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「ドイツはなぜ財政を均衡できたか」(EJ第3977号)
http://electronic-journal.seesaa.net/article/414243190.html
2015年02月19日 Electronic Journal
ところで、ドイツはなぜ財政均衡を達成できたのでしょうか。
また、フランスの現況はどうなのでしょうか。EUの2つの中心
国、ドイツとフランスの現状を探ってみることにします。
既に述べたように、ドイツはITバブルの崩壊によって経済が
悪化し、2005年には失業率が10%以上とEU加盟国のなか
では一番高かったのです。当時ドイツは「ヨーロッパの病人」と
呼ばれるほど、一人負けの状態が続いていたのです。
このドイツの苦境を救ったのはECBです。当時、EU加盟国
の経済はバブル気味であり、こういう時期こそ経済を引き締める
べきだったのですが、ECBはドイツを助けるためにあえて低金
利政策をとったのです。これでは、ドイツ以外の国はバブルが過
熱することになります。
当時ユーロの為替レートは「1ユーロ=169円」と高水準で
推移しており、ドイツはEU圏外に輸出を伸ばすのは困難な状況
にあったのですが、ECBが低金利政策を取ってくれたおかげで
バブルに沸くEU圏内に貿易黒字を大きく拡大することによって
何とか危機を脱したのです。
そして、2008年のリーマンショックでバブルが崩壊し、政
府の税収が減り、財政が悪化したのです。例によってEUは緊縮
財政を強行したので、EUの一部において、物価上昇率(インフ
レ率)がマイナスになってしまったのです。南欧諸国が軒並みマ
イナスになっています。これはデフレ状態です。
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≪EU加盟国のインフレ率(対前年比)≫
スペイン ・・・・・・ −0・5%
ギリシャ ・・・・・・ −0・2%
イタリア ・・・・・・ −0・2%
ポルトガル ・・・・・・ −0・1%
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普通の国であれば、政府が国債を発行し、中央銀行が金利を抑
制するなどの景気対策が取れるのですが、EUの場合、共通通貨
であるし、金融政策はECBに委譲しており、財政政策も事実上
とれないのです。要するに、手も足も出せない状況です。
実は、この状況はドイツにとってきわめて好都合なのです。ド
イツは2008年には既に不況から脱出していましたし、失業率
も4%台にまで下がっていたのです。これは、EU圏への輸出を
拡大して景気回復に成功したのです。
デフレになると、民間の資金需要が低迷し、長期金利が下がり
ます。金利が下がると、国債利払いの支出を減らすことができま
すが、低金利の環境下で、GDPを伸ばすのは困難化します。と
くに名目GDPはなかなか伸びにくいのです。しかし、名目GD
Pは、税収とほぼ比例するので、伸ばす必要があります。
ところで、名目GDPは支出面で見ると、次の式であらわすこ
とができます。
―――――――――――――――――――――――――――――
名目GDP=民間・政府の消費+民間・政府の投資+純輸出
―――――――――――――――――――――――――――――
デフレになり、ましてEU全体で緊縮財政をとっているので、
「民間・政府の消費」、すなわち内需も、「民間・政府の投資」
も当然のことながら低迷します。こういう状況で名目GDPを伸
ばすには、「純輸出」を伸ばすしかないのです。純輸出とは次の
式であらわすことができます。
―――――――――――――――――――――――――――――
純輸出=輸出−輸入
―――――――――――――――――――――――――――――
ドイツの場合、日本と同様に輸出すべき工業製品を多く持って
おり、しかも対外債権国家であって、海外資産を豊富に持ってい
ます。そのため、純輸出は大幅な黒字になり、名目GDPの増大
に貢献することになったのです。
もともとドイツはEUの加盟国であり、最大市場であるユーロ
圏に対しては、為替レートの変動や関税などのリスクなしに輸出
を拡大することができるのです。実は、これにもうひとつ、ドイ
ツの経済成長に影響する重要な要素があるのです。それは当時の
史上まれにみるユーロ安です。
ちょうどギリシャなどの南欧諸国の危機が深刻化し、ユーロは
一時的に「1ユーロ=100円」を割り込むところまで下落して
いたのです。つまり、ドイツは最大市場のユーロ圏に対しては有
利な条件の下で輸出攻勢をかけることができるのに加えて、折か
らのユーロ安で、ユーロ圏以外の国に対してもユーロ安の恩恵を
生かして輸出を拡大することができたのです。
このようにしてドイツはデフレ下にもかかわらず、ユーロ圏内
外に輸出を拡大して名目GDPを伸ばし、財政均衡を実現させた
のです。それは同一通貨のユーロ圏という特殊な経済圏があって
初めて可能なことであったのです。これについて、経済評論家の
三橋貴明氏は次のように述べています。
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経常収支黒字国が黒字幅を拡大したとき、必ず反対側に赤字を
拡大させた国がある。ドイツの経常収支が黒字化したぶんを赤字
として引き受けたのが、スペイン、イタリア、ギリシャ、ポルト
ガルといったユーロ圏の南欧諸国、それにフランスだった。
ドイツが南欧諸国などで稼いだ所得(貿易黒字)は、現地の不
動産バブルに投資された。結果的に、ドイツは南欧への輸出を拡
大し、南欧諸国は不動産を中心とする投資を拡大するかたちで、
ユーロ経済は全体的な成長を達成できたのである。貿易黒字であ
ろうが、不動産投資(GDP上の民間住宅)であろうが、GDP
を拡大させるという点では、なんら変わりはない。
──三橋貴明著/徳間書店刊
『2015年/暴走する世界経済と日本の命運』
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─── [検証!アベノミクス/59]
≪画像および関連情報≫
●減速するドイツ経済/財政均衡よりインフラ整備を!
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ドイツはここ数年間、低迷する欧州経済の中で例外的に輝い
ていた。ところがここに来て突然、頑丈なはずの同国がトラ
ブルに陥っている。今年4〜6月期(第2四半期)にはGD
P(国内総生産)が前期比マイナスとなった。そしてさらに
恐ろしいデータが相次いで発表されている。8月の鉱工業生
産及び輸出高は急落。欧州経済研究センター(ZEW)が発
表した、投資家心理を示す独景況指数(ZEW指数)はほぼ
2年ぶりの最低水準となった。ドイツ経済は恐らくリセッシ
ョン(景気後退)に入ったのだろう。これらの弱い経済指標
を見て、ドイツ国外の多くの人々は強い懸念を抱いている。
だが国内の反応は冷静で無関心だ。ドイツ政府は10月14
日、2014年の成長率見通しを1・8%から1・2%に、
2015年の見通しを2%から1・3%に下方修正した。た
だし、来年に財政均衡を実現するという長年の目標は維持し
ている。シグマール・ガブリエル経済相は、「成長鈍化は大
変動ではない」と述べ、「経済政策を変更しなければならな
い根拠はない」とした。政治的に見れば、この立場には明白
な根拠がある。2015年に政府債務をゼロにすることは、
アンゲラ・メルケル首相の選挙公約の中核だった。公約を忠
実に実行することは、ドイツの有権者にアピールする。彼ら
は債務を危険で効果がなく、恐らく道義に反するものと考え
ている。 http://nkbp.jp/1AH2Q0y
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