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急増する大型ショッピングセンター、街中進出で百貨店を破壊 消費者行動激変で淘汰加速
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150216-00010000-bjournal-bus_all
Business Journal 2月16日(月)6時1分配信
ショッピングセンター(SC)がコンビニと同じように市場拡大を続けている。競合する百貨店や総合スーパーが長期低迷にあえいでいるのと対照的だ。日本ショッピングセンター協会の調査によると、2013年のSCの施設数は3134件、その売り上げ総額は28兆9209億円、14年は29兆7697億円と30兆円目前に迫る勢いにSC業界関係者の期待も高まっている。
SC業界の成長要因は出店拡大だ。13年の新規出店数は65件。14年も55件が新規出店している。01年以降新規出店が最低だった12年の35件を底に、再び拡大傾向に入っている。また、施設の大型化も成長に寄与している模様だ。昨年は「イオンモール和歌山」「ららぽーと和泉」など店舗面積が3万平方メートルを超える大型施設が続々と開業、その数は10件に達した。つまり昨年開業したSCのうち大型施設が2割近くを占めているわけだ。
中でも開業前から何かと話題になったのが、「イオンモール岡山」(昨年12月5日開業)だった。大型SCといえば郊外に建てるのが常識のようなもの。その常識を覆し、JR岡山駅から徒歩5分の繁華街の一角に敷地面積約4万6000平方メートル、店舗面積約9万2000平方メートルの7階建てSCビルが出現したのだから、話題になるのも当然といえよう。
イオンモール岡山の出店に代表されるように、昨年はSCの都市シフトが鮮明になったのも業界の特徴だった。都心部への出店は10年以降1桁台で推移、13年も6件だった。それが14年は12件と倍増。その一方で、これまでの出店の中心だった郊外は20%近く減少した。
●「人気SC」と「廃墟のようなSC」の分かれ目
SCが都市シフト傾向を強めているのは、駅という人が集まる資産を抱えている鉄道会社がSC事業開発を積極的に進めているからだといわれる。昔から「ルミネ」「アトレ」を展開しているJR東日本を筆頭にJR各社がSC事業開発に本腰を入れている。私鉄でも東武鉄道が「東京スカイツリー」の関連スポットとして「東京ソラマチ」を開業し、連日賑わいをみせている。
また、商業施設開発関係者は消費者の行動傾向として「以前は買い物もレジャーの1つだったが、今は通過点の行動の1つ。つまり買い物をするためにわざわざ外出することはなく、買い物は『何かの目的を持った行動のついで』。この行動変化がSCの都市シフトの背景にある」と指摘する。
このため、消費者が日常的に集まる駅に隣接しないSCは、消費者をいかに呼び込むかで知恵を絞っている。同関係者は「いつも賑わっている人気SCと、行ってみると食品スーパーとパチンコ店だけが開業している『明るい廃墟のようなSC』の分かれ目は、商圏人口と回遊性にある」と、次のように説明する。
商圏人口はSCの絶対条件であり、これを担保できないと施設デザイン、話題演出などでいくらがんばっても失敗する。一方、客を施設全体に行き渡らせるために、横と縦の動線計画が重要。
横の動線計画では、回遊の流れによどみを生じさせないよう、行き止まりや回りにくい箇所をつくらないようにする。通路は緩やかなカーブにし、100メートル先ぐらいまで見渡せるようにする。それくらいの距離はそぞろ歩きにはストレスを感じない距離で、少し歩くと先が見え、また少し歩くと先が見えるという仕掛けだ。その間にいろんな店が目に留まり、回遊自体が楽しくなってくる。
縦の動線計画では「上階誘導」がポイントになる。人間には「上に上がるのは面倒」との心理的忌避感があるからだ。大型SCの多くが吹き抜けを設けているのは、上階への視認性を高め、心理的忌避感を弱めるのが目的だ。最上階には映画館、カルチャー教室、フィットネスクラブ、レストランなどの「目的核」を配置する。こうしておくと、あとはシャワー効果で客が施設全体を回遊するようになる。
こうした「SCの原理原則」に基づいた回遊の仕掛けや工夫が凝らされたSCには「ついで買い」のリピーターが集まり、そうでないSCは必然的に淘汰されてゆくという。SCの生存条件は厳しい。
●客を奪われる地方百貨店
SCはこれまで、「地域の顔」である地方百貨店の客を奪って成長してきたといわれている。その地方百貨店は、この10年間で100店以上が姿を消した。百貨店業界全体の売上高も03年の約9兆7000億円から13年は約6兆2000億円へと64%に縮小。さらに「16年には5兆2000億円まで縮む」(大手百貨店関係者)との悲愴な予測まで出ている。
そんな業界を象徴するかのように姫路市の老舗百貨店「ヤマトヤシキ」は昨年12月4日、事業再生実務家協会に対し私的整理の一種である事業再生ADRを申請、同日受理され、業歴108年ののれんを下ろした。近隣のSCに客を奪われ、4期連続の最終赤字に陥っていた。
都心部の一等地に店を構える百貨店は、もともと他業態と比較して競争優位の立場を占めていた。その業態が長期低迷にあえいでいるのは、「店を開ければ『客が財布を抱えて入ってくる』大正時代以来の意識からどうしても抜けられないのが一因」と、大手百貨店関係者は打ち明ける。
加えて買い物は「何かのついで」という消費行動の変化。百貨店はこれまで、消費行動の変化に対しては売り場の改装で対応してきた。だが「消費行動が根源的に変化した今日、売り場の改装ごとき小手先の対応で百貨店に客を呼び込めるわけがない」と指摘する流通業関係者は少なくない。商品を売る以前に、どうすれば客に「わざわざ来てもらえるのか」の工夫が百貨店に欠けているというわけだ。
●高齢者を卒業させないSC
一方、順調に市場が成長しているSCも安閑としていられない。特に大型SCは今後の成長に向けた岐路に立たされていると言っても過言ではない。「今日の百貨店は明日の大型SCの姿」といえる危機が迫っているからだ。
これから加速的に増加する高齢者にとって、広大な施設内を回遊するのは体力的につらい。「体験型施設」「観光型施設」「経年優化」など大型SC運営会社は豊富な資金力に物をいわせ、さまざまなコンセプトを打ち出し、実践している。しかし、いずれも現役世代を対象にしたコンセプト。高齢者のニーズとはギャップがある。ターゲットの現役世代も20〜30年後には高齢者になる。
流通系シンクタンク関係者は「10年後の市場を見据えた時、『高齢者を卒業させないSC』、すなわち高齢者も現役世代も楽しめる『バリアフリー型施設』の整備が急務だ。今はインターネット通販もあればネットスーパーもあるので、高齢者はSCを卒業しても、買い物自体には困らない」と指摘する。
SCはこれからも新陳代謝しながら成長してゆくのか、高齢者を取り込めなくて客数減にあえぎながら衰退してゆくのか。今後の動向が注目される。
(文=福井晋/フリーライター)
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