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「戦争や紛争というのもフロンティアになり得ます。安倍政権は武器輸出によって経済成長を促そうとしている」と指摘する平川克美氏
グローバリズムの行き着く先は、戦争か? それとも定常経済か
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150217-00043675-playboyz-bus_all
週プレNEWS 2月17日(火)6時0分配信
昨年末、中間選挙を終えたアメリカ議会では再びTPP(環太平洋パートナーシップ協定)交渉の早期妥結を望む声が上がっている。今月には日米2国間協議も再開。甘利経済再生担当大臣は、春の早い段階での妥結を目指すと意気込んでいる。
このTPPの背後にいるのが、アメリカの多国籍企業。グローバリズムの名の下に、他国に徹底的な市場開放を促し、利潤を追い求めるのだ。
しかし、彼らの行動原理であるグローバリズムとはなんなのか? そして、この先どこへ向かおうとしているのか…?
こうした疑問に答え、グローバリズムが“病”にかかっている、と指摘するのが『グローバリズムという病』。著者の平川克美氏に、グローバリズムが抱える問題点を尋ねた。
―TPPの協議が再開されました。平川さんはTPPについてどうお考えでしょうか?
平川 自由貿易というと、それが正しいことのように考えがちですが、プラスとマイナスの両面があります。市場を拡大・活性化する点はプラスですが、国民国家内の、必要だが未成熟な産業にとっては脅威です。現在のように一国の問題がすぐに世界に波及する時代こそ、すみ分けとしての保護貿易が見直されるべきだと考えています。期限を切り、性急にことを決める種類のものではない。
―グローバリズムは、国家の枠を取り払った多国籍企業の思惑というわけですね。
平川 そうです。平たく言えば、TPPとはアメリカのグローバル企業が貪(どん)欲に新しいフロンティアを求めて、他国の市場をこじ開けようとしているようなもの。関税障壁を撤廃した両国の貿易は“ウイン・ウイン”だなんて言いますが、貿易にウイン・ウインはない。絶えず“ウイン・ルーズ”の関係です。そのため交渉は、国益と国益の必死な争いになります。個人的にはこれ以上、日本の農産物の自給率を下げてどうするんだ?という思いです。
―本書の中では、グローバリゼーションとグローバリズムは違うものだと書いていますね。
平川 グローバリゼーションとは、科学の発達や文明の進展によって商品や資本、労働の自由な行き来が可能になること。これは文明史的な必然です。一方のグローバリズムとは、そうしたグローバリゼーションを株式会社がビジネスを拡大していくためのツールとして巧みに利用する考え方のことです。世界をひとつの市場として統合しようとするのです。こちらはイデオロギーですね。
―イデオロギーであるグローバリズムが今、病にかかっている?
平川 グローバリズムを推し進めるのは株式会社です。株式会社の宿命とは、ビジネスを広げて株主に利益を渡し続けること。そのためには右肩上がりの経済成長を続けなくてはいけない。しかし、それはもう限界にきています。つまり先進国においては、原理的には株式会社の時代は終わりつつある。この事実を、会社の経営者も政治家も知っているのに知らないふりをしている。
先日、朝日新聞で同じようなことを語ったら多くの反論がありました。経営者向けにも似たような内容の講演をするのですが、私の説明をよく理解してくれます。経営者は、この先、経済成長が難しいことを自覚しているわけです。
―その理由は?
平川 日本でいえば、一番の大きな理由は人口の減少です。経済成長率というのは予測しかできませんが、数十年後の人口は実数で見えています。日本の場合は2050年には1億人を割って、ゆくゆくは6000万人まで減るといわれている。現在の半分の人口です。今と同じ規模の企業活動が続けられるわけがありません。
―すると、多国籍企業はどのような行動に出るのでしょう?
平川 彼らにとって必要なのは未開の市場、フロンティアです。フロンティアにしか経済成長は求めることができません。多国籍企業にとって当初は、中国やインドなどのBRICs(ブリックス)の国々だった。その次はアフリカです。労働賃金が安く、未開拓な市場に向かっていくのです。ITや金融という空間へのシフトもその過程です。
また、戦争や紛争というのもフロンティアになり得ます。武器だけではありません。戦場の兵士の生活のための必需品などもそれにあたります。日本でも武器輸出解禁の動きが出ていますね。安倍政権は武器輸出によってまで経済成長を促そうとしている。不安を覚えますね。
―グローバリズムは、資本主義に基づいた株式会社が企てる最終的な実験であると本書では指摘しています。その成否の結果はいつ出るのでしょう?
平川 それについては経済学よりむしろ、文化人類学や歴史人口学の立場から検証するべきだと思います。なぜなら今は、文明の移行期だと私はとらえているからです。株式会社が初めて英国に出現した17世紀以来の近代の歴史が終わるか否かという大きなテーマです。50年から100年という時間のスパンでないと結果は見えてはきません。
―では、グローバリズムの行き着く先をどう予想しますか?
平川 ひとつは先進国世界が、ヨーロッパの中世のような貧富の差が激しい社会に戻っていく。これまで以上に格差が広がり、社会が不安定になる。ヨーロッパの三十年戦争(17世紀初頭、神聖ローマ帝国を中心に行なわれた計30年にも及ぶ戦争)の頃のような弱肉強食の世界に戻るとは思いませんが、経済のために戦争が使われることはいつでも起こり得る危険性です。これは少し悲観的な観測ですね。
―楽観的なシナリオはありますか?
平川 企業の成長戦略とは正反対の方向に、人間が生存戦略として新しい経済を見いだす可能性があります。格差の拡大は人間の生存を危うくすることにもつながりますから。そこで行なわれる経済活動は、拡大や発展ではなく継続を求める定常経済の形になるでしょう。
具体的にはNPO法人や日本の生協のような生産者の協同組合などです。株主がいないので利益を事業そのものに再投資できます。持続可能な定常的な経済モデルをつくることが大切です。商店街の経済のように、一定の利潤を上げながら売り手と買い手の信頼関係が蓄積されていくような社会。私の言葉でいえば、そうした「小商い」の発想が、人間の知恵として重要視されるかもしれませんね。
(構成/長谷川博一 撮影/樋口 涼)
●平川克美(ひらかわ・かつみ)
1950年生まれ、東京都出身。1975年、早稲田大学理工学部機械工学科卒業。東京・渋谷道玄坂に翻訳を主業務とするアーバン・トランスレーションを内田樹氏らとともに設立、代表取締役となる。現在、株式会社リナックスカフェ代表取締役。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科特任教授。著書に『復路の哲学 されど、語るに足る人生』(夜間飛行)、『路地裏の資本主義』(角川SSC新書)などがある
■『グローバリズムという病』
(東洋経済新報社 1500円+税)
近頃でいえばTPPが象徴的だが、日本でもさまざまな分野においてグローバリズムと呼ばれるものが叫ばれて久しい。しかし、著者は日本がそれをなんとなく受け入れてしまっている現状に警鐘を鳴らす。アメリカで生まれたグローバリズムの正体とはなんなのか? 本書はそれを、国家など眼中にない富裕層と多国籍企業が、国家そのものに挑戦するという、歴史上例のない構図だと指摘する
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