03. 2015年2月18日 13:08:02
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なかなか引っ張るね市場は、やはり楽観したままか http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42945 ギリシャの債務と緊縮:瀬戸際戦術の行方 2015年02月18日(Wed) The Economist (英エコノミスト誌 2015年2月14日号) ギリシャの新政府は有権者を満足させながら、債権者と妥協することができるだろうか? ギリシャで数万人が反緊縮デモ、債務交渉前日 2月15日、ギリシャの債務問題を巡るユーロ圏財務相会合を前にアテネの議会前で行われた反緊縮デモに参加した人々〔AFPBB News〕 アレクシス・チプラス氏と同氏が率いる急進左派連合(SYRIZA)は、野党時代に1年以上かけて政治要綱を準備した。 80を超える委員会が、ギリシャ経済のさまざまな産業を是正するための具体的な提案を行う責任を負っていた。 権力を得た時のために計画することと、権力を行使することは別ものだ。特に国がギリシャほど深い穴にはまっている時はなおさらだ。 妥協の糸口が見えない交渉 SYRIZAの計画は、完全に実施された場合、歳入の大幅な減少と社会的支出の大幅な増加をもたらす。だが、多くのギリシャ人は、減税や支払い猶予を当てにして、先月の選挙の前に税金を支払うのをやめた。政府の歳入は1月に年率で20%以上減少した。元財務相によると、2015年予算は3月末までに狂う可能性が高いという。 こうした状況は、ギリシャの債権者に受けが悪い。何しろ債権者による2450億ユーロ(2770億ドル)の救済は、散財や政策撤回ではなく、緊縮策と改革を想定したものだ。ドイツのヴォルフガング・ショイブレ財務相は2月10日、ギリシャが2月28日に期限を迎える同国の救済策の延長を求めないのであれば、「それで終わりだ」と述べた。 ギリシャがユーロ圏の財務相らに自国の計画を示した2月11日の会談は混乱状態のまま幕を閉じ、実りある議論に関するお決まりの声明さえなかった。今では首相の座にあるチプラス氏は2月12日にドイツのアンゲラ・メルケル首相と会談する予定になっており、緊迫したやり取りになるのは確実だった*1。 何らかの合意が早期に見いだされなければ、国際通貨基金(IMF)の債務が3月に期限を迎える時に、再びギリシャのデフォルト(債務不履行)が迫ってくる。 根本的なところでは、問題は単純だ。ギリシャは借金を返すだけの収入がないのだ。金融危機が始まってから、ギリシャ経済はどの先進国よりも大幅に縮小している。2008年から2014年にかけて、経済の債務返済能力を示す大まかな指標である名目国内総生産(GDP)は22%減少し、欧州のどの病んだ国よりはるかに大きな落ち込みを記録した。 *1=12日のEU首脳会議は成果がなく、16日のユーロ圏財務相会合も物別れに終わった 個人レベルでの痛みも同じように激しかった。住宅価格は2008年から約40%下落している。所得のメジアン(中央値)は2008年から2013年にかけて22%減少した。18歳から24歳のギリシャ人に限ると減少幅は38%に達した。経済の崩壊は、地中海の反対側の戦争で荒廃したリビアに匹敵する。 ギリシャが2010年と2012年に受けた救済措置で、同国の債務は新たな債務者の手に移ったが、一部の民間部門の貸し手が負わされた損失にもかかわらず、債務を減らす役にはほとんど立たなかった。 ギリシャは2009年末時点で、主に民間部門に対して3010億ユーロ、当時のGDP比約127%の債務を負っていた。現在は、約3150億ユーロ(GDP比175%)の債務を負っており、そのうちの700億ユーロを除くすべてが公的部門の貸し手から来ている。ギリシャの新たな債権者は、IMF(250億ユーロ)、欧州中央銀行(ECB、270億ユーロ)、欧州各国政府(1950億ユーロ)だ。 気前もいいが要求も厳しい債権者 ギリシャの新たな債権者は、気前がいいと同時に、要求も厳しい。
ギリシャの金利は削減された。シンクタンク、ブリューゲルのジョルト・ダルヴァス氏によると、同国の2014年の利払い総額はGDPのわずか2.6%だった。これは、ギリシャより債務額の少ないいくつかの欧州諸国より低い(図参照)。 だが、この資金は、ギリシャの財政を安定化させることを目的とした条件付きだ。そうした条件には、ギリシャの最低賃金と年金の削減、公務員の解雇、港や国有ビルなど様々な資産の民営化が含まれる。 ショイブレ財務相のような債権者は、救済策がギリシャの競争力を高め、それによって経済成長に拍車をかけるだけでなく、債務の返済に使える財政黒字を生み出すことを期待している。救済計画は、ギリシャの債務が2020年までにGDP比120%まで減少することを見込んでいる。 難しい局面が訪れたのは、ギリシャが条件抜きで低金利を維持することを望んだからだ。ギリシャのナディア・バラバニ財務副大臣は、嫌われている固定資産税ENFIAを廃止するつもりだ。これは大衆受けのいい措置で、国の歳入を20億ユーロ減らすことになる。 シーフードとシエスタ、エーゲ海小島の長寿の秘訣 ギリシャのサントリーニ島から眺めるエーゲ海〔AFPBB News〕 バラバニ氏は、観光客にサービスを提供する企業に対する税率を13%のまま据え置き、計画されていたように、標準的な税率の23%に引き上げられることはないとも述べている。 ギリシャで最も豊かな地域、エーゲ海諸島は今後も、ギリシャの他の地域より低い付加価値税率を享受し続ける。 所得税がかかる最低水準は今年1万2000ユーロに戻され、所得の少ない約300万人のギリシャ人が税金を払わなくなる。今年分の35億ユーロを含め、総額250億ユーロを捻出する予定だった民営化プログラムは中止された。これらの優遇策全体で、負担が約80億ユーロ増える可能性がある。 チプラス氏は帳尻を合わせるために、楽観的に税の取り締まりに期待を寄せる。タバコと燃料の密輸によって、政府は年間約15億ユーロを失っている。脱税している大物も、ある程度の歳入をもたらす可能性がある。 かつてマネーロンダリング(資金洗浄)対策のトップを務め、現在は新たな汚職対策省のトップに就いたパナヨティス・ニコルディス氏は、合計70億ユーロに上る大規模な脱税が3500件あると言う。2015年は、その取り締まりで25億ユーロ得られる可能性がある。だが、万一、これらのカネがすべて徴収されたとしても、ギリシャはまだ40億ユーロの資金不足となる。 SYRIZA政権が打ち出した計画 もちろん、多くの政府の計画は計算が合わないものだし、チプラス氏はすでに妥協する意思があることをにおわせている。 チプラス氏は2月9日、4項目からなる計画の概要を説明した。第1に、ギリシャはこれまで合意した改革の「70%」を守る。破棄される改革は、ECB、IMF、欧州委員会という毛嫌いされている「トロイカ」ではなく、経済協力開発機構(OECD)と合意する10項目の新たな対策に置き換えられる。 第2に、ギリシャは、プライマリーバランス(利払い前の基礎的財政収支)の黒字を、今年の目標であるGDP比3%、2016年の同4.5%から、同1.5%まで引き下げる。第3に、ギリシャの既存の債務の大部分を、2つの特殊な債券と交換する。元本が永遠に返済されない「永久債」と、返済がギリシャ経済の健全性とリンクする「GDP連動債」だ。 最後に、政府は、苦難にあえぐギリシャ人のための「人道支援」に追加で19億ユーロ支出する、というものだ。 ギリシャの債権者は、ある程度譲歩することができるだろう。ギリシャに課されている利息の低さにもかかわらず、ほとんどの欧州政府はさらに低い金利で資金を借りられるため、ギリシャへの融資は利益が出ている。 前出のダルヴァス氏によると、損益トントンの水準まで利息を引き下げ、ギリシャの債務の残存期間をさらに延長すれば、GDPの17%に相当する金額を節約することができるという。 ギリシャの不況からは利益を得ないという精神で、ユーロ圏の当局者は、早い時期に行ったECBの債券買い入れプログラムで得た利益19億ユーロを還元することもできるだろう。 チプラス首相が念頭に置かねばならない2つの支持層 急進左派ツィプラス党首が首相に、欧州初の反緊縮政権 ギリシャ 1月26日、ギリシャ・アテネの大統領官邸で首相の就任宣誓をする急進左派連合(SYRIZA)のアレクシス・チプラス氏〔AFPBB News〕 だが、ギリシャ政府は、その見返りにはるかに多くのものを提供しなければならないし、チプラス氏は方針転換する場合に、2つの支持層を念頭に置かなければならない。 1つは、SYRIZAの極左勢力だ。例えば、民営化に関しては、ヤニス・バルファキス財務相もヨルゴス・スタサキス経済相も、国が持つピレウス港湾局の67%の株式の売却を完了させることへの支持を表明している。 すでにピレウス港で収益性の高いコンテナターミナルを運営している中国遠洋運輸集団(COSCO)と、デンマークのマークスが、最終選考に残った入札者の最有力候補だった。 だが、筋金入りの左派であるトドリス・ドリツァス氏が運輸担当相を務めており、売却を阻止すると断言している。「生産的な再建」、環境、エネルギーのための新たな省のトップを務めるパナヨティス・ラファザニス氏は、ギリシャをEUのエネルギー指令と完全に同調させることを目的とする他の2つの売却計画を阻止した。 チプラス氏が満足させておく必要があるもう1つのグループは、他の欧州諸国に対する政府の気骨のある対処によって元気付けられた有権者だ。 「次に何が起ころうとも、SYRIZAは我々の尊厳を取り戻してくれた」。68歳のアテネの年金生活者ロウラ・ズラタニさんはこう言う。「政府はようやく、我々の生活を非常に困難なものにした外国勢力に立ち向かっている」 |