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スマホ液晶はや消耗戦
ジャパンディスプレイ10〜12月、純利益2.8倍だが… 中国で受注競争激しく
中小型液晶のジャパンディスプレイが12日発表した2014年10〜12月期連結決算は、純利益が前年同期の2.8倍の191億円に改善した。米アップルや中国の小米(シャオミ)のスマートフォン(スマホ)向けが伸びた効果だが、楽観できる状況にはない。最大市場の中国ではスマホ需要を奪い合う消耗戦が始まった。「日の丸液晶連合」の先行きには早くも暗雲が漂い始めている。
「大口顧客(アップル)に加え、中国のスマホメーカー向けが伸びた」。ジャパンディスプレイの大塚周一社長は12日の決算会見で胸を張った。10〜12月期の売上高は55%増の2511億円と過去最高を記録し、純利益も伸びた。アップルの新型スマホ「iPhone(アイフォーン)6」向けの出荷が好調だったほか、円安も貢献した。
出遅れた中国では、大塚社長が自らトップ営業で巻き返しに出た。価格が合わず一度は取引を断ったシャオミから受注を獲得。大口顧客だったシャープの牙城を崩した。
ジャパンディスプレイはタッチパネル機能を内蔵した液晶パネルを手掛ける。シャープは同パネルをまだ量産しておらず、総合力で受注競争に勝った格好。ジャパンディスプレイの社外取締役は「コストと供給能力が評価された結果」と話す。主力の茂原工場(千葉県茂原市)は3月に稼働率が9割を超す見通しだ。
1年で3割下落
同社は日立製作所、ソニー、東芝の中小型液晶を統合、産業革新機構が出資し、12年に事業を始めた。鳴り物入りで14年3月に株式上場したが、その後は中国向け販売の不振やアップルの新製品のずれ込みなどで3度も業績予想を下方修正。株価は一時、公募価格の約3分の1に落ち込んだ。市場にくすぶる「オオカミ少年」の汚名返上へ向け、10〜12月期の業績改善で一息ついた格好だが、先行きはなお厳しい。
「ついに首位から陥落したか」。1月末、業界で驚きが広がった。米調査会社の調べで、中小型液晶の世界シェアでジャパンディスプレイが1位の座を韓国LGディスプレーに奪われたためだ。アップルに強いLGが中国でも攻勢をかけた。
スマホ最大市場の中国ではパネルの販売競争が激化。フルハイビジョンの5型パネルの価格は14年12月に21ドルと、1年で3割下落した。ジャパンディスプレイの西康宏執行役員は「中国で価格攻勢は仕掛けていない」と安値受注を否定したが、シャープや韓国、台湾勢との受注競争はし烈。実際、10〜12月期も単価下落など191億円の減益要因をコスト削減や販売増で補ったのが実情だ。通期予想も121億円の最終赤字を据え置いた。
利益重視を徹底
震源地はシャオミだ。「シャオミとの交渉で出るのは値下げ要求だけ。ついていけるメーカーなんてない」。中国のスマホ部品メーカー幹部は嘆く。シャオミは低価格を武器に14年の出荷台数が6080万台と中国のスマホ最大手に躍進した。今やアップル依存度を下げたい液晶メーカーの「シャオミ詣で」が続く。
パネルメーカーのもう1つの懸念が中国市場の変調だ。14年のスマホ出荷台数は約4億台に達したが、「昨夏から成長が鈍ってきた」(部品関係者)。実際「中国向け出荷の時期が遅れ始めた」(西執行役員)という。
ジャパンディスプレイも対策を急ぐ。収益安定へ車載用パネルを強化するほか、「利益が出ない案件は優先度を下げる」(大塚社長)と選別受注を進める考えだ。
ただ高精細化など劇的な技術進化がない限り、規模を背景にした体力勝負の競争に陥るのは、テレビ用液晶や半導体産業の歴史が証明している。
メリルリンチ日本証券の片山栄一氏は「最大のリスクは中国向けパネルの単価下落だ。本社の合理化や工場再編などでコスト構造を改善できるかが焦点」と指摘する。16年には台湾の鴻海精密工業など中台のパネルメーカー5社がスマホ液晶の新工場を稼働させる。供給過剰時代を前に、価格競争から距離を置き消耗戦から抜け出せるか。日の丸液晶連合にとり、15年は正念場の年となる。
(伊藤大輔、田中博人、広州=中村裕)
[日経新聞2月13日朝刊P.15]
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沈むシャープ、「日の丸」に苦杯
頼みの液晶、中国で競争激化
シャープが再び土俵際に立たされた。2015年3月期連結最終損益は従来の黒字予想から一転、赤字を免れない見通しだ。不振の引き金はスマートフォン(スマホ)用パネルの苦戦だが、シャープをここまで追いつめたのはライバルの韓国・台湾勢ではない。「日の丸」を背負う日本のジャパンディスプレイだった。日本勢同士の皮肉な競争にはまりシャープは沈んだ。
大阪市阿倍野区のシャープ本社。昨年11月、中国からの一報に液晶部隊の幹部たちの顔が青ざめた。
「スマホ用パネルで大事なお客さんが奪われそうだ。激しい営業攻勢があるらしい」
このお客さんとは中国の小米(シャオミ)。2010年設立の新興企業ながら、成長に次ぐ成長を続ける有望な納入先だ。シャープは少なくとも昨夏までは6割ほどの納入シェアを握り、特に高級機種向けのシェアは8割を超していた。
再建の青写真揺らぐ
ところが、11月ごろから新規契約がうまくとれなくなり、納入価格まで下落したという。再建途上のシャープにとって、シャオミとの取引が想定通りに伸びないと、業績回復の青写真そのものが崩れかねない。「シャオミ・ショック」と呼んでもいいような事態になぜ陥ったのか。
液晶パネルの調達に詳しい電機大手幹部は「火をつけたのはジャパンディスプレイではないか」と指摘する。つまり、日本政府の主導で生まれた中小型液晶パネルの「日の丸連合」にシャープが追い詰められているというのだ。
ジャパンディスプレイは日立製作所、東芝、ソニーのパネル子会社が母体。韓国勢や台湾勢の攻勢で苦境に陥っていた各社のパネル事業を救うため、官民ファンドの産業革新機構がつくりあげた。当時はシャープにも連合入りが打診されたが、液晶王国の自負からか「単独でやれる」と袖にした。いわく付きの相手だ。
それから2年。2社の競争は激しさを増している。ジャパンディスプレイは昨春の上場後に業績の下方修正に追い込まれたが、実は水面下で再浮上への戦略を実行していた。シャープの上客であるシャオミに営業攻勢をかけたのだ。
軍配はジャパンディスプレイに上がる。ある液晶パネルメーカーの幹部は、「ジャパンディスプレイの製品にはタッチ機能が入っている分、実質的にシャープ製品より3〜5ドル分ほど安かったことが大きい」と解説する。シャープにとって、受注合戦の敗北は中小型パネル事業の収益低迷、そして会社そのものの業績悪化につながっていった。
水面下で「最後の再編」
そもそも、シャープの業績は屋台骨である液晶ビジネスの浮沈に左右されやすい。こうした不安定な経営体質を変えるには、アップルやシャオミのような大口納入先との交渉力を増すしかない。
その前提は世界的に圧倒的なシェアを握り、パネルメーカーとしての存在感を増していくこと。実は、市場支配力を狙った「最後のパネル再編」が水面下で動きつつある。
昨年10月。関係者によると、シャープのデバイス事業担当幹部に革新機構の執行役員、谷山浩一郎から面会の申し入れがあった。
谷山はジャパンディスプレイの取締役でもある。シャープ側は「いまライバル企業の人と会うのはまずい」と断ったようだが、革新機構とジャパンディスプレイが急接近する意味は一つ。液晶パネルのメガプレーヤーをつくることだ。
この関係者によると「(革新機構側が)提案しようとしたのは、シャープの中小型液晶パネル事業を分社し革新機構が3000億円規模で買収するプランだった」という。
シャープに経営危機が訪れるたび、今までは鴻海(ホンハイ)精密工業など提携交渉の相手が現れた。しかし、これから業績悪化が一段と深刻になった場合、手を差し伸べる相手は出てくるのだろうか。
そのとき、「日の丸」が交渉相手になっていてもおかしくはない。
=敬称略
(北西厚一、伊藤大輔)
[日経新聞2月8日朝刊P.10]
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