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原油価格急落でサブプライム危機ふたたび〔1〕/藤 和彦(世界平和研究所主任研究員) (衆知)
http://www.asyura2.com/15/hasan93/msg/619.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 2 月 16 日 12:12:06: igsppGRN/E9PQ
 

原油価格急落でサブプライム危機ふたたび〔1〕/藤 和彦(世界平和研究所主任研究員)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150216-00000001-voice-pol
PHP Biz Online 衆知(Voice) 2月16日(月)11時58分配信


■シェール革命のウソが金融システム崩壊の引き金に


◆ジャンク債市場の崩壊◆

 「原油価格急落がなぜ次のサブプライム危機のきっかけとなりうるのか」

 2014年12月3日の米ニュースサイトの『ビジネスインサイダー』は、上記表題の記事のなかで「原油価格急落による米国のジャンク債市場の崩壊が、次の金融危機の引き金となる」との警告を発した。

 ジャンク債とは、低格付けのデフォルトリスクの高い債券のことであり、その投資の性格はハイリスク・ハイリターンである(「ジャンク」とはがらくたや紙くずという意味)。

 1970年代の米国で将来のキャッシュフローに焦点を絞ることにより投資リスク判断の精度を上げる手法が確立されたことから、「ジャンク債」市場は徐々に成長し、30年かけてその規模は1兆ドルになった。1980年代に「ジャンク債の帝王」と呼ばれたマイケル・ミルケン氏は最近再び脚光を浴びているが、「1970年から2000年にかけて『ジャンク』企業は6200万人の雇用増をもたらした」として、ジャンク債のことを「繁栄の方程式」と称賛している。

 ジャンク債のデフォルト率は、リーマン・ショック直後10%を超えていたが、ここ数年2%という低いデフォルト率が続いている。

 これに目を付けたのがリーマン・ショック後の低金利で運用に苦しむ投資家たちで、高リスクだが利回りの高いジャンク債が飛ぶように売れるようになり、「ジャンク債でも危険はない」との見方が定着しつつある。リスク分散化のためのCBO(注)も開発されたため、ジャンク債市場の規模は直近の7年間で2倍となり、2兆ドルに急膨張したという(注:CBOとはCollateralized Bond Obligationの略称であり、社債担保証券と訳されている。リスクの高い債券を束ね、破綻時に優先返済するものを高い格付けにし、破綻したら返済しないものを低い格付けにするなど格付けごとに輪切りにした債券だが、2014年の年間販売額は史上最多の1000億ドルに達するといわれている。サブプライムローンの場合、CDC=Collateralized Debt Obligation、債務担保証券が多数組成されたことが金融危機の要因となったが、CBOの組成に関与する金融機関は「リーマン・ショック前より担保審査が厳格化したのでバブルではなく問題はない」としている)。

 ジャンク債の発行は2014年11月末までに3440億ドルに達し、2013年の3480億ドルを上回り過去最高となる見込みとされていたが、その好調の原因をつくり出しているのがシェール企業なのである。

 シェール企業はリーマン・ショック後の金融緩和のもと、ジャンク債市場で多額の資金を調達し、開発を手がけてきた。2014年10月末時点でシェール企業が発行するジャンク債の総額は2972億ドルで、5年前の約3倍の規模となり、10年前は4%にすぎなかった市場全体のシェアは16%にまで急拡大している。

 しかし、この活況に水を差しているのが昨年半ばからの原油価格の急落である。

 ジャンク債を購入した投資家は原油価格の急落をまったく想定していなかったため投げ売り状態となり、11月下旬には「シェール関連のジャンク債の3分の1がほとんど取引されていない」といわれていた。

 その後、12月に入るとシェール関連のジャンク債が約10%のマイナスリターンとなることが明らかになったため、債券投資家サイドに多額の損失(85億ドル)が生じる恐れが現実化してきた。

 シェール企業はジャンク債以外に2500億ドル以上のレバレッジド・ローン(ハイリスク・ローン)を借りている(ジャンク債と同様「CLO」というかたちで証券化されている)が、2014年12月17日付『フィナンシャル・タイムズ』は「投資家はパッケージ化された証券化商品(CLO)に警戒を持ち出した」との記事を掲載した。資産のなかにどれだけシェールオイル関連のエクスポージャーがあるかわからない、という不安である。

 シェール企業などに重点を置く投資信託と上場投資信託(ETF)への投資額も2014年1月から7月までは前年比約2倍の163億ドルに達し、総資産額は1282億ドルに上っていたが、10月以降資金流出が止まらない状況にある。

 2014年のジャンク債のリターンもプラス2.5%と2008年以降で最も悪く、利回りも前年の507%から7%に急上昇している。

 信用力の低いシェール企業が減収に見舞われるなか債務返済に苦しみ、銀行から与信枠を制限されるとの懸念が深まっているという観測もあったが、当時の原油価格はまだ1バレル当たり66ドルだった。


◆シェール業界は自転車操業◆

 現在シェール層を採掘している企業の多くは当初、天然ガスの生産を始めた。しかし供給過剰により米国の天然ガス価格が急落したことから、採算割れに陥ってしまい、苦境を脱するため生産を石油に切り替えた。石油部門から上がる収益で糊口を凌ぎ、ジャンク債市場から資金を捻出することで増産を続けてきたが、かなりの数のシェール企業が今後苦境に追い込まれ、2015年は企業再生案件が増えるため「バンカーらが手ぐすねを引いている」との噂が流れはじめた。

 ジャーナリストの田中宇氏は「米国のシェール開発はブレーキが付いていないトラックが暴走しているようなものだ。シェール革命は米金融界が立案した詐欺であり、主役は石油業界でなく金融業界だ。原油安で儲からないといって減産すると、シェール革命が失敗したと見なされ、債券が売れなくなり、金融が破綻する。シェール業界は原油安でも増産せねばならない」とその「自転車操業」ぶりを説明し、「今後石油相場がさらに下がると、米国のシェール投資が儲からない投資であることが顕在化し、投資が枯渇して業者の多くが連鎖破綻する」としていたが、その後も原油安が進み、12月11日にはあっけなく1バレル=60ドルを割り込み(2009年7月以来で初めて)、「原油価格は自由落下の状態」になってしまった。

 カタールの工業・エネルギー大臣が「世界の原油市場の供給過剰のレベルは日量200万バレルである」と発言したため、モルガン・スタンレーは2014年末に「原油価格は2015年に1バレル=43ドルまで下落する可能性がある」との予測を出した(当時は非現実的な数字と思われていたが……)。

 このようにOPECも打つ手がなく原油価格が下落を続ける状況を前に、2014年末時点でジャンク債バブル崩壊の懸念が一気に高まった。

 その矢先の2015年1月4日、テキサス州のシェール企業が米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請し、経営破綻した(負債総額は5000万ドル)。原油安で想定どおりの売上高が計上できず、先物取引などを用いた価格ヘッジも十分でなかったために、資金繰りが悪化したと見られる。小規模な破綻案件だったが、原油価格急落による信用不安が広がるなかでのシェール企業の破綻のニュースであったため、大きな注目を集めた。

 シェール企業の多くは中小であり資金力が限られることから、その開発費を借入金や社債に頼るケースがほとんどである。シェールオイル開発は在来型の油田に比べてコスト高だったが、過去数年間でコストダウンが進んだため、「シェールオイルでひと山当てよう」とする企業が殺到、収益が上がるよりも速いペースで資金を借りてきた(シェール企業が抱える負債は2010年から2014年9月にかけて約55%上昇したが、同期間の収入は36%しか増加していない)。

 シェール企業の破綻で原油価格が急反発しないかぎり、「中小のシェール企業で同様の破綻事例が出てくる可能性が高い」との懸念が広まり、原油価格が50ドル割れを起こせば、かなりの数のシェール企業がギブアップするのは間違いないとされたため、地方の金融機関が中小のシェール企業に対する融資回収を急ぎはじめた。

 しかし一方で「多くの企業がリスクをヘッジしているため、2015年にデフォルトに陥る企業はそう多くない(JPモルガン)」との見方も出てきている。

 シェール企業はキャッシュフローを確実なものとするため、通常、6カ月から24カ月先までの生産分をヘッジしているが、シェール企業の多くは原油価格下落局面でこれまでのヘッジポジションが期限切れになるのを待たずに利益を確定させ、これにより生じた原資を元に積極的なヘッジの再構築に乗り出し、当初の想定よりも長く掘削作業を続けられる状況にあるという。

 たとえば2014年末に小規模なシェール企業は手元資金を厚くするために、過去に約90ドルでヘッジしていた41.4万バレルの原油を売却して1300万ドルの利益を得たとされるが、この利益を懐に入れる代わりに将来の値下がりに備えるためにいまの価格水準に近いスワップ(あらかじめ決められた条件に基づいて将来の一定期間にわたりキャッシュフローを交換する)とオプション(ある原資産についてあらかじめ決められた将来の一定の日において一定の価格で取引する権利を売買する)を購入する原資に充てる動きが一般的である。

 このため体力のある一部の大手シェール企業は引き続き2015年も高水準の投資を実施する公算が大きく、ノースダコタ州バッケン鉱区やテキサス州イーグルフォードなどコスト競争力の高い優良鉱区に権益をもつ企業も強気の増産姿勢を崩しておらず、効率的な掘削法など技術革新が進み、一つの油井当たりの生産量も向上しつづけている。

 OPEC諸国はシェール企業のヘッジポジションが満期を迎え、価格急落に対する「盾」がなくなる状況が訪れるのを待ち構えていたが、その思惑は外れてしまったようだ。


(『Voice』2015年3月号より/〔2〕「米国株式市場は50%下落」につづく))


■藤 和彦(ふじ・かずひこ)世界平和研究所主任研究員
1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2011年から現職。
著書に、『日露エネルギー同盟』(エネルギーフォーラム新書)『シェール革命の正体』(PHP研究所)ほか多数。


 

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コメント
 
01. 2015年2月16日 12:23:56 : nJF6kGWndY

>「1970年から2000年にかけて『ジャンク』企業は6200万人の雇用増をもたらした」として、ジャンク債のことを「繁栄の方程式」と称賛
>ジャンク債のデフォルト率は、リーマン・ショック直後10%を超えていたが、ここ数年2%という低いデフォルト率

つまりはバブル礼賛だが

バブルとは必ず弾けるものだ


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