がっていないとなれば、利上げに踏み切るのは現実的に難しい。
山田 そうなれば、これまでドルを買っていた人も、もう売ってしまおうという心理に傾いていく。それは、円安状態に急ブレーキがかかり、一転して円高に向かうことを意味します。
■落ちるときは一気に落ちる
小口 より最悪のシナリオも考えられます。もし仮にアメリカが利上げに踏み切ったとしても、それによって景気がさらに悪化するかもしれない。その状況下で再度、FRBが量的緩和を始めるという事態になれば、ドルは大幅に下落して円が急騰することになる。そうなれば、円相場が100円に逆戻りするのはあっという間です。それどころか、80円台に突入することすら考えられます。
山田 それは悪夢のシナリオですね。不気味なのは、アメリカでは、7年半サイクルで経済に重大な影響を及ぼす問題が起きているということ。過去を振り返れば、'00年にはITバブルが崩壊し、'07年にはサブプライムローン問題が起きました。多少迷信めいてはいますが、次の7年半サイクルにあたるのが、ちょうど今年の4、5月なんです。
小口 今は、まさに一寸先は闇の時代。事実、昨年も我々が予測しえなかったことが次々と起きた。今年も同様に、深刻なことが突如起きる可能性は十分にあります。
山田 もうひとつ大きな火種になるのは、今年1月にECB(欧州中央銀行)が量的緩和を決定したことです。つまり、ドルはおろか、ユーロに対しても円安が進みにくい状況になってくる。アメリカも利上げに踏み切らない、その上ユーロも量的緩和となれば、ダブルパンチで円高に反転していく可能性は大いにあります。
小口 欧州自体も不安をたくさん抱えていますからね。例えば今後ギリシャがユーロから離脱するなんてことになれば、世界経済が一層混乱に陥ることは明白でしょう。
山田 加えて、今年はスペインやポルトガルの総選挙をはじめとして、欧州は選挙ラッシュを迎えます。国によっては、反緊縮財政、反イスラム、反移民、反ユーロなど政策が二転三転し、混乱しやすい状況にある。
小口 そんな状態が続けば、結果的にアメリカが利上げを躊躇する材料が増えることになりますね。つまり、悪循環に陥ってしまう。
アメリカ、欧州以外の国際情勢も、円安に影を落とす可能性がありますよね。
山田 そうですね。たとえば、今、中国では景気減速が起きていて、2月5日には2年9ヵ月ぶりに預金準備率を0・5%下げました。新興国も軒並み不振で、いつ通貨危機が起きても不思議ではない状況です。
小口 南米も、アルゼンチンやブラジルはガタガタですからね。さらに、直近の出来事でいえば、イスラム国の問題をはじめとする中東情勢の先行きも見えないままです。
イスラム国はいまだに謎に包まれている。彼らがどれだけの先端技術を持っているかなんて、誰にも分からないでしょう。極端な話ですが、イスラム国が各国にサイバーテロを仕掛けてくる能力がないとは言い切れない。そんな事が起きれば、全世界に混乱が訪れることになる。
これらのことも含めて、円を取り巻く環境は、不確実な要素があまりにも多いんです。
■国債もヤバい雰囲気が
山田 その他の不安要素としては、どのようなものがあるでしょうか。
小口 考えられるのは、安全な資産への移行です。今年は、リスクの高い資産を避け、よりリスクの低い資産への投資が増える、いわゆるリスクオフの取引が世界的に大きな流れになるでしょう。
山田 リスクオフになると、まず信頼の高い円が買われることになりますね。そうなれば、必然的に円高ドル安の方向に振れます。もちろんドルも安全な資産としての価値はありますが、今の状況を考えれば日本のほうが若干強いのではないかと思います。
小口 地政学的なリスクから見ても、そう言えるでしょう。具体的に言えば、ロシアが抱える諸問題です。
ロシアとウクライナの問題は全く解決していない。そうした状況で、投資家が円をリスクオフの対象にするのは、きわめて合理的な判断です。その中で相変わらず円安の方向に目を向けていると、足元をすくわれてしまう。ですから、そこは十分な準備をしておく必要があるでしょう。
山田 ロシア経済は、昨年以来ルーブル危機で非常に危険な状況に立たされていますからね。
小口 そもそも、なぜ各国の長期金利がこれほど低いのかを、きちんと考えるべきです。たとえば、10年物国債でいえば、スイスの利回りは今年1月、初のマイナスにまで転落してしまった。他国でもデンマークは0・28%、日本やドイツですら0・3%台です。
10年物国債の利回りが0・3%なんて、常識では考えられない。しかし常識では起きないことが、すでに現実になっている。これだけ長期金利が低いということは、先行きの景気が良くないということを示しているに他ならないんです。
山田 それだけ異常事態だということでしょうか。
小口 その通りです。今は、何が起きるか、まったく予断を許さない世の中です。たとえ発生する確率は低くても、一度起きると巨大な損失をもたらすような、いわゆるテールリスクが為替には常につきまといます。企業だけでなく、個人であってもそのリスクを頭に入れておくべきです。
おぐち・ゆきのぶ/'50年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。横浜国立大学卒。シティバンク、ミッドランド銀行(現HSBC)、ナショナルウェストミンスター銀行などを経て現職
やまだ・つとむ/'61年生まれ。カブドットコム証券マーケットアナリスト。同志社大学卒。和光証券(現みずほ証券)などを経て現職。ディーラーなどを歴任し、株式市場の現場に精通
「週刊現代」2015年2月21日号より
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