01. 2015年2月18日 22:06:22
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相次ぐ海外企業のM&A、アベノミクスが目指す「好循環」に懸念 2015年 02月 18日 18:22 JST ◐http://jp.reuters.com/news/pictures/articleslideshow?articleId=JPKBN0LM0LZ20150218&channelName=topNews#a=1 1 of 1[Full Size] [東京 18日 ロイター] - 日本企業による海外企業の大型M&A(合併・買収)が相次いでいる。人口減で市場が縮小する日本よりも海外を選択するのは合理的な選択でもある。しかし、企業が手元資金を国内の賃金や設備ではなく、海外に投資してしまえばアベノミクスが目指す日本経済の「好循環」は期待しにくくなる。国内回帰の動きを加速させるために必要なのは、さらなる円安か成長戦略か、専門家の見方も分かれる。 <1週間で1兆円> キヤノン(7751.T: 株価, ニュース, レポート)、近鉄エクスプレス(9375.T: 株価, ニュース, レポート)、日本郵政(IPO-JAPP.T: 株価, ニュース, レポート)と、日本企業による海外企業M&Aは直近の約1週間だけで合計1兆円を超える案件が明らかになった。2014年の日本企業による海外M&A(IN・OUT)は約5.9兆円であり、足元でペースが加速している。 日本郵政はオーストラリア物流最大手のトール・ホールディングス(TOL.AX: 株価, 企業情報, レポート)を、同社として過去最大の約6000億円を投じて買収する。今年秋ごろの株式上場を控え、アジアやオセアニアなどの成長市場で事業を拡大することが狙いだ。 最近は、円安を背景に生産を国内に回帰させる動きも増えてきているが、まだごく一部。人口が毎年減少しマーケット自体が縮小する日本よりも、成長が期待できる海外に投資するというのは、企業にとっては合理的な判断だ。 しかし、その「合理的な選択」がアベノミクスが目指す経済の好循環にとって障害となるおそれもある。アベノミクスの大きな原動力は「円安」だが、企業が潤沢な手元資金を国内の雇用や賃金、もしくは設備投資に使わなければ、円安のデメリットが重くのしかかり、消費増加の期待は出来ない。 海外での事業が成功し、配当金が日本に還流する期待もあるが、「海外で稼いだ分は海外で使うのが基本」(国内金融機関役員)でもある。日本企業が過去最高レベルの利益を稼いでいる割に賃金がなかなか増えないのは、そうした理由も一因だ。政府は企業に賃金増を促すが、国内での事業拡大なしに賃金が大幅に増えるとは考えにくい。 <少ない成功例> また日本企業による海外企業の大型M&Aは、過去の例を見る限りなかなか成功しないことも、市場の不安を高めている。 古くは1988年の日本鉱業(現JXホールディングス)による米電解銅箔事業大手グールドの買収や、1991年の松下電器産業(現パナソニック)による米映画・娯楽大手MCA社買収など、巨額な特損を計上して売却・撤退した例が多い。最近では通信大手や製薬メーカーのM&Aについて市場の評価が芳しくない。 早稲田大学大学院ファイナンス研究科・客員教授の服部暢達氏は「海外企業に対するM&Aを成功させるには細かな具体的プランを実行することが必要だが、それができる人材は日本企業に乏しい。JT(2914.T: 株価, ニュース, レポート)の海外たばこ買収が成功したのは新貝康司氏(現副社長)がいたからだ」と話す。 また買収金額には通常、プレミアムが付くため、それを上回る利益を上げるのは容易ではない。買収される企業は足元の経営がうまく行っていないことが多く、同じ経営者に任せても、買収金額以上に収益を上げることは難しい。M&Aが「売り手のリスクは小さく、買い手のリスクは大きい」と言われる所以だ。 日本郵政の豪物流大手買収についても市場では「6000億円は巨額。それに見合う収益を上げられるかは未知数だ」(国内証券)と警戒する声は少なくない。 <円安か成長戦略か> 一方で企業の国内回帰の動きも増え始めてきた。監視カメラ世界首位であるスウェーデンのアクシス(AXIS.ST: 株価, 企業情報, レポート)を3337億円で買収するキヤノンは海外展開を進めると同時に国内生産も増やす方針だ。 円安によって国内生産の採算が改善していることが一因だが、経済の好循環を加速させるために、こうしたの動きを進めるにはどうしたらいいか──。 SMBC日興証券チーフエコノミストの牧野潤一氏は、さらに円安を進めるべきという見方を示す。「円安によって輸出採算を向上させれば、いずれ企業は国内に回帰するだろう。国内の賃金を増やすには国内で稼ぐ必要がある。円安にはデメリットもあるが、トータルでみれば日本経済にはプラスだ」という。 一方で、やはり日本のマーケットとしての魅力を上げることが不可欠との考えもある。1ドル80円から120円に進んだ円安でも、国内回帰の動きは一部で、海外シフトの動きは止められなかった。 ヤマハ発動機(7272.T: 株価, ニュース, レポート)の柳弘之社長は12日の決算会見で、足元では円安が進行しているものの、円安を背景に国内生産に回帰するつもりはないと述べた。 シティグループ証券チーフエコノミストの村嶋帰一氏は「日本市場の魅力を上げることに尽きる。これまでの成長戦略は対処療法的なミクロ的な政策が多かった。やはり人口問題などマクロな課題を解決しなければ、企業の海外進出という流れは止められないだろう」と述べている。 (伊賀大記 編集:宮崎大) ◐http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0LM0LZ20150218?feedType=RSS&feedName=topNews&utm_source=feedburner&utm_medium=feed&utm_campaign=Feed%3A+reuters%2FJPTopNews+%28News+%2F+JP+%2F+Top+News%29&sp=true |