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日本国「債務超過」490兆円、資産の多くは売却困難
2015年2月17日(火) 上野 泰也
財務省は1月30日、平成25年度(2013年度)の「国の財務書類」を公表した。この統計は、「国全体の資産や負債などのストックの状況、費用や財源などのフローの状況といった財務状況を一覧で分かりやすく開示する観点から企業会計の考え方及び手法(発生主義、複式簿記)を参考として、平成15年度(2003年度)決算分から作成・公表されているものである。
国の財政は一般会計と特別会計から成り立っており、全体像を把握するのが難しい面がある。「国の財務書類」は、そうした問題点を少しでも解消しようとする試みであり、財政に関する統計の1つとして徐々に定着しつつある。
2013年度末の国の「資産合計」は652.7兆円(前年度末比+12.5兆円)、「負債合計」は1143.1兆円(同+25.9兆円)。この結果、「資産・負債差額」(要するに債務超過の金額)は490.4兆円になった<図>。前年度末からは13.4兆円ものマイナス幅拡大で、過去最大を7年連続で更新した。公表が開始された03年度と比べると倍増している。500兆円突破は時間の問題だろう。
■図:国の財務書類 資産・負債差額(債務超過額)
注:各年度の公表額をそのまま表示
(出所)財務省
そして、日本の名目GDP(国内総生産)は12年度が474兆4749億円、2013年度が483兆1103億円である。国の債務超過額は2年連続で名目GDPを超えており、2013年度はギャップが拡大したということである。
公共用財産の売却は本当に可能か
2013年度末の国の貸借対照表で資産の部を見ると、金額が大きいのは「有形固定資産」177.7兆円、「貸付金」137.9兆円、「有価証券」129.3兆円、「運用寄託金」104.8兆円など。
負債の部を見ると、金額が最も大きいのは(当然のことながら)「公債」855.8兆円。ほかに目立つのは「公的年金預り金」112.2兆円、「政府短期証券」101.6兆円である。
日本の財政状況について楽観的な見方をとる論者からは、国には資産が数多くあるのだからそれらを売却すればよいという声がしばしば聞かれる。だが、そうした主張は国の財政の現実の姿にマッチしていない。
「有形固定資産」は、河川や道路といった国が管理している公共用財産、使用中の国の庁舎が中心である。こうした一般的な売買市場がない資産についても、「過去の用地費や事業費を累計することにより取得原価を推計した価額から減価償却相当額を控除する方法などで算出」して貸借対照表に計上しており、「現金による回収可能額を表すものではない」という。
むろん、何らかの事情で河川の敷地のうち付加価値が高い部分を売却したり、国道を民間に払い下げたり、国の庁舎を民間企業に売却した上で賃借して使用し続けたり、といった特殊なケースが想定できないわけではない。だが、そうしたケースを一般化して大規模な公共用財産の売却が可能だと考えることには、明らかに無理がある。
「貸付金」のうちほとんどは「財政融資資金貸付金」(118.0兆円)であり、財投債の発行などによってそのための資金が調達されているものである。政策目的を持って実行されているそうした貸付金の債権を、仮に何らかの事情で民間企業などに売却した場合でも、それによって国が手にした資金は財投債の償還などに回されるべきものであり、勝手にほかの目的に使用するといった「つまみ食い」は許されない。
「有価証券」のうちほとんどは「外貨証券」(119.1兆円)であり、外国為替資金特別会計による「外国為替資金証券」(いわゆる為券)の発行(117.4兆円)によってファイナンスされている。「つまみ食い」ができないことは、上記の「貸付金」と同じである。
さらに、市場でドルなどの外貨を売却する場合、外形的には外貨売り円買い介入と同じになってしまい、為替相場を円高方向に大きく動かしてしまいかねないという大きな問題点がある。
「運用寄託金」は公的年金の積立金などの運用であり、「公的年金預り金」(112.2兆円)と表裏一体のものである。資産を切り離して勝手に処分することはできない。
では、490.4兆円という2013年度末の国の債務超過額を、どう受け止めるべきか。
行政サービスの提供を目的としている国の会計に、資本金という概念はなじまない。払込資本が存在しておらず、ある年度に利益が得られた場合でも資本が増えるわけではない(「国の財務書類」では損益計算書は作成されていない)。この点が企業会計とは根本的に異なっている。
企業会計と同様に考えられない理由
また、国の場合、債務超過額が膨らみ、それが格付けなどを通じて市場における信用力の低下に結びつく場合でも、徴税権という「切り札」がある点が企業と決定的に異なっている。これを行使することによって単年度の収支を好転させ、債務超過額の膨張に歯止めをかけることが理論的には可能である。
ただし、規模の大きな増税やその他の財政緊縮措置に対しては、多くの有権者を含む国民からの反発が避けられないだろう。民意が離反する場合には、選挙を通じた政権の交代などを通じて徴税権の行使が行き詰まる恐れがある。
総選挙で急進左派連合が勝利したギリシャの政治状況は、日本の将来を考える上でも示唆に富む。市場のコンディションが通常の状態の場合、そのあたりもにらみながら各国の国債の売買が行われ、信用スプレッドが伸縮するのである。
ところが、長期国債の大規模な買い入れを中心とする日銀の「量的・質的金融緩和」によって、日本の債券市場では健全な価格形成機能がほとんど消えてしまっており、財政政策に対するチェック機能(警告シグナルを発信する機能)はもはや皆無に近い状態である。
さらに、ECB(欧州中央銀行)が米英型の量的緩和導入を決定する中、ユーロ圏でもそうした機能がかなり強く圧迫されている。その欧州からマネーが流入し、日本の国債利回りを下押ししている。
したがって、日本の債務超過額が名目GDPを上回ってなお拡大していることに対する世の中の関心は足元では乏しく、市場でも現在はまったくと言ってよいほどケアされていない。
だが、これから長い年月が経ってから日本の財政がたどった歩みを歴史家が振り返る時に、「ポイント・オブ・ノー・リターンはあの頃だった」と評されることがあるかもしれない。
このコラムについて
上野泰也のエコノミック・ソナー
景気の流れが今後、どう変わっていくのか?先行きを占うのはなかなか難しい。だが、予兆はどこかに必ず現れてくるもの。その小さな変化を見逃さず、確かな情報をキャッチし、いかに分析して将来に備えるか?著名エコノミストの上野泰也氏が独自の視点と勘所を披露しながら、経済の行く末を読み解いていく。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20150213/277449/?ST=print
税還付のコストは20兆円!
確定申告が映し出す複雑怪奇な米税制
2015年2月17日(火) 太田 智之
3月16日の締め切りを前に、日本では確定申告が佳境を迎えているが、実はここ米国でも春は確定申告のシーズンだ。毎年、少しでも税金を取り戻そうと、多くの国民が伝票の束と格闘する姿は春の風物詩の1つとなっている。
年間の還付金総額は36兆円
米国の場合、一定額以上の所得があった者に申告の義務が生じるため、主に自営業者や高額所得者などに限定される日本とは異なり、非常に多くの人が確定申告を行う。毎年の申告件数は1億5000万件と日本のおよそ7倍だ(図1)。人口が日本の2.7倍であることを考えると、日本に比べていかに多くの人が確定申告をしているかがわかる。
図1 確定申告の申請件数
(資料)国税庁、米内国歳入庁
義務とはいえ、これだけ多くの人が確定申告を熱心に行うのは、それなりのメリット、つまり税還付が見込まれるからだ。
日本の国税庁にあたる米内国歳入庁(IRS)によると、年間の還付額はおよそ3000億ドル、日本円にして36兆円に達する(図2)。還付申請が認められたケースが申告件数全体の7割強にあたる1億1000万件なので、1件当たり2700ドル、およそ32万円が手元に戻ってくる計算である。
こうした還付金は、受け取る側にとって臨時収入の意味合いが強く、使い道について裁量の余地が大きいことから、小売りや娯楽、旅行など消費に携わる各企業は、毎年その行方に熱い視線を注いでいる。
図2 還付金総額と平均還付額
(資料)米内国歳入庁
ただ一方で、還付金を手に入れるための準備は一苦労である。
一筋縄ではいかない還付金申請
米内国歳入庁の担当者によると、確定申告の準備のために国民が費やす時間は、毎年60億時間以上に及ぶという。また会計士や税理士など専門家に支払う費用も、日本円にして20兆円を超えるとしており、36兆円の還付金を得るために、その半分以上に相当する金額を支払っている格好だ。
なぜこんなに時間とお金がかかるのかといえば、それは米国の複雑な税制に起因する。事実、所得税の納税手続きに関する説明資料だけで300ページ近い分量があるほか、教育や住宅取得などに関する様々な優遇措置も、確定申告のための作業量を多く、かつ煩雑にしている。
例えば、教育に関する優遇措置だが、それだけで15個も存在する。そのうちどれが適用されるかは、別途90ページに及ぶ解説資料を読む必要があり、とても一般の人が片手間でできる作業とはいえない。
また、優遇策の中には、富裕層の代名詞であるプライベートジェットや別荘、ヨットの保有に適用されるものがあり、なぜ優遇する必要があるのか、存在意義自体に疑問を感じるものも見受けられる。
かつて、著名な投資家であるウォーレン・バフェット氏が、「自分の実効税率は秘書よりも低い」と公言したが、背景にはこうした富裕層に対する優遇措置、いわゆる税の「抜け穴」があったわけだ。
増え続ける優遇税制
では、こうした複雑な税制を変えることはできるのか。そもそも税とは、公平・中立に加えて、簡素でなければならないとされている(いわゆる税の三原則)。つまり、税の仕組みは誰もが理解できる簡単なものでなければならないということだ。
もちろん、これはあくまで原則論であって、景気対策や産業振興といった政策目的を達成するための手段として、優遇措置を導入することは広く容認されている。
問題は、いったん導入された優遇措置を廃止するのが非常に難しい点である。
本来、それらは政策目的が一通り達成された時点で、役割を終えなければならない。しかし、これまでのところそうしたケースは非常に稀だ。恩恵を享受した人の多くが、いったん手に入れた特権を手放すことに抵抗するからだ。プライベートジェットなどの保有に対する軽減措置が富裕層の既得権益と化しているのは、まさに好例といえる。
また、優遇措置の増加は手続きを煩雑にする半面、新たな節税機会を提供するため、納税者に受け入れられやすい点も簡素化を阻む要因となっている。図3は個人所得税に関する優遇措置の数をみたものだが、一昔前に比べて多くの優遇策が実施されているのがわかる。それだけ新たな対策が随時追加されたことを示している。
図3 個人所得税における租税特別措置(優遇税制)の数
(資料)米議会合同税務委員会
オバマ大統領は、先日の予算教書で、中低所得層対策の一環として、共働き世帯に対する新たな優遇措置の創設を提案した。歳出増には難色を示す共和党だが、減税については一定の理解を示す議員は多い。まして「格差是正」が新たな政治課題として浮上する中、税制を通じた所得再分配機能の強化を求める意見は今後も強まることが予想される。
複雑になりすぎた税制を簡素化すべきとの意見は根強いが、実現に向けたハードルは以前にも増して高くなっているといえそうだ。
このコラムについて
Money Globe- from NY
変わりゆく米国の姿を、ニューヨークから見た経済の現状と、ワシントンの政策・政治動向の両面をおさえながら描き出していく
http://business.nikkeibp.co.jp/article/money/20150212/277387
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