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http://blogs.yahoo.co.jp/taked4700/12552415.html
債券発行が出来なくなる日
「財政悪化を実感し、地熱発電によってそれを打開するべき」という記事の続きです。「公債が発行できなくなる日」というタイトルにしようと最初思ったのですが、考えてみれば、社債も日本経済が破たんすればほとんど発行できなくなるはずなので、社債も含めたものにしました。
債券の発行状況については日本証券業協会の「公社債発行額・償還額(2014年11月分更新)」( http://www.jsda.or.jp/shiryo/toukei/hakkou/files/hakkougakushoukanngaku.xls )を参考にしました。このデータで言う債券の定義は、「『公社債発行額・償還額』の集計対象の範囲」( http://www.jsda.or.jp/shiryo/toukei/hakkou/files/hako_2.pdf )にあります。簡単に言うと、公債である国債と地方債、そして、民間のものである各種社債を合計したものです。一部の債券については集計をしていない様子です。集計外の中で、多分、一番額が大きいのは政府短期証券ですが、政府短期証券は、主に政府によるドル買いに使われるので、基本的に米国債に化けていて、100兆円程度のはずです。
千億円の単位を四捨五入して兆円以上だけの数値を使います。まず、1998年度末から2013年度末までの発行残高の金額の推移です。
1998年度末: 505兆円
1999年度末: 543兆円
2000年度末: 578兆円
2001年度末: 642兆円
2002年度末: 698兆円
2003年度末: 750兆円
2004年度末: 825兆円
2005年度末: 875兆円
2006年度末: 877兆円
2007年度末: 890兆円
2008年度末: 864兆円
2009年度末: 911兆円
2010年度末: 956兆円
2011年度末: 986兆円
2012年度末:1019兆円
2013年度末:1056兆円
1998年度末から2013年度末の16年間で残高は約2倍です。
次に、各年度ごとの発行額の推移を見ます。
1998年度末: 142兆円
1999年度末: 141兆円
2000年度末: 148兆円
2001年度末: 182兆円
2002年度末: 181兆円
2003年度末: 196兆円
2004年度末: 224兆円
2005年度末: 221兆円
2006年度末: 204兆円
2007年度末: 173兆円
2008年度末: 157兆円
2009年度末: 189兆円
2010年度末: 193兆円
2011年度末: 197兆円
2012年度末: 204兆円
2013年度末: 210兆円
1998年度末と比べると2013年度末は約50%増加です。
現状で、日銀は市中銀行から年間50兆円から80兆円程度の国債を買い入れるとしています。日銀は、2014年11月4日段階で約200兆円の国債を保有しています。
2014年のGDPは概算500兆円です。日銀が市中銀行から買い入れる国債の総額は、ほぼ政府の新規国債発行額と同じになってしまうはずですから、日本の経済活動規模を表すGDP500兆円の少なくとも1割である50兆円程度は政府による国債発行で経済が維持されているわけです。
財政破たんするとどうなるか。まず、円安になります。(または、円安が一定規模で進展すると財政破たんすると言ったほうが実態に近いでしょう。)現状で年間25兆円から30兆円程度の化石燃料輸入代金が2倍程度にはすぐ跳ね上がるでしょう。財務省による統計で2014年の輸入の品目別金額が( http://www.customs.go.jp/toukei/shinbun/trade-st/2014/2014_115.pdf )にあります。大分類ごとの大まかな金額を挙げます。
食料品:6兆7千億円
原料品:5兆6千億円
鉱物性燃料:27兆7千億円
化学製品:6兆9千億円
原料別製品:7兆円
一般機械:6兆8千億円
電気機器:11兆5千億円
輸送用機器:3兆円
その他:10兆7千億円
輸入代金が跳ね上がると物価にすぐ影響するのは、輸入比率の大きなものです。国内産がほとんどであれば輸入価格が上がっても普通の消費者にはあまり影響はありません。鉱物性燃料は原油やLPGのことで、ほぼ100%輸入頼みですから、ガソリンや灯油、プロパンガスなどの値上がりはほぼ円安の進行と同期します。次に問題なのは約60%を輸入に頼る食料品です。特に、小麦や大豆、飼料、及び肥料原料はほぼ100%輸入です。飼料や肥料原料がほぼ100%輸入依存であるため、国産の農産物も円安の影響をかなり強く受けます。
日本では10年以上デフレが続いていたので、この1月の10年国債の利率は0.3%でした。しかし、今後、より円安が続けば、輸入物価高による物価の上昇率の方が国債金利よりも高くなるので、国債を買うと資金が目減りすることになります。ほぼ同じことが、県債や市町村債にも言え、当然、社債などにも言えるのです。もっとも、社債については企業により業績は様々ですから、場合により買われ続けることもあるとは思います。
現状で国債残高の約10%を海外勢が保有しています。その総額は70兆円程度あると思われます。円安になれば、日本国債を保有していると損をしますから、海外勢が日本国債を売りに出します。日銀がすぐに対応し、買い上げに走るのでしょうが、既に200兆円程度の国債保有をしているわけですから、そう簡単には保有額を急激に増やすわけにはいかず、国債の売りが買いを上回ってしまい、日本国債の流通利回りが大幅に上がることになります。ほぼ同様な現象が地方債や社債についても言えます。
マイナス金利ということが最近話題になっていますが、預金利子よりも物価の値上がりの方が大きいことを言うようです。いわゆる逆ザヤであり、預金をするよりも物を買う方がいいという判断がされていきます。こういった場合、普通は預金から株へ資金が移動します。株は物価と同時に値上がりすることが多いからです。
輸入依存度が大きい品目について、円安が進むと、これらの品物はどんどんと値上がりすることになりますから、円安は一種のマイナス金利状況をもたらすわけです。国債や地方債、社債などの利率よりも物価の値上がりの方が高ければ、それらの債券を持っている人たちは現金に換えて物を買おうとするでしょう。そういった売りが卓越する市場へ新たに債券発行をするためには少なくとも物価上昇率よりも高い利子を付けたものでないと買ってもらえないことになります。つまり、現状で1%未満の利率で発行出来ていた国債などが2%とか5%、または10%程度利率をけるとしないと発行できないことになります。ところが、日本は既に40年以上借金依存財政でしたから、高い利率を付けた国債発行は借金額をより急激に増やすという結果になるだけです。
高い利率の国債発行は普通二つの場合で行われます。一つは社会がどんどん発達している場合です。物不足が発生し、その結果、物価高が生じるので、その物価高よりも高い利率を付けないと国債発行が出来ないからです。国債の償還は将来規模が拡大した経済によって賄われます。もう一つは、社会がどんどんと衰退してる場合です。人々が守りの生活に入ってしまい、投資が行われなくなった結果、経済がどんどんと不活発化し、税収が歳出を大幅に下回る状況になったとき、普通はデフレになるのですが、通貨安がインフレをもたらすほどになると、その物価上昇率を上回る利率を付けないと債券発行が出来なくなるです。この場合、結局償還はできず、デフォルトになって、大幅な経済縮小、増税、福祉や給与の切り下げとなります。
現在、政府予算が100兆円程度です。毎年の債券発行額が200兆円程度ですから、この債券発行が難しくなれば、一気に経済は行き詰るのです。公的・私的年金の支払いは滞るでしょうし、公務員を含めた給与支払いもできなくなる可能性が高いのです。現在の一見安定した生活はひとえに債券発行ができているからであり、一定規模の円安とそれによる物価上昇が起これば、一気に行き詰るのです。
ではどうしたらいいか。基本的に債券発行をしなければいいわけで、税収や手持ち資金でやっていくことです。より短期的に重要なことは輸入依存度を下げることで、化石燃料や食料の国産化が必要です。短期的に必要だとは、税金を一気にあげて歳入を確保するよりも、輸入依存度を下げることで、急激な円安を抑える方が簡単であるはずだからです。もう一つは、現状の産業構造からの転換です。現状の人口構成に合った産業構造への転換が必要で、単に生産性を上げるのではなく、高齢者が無理なく十分に働けるような産業構造が必要なのです。
本来債券発行が合理的な場合とは、債券発行でより経済規模が拡大したり、産業構造が合理化され、結果的に、その債券発行で得られた利益によって十分に償還が出来る状況を言うはずです。しかし、現状は、単に借金依存度が深刻化しているだけですから、急に債券発行を止めれば、その結果、一気に経済が行き詰ってしまいます。本格的な円安が始まる前に、何としても輸入依存度が高い物品について、国産化を高める必要があるのです。そのために、多分一番効果的であるのが、地熱開発です。発電だけでなく熱供給ができるため、積雪地方など今まで冬場の農業が出来なかった地域で施設農業が可能になるからです。
なお、輸入されている電気機器:11兆5千億円とか、輸送用機器:3兆円の中身はスマートフォンや外車であり、主に買い替え需要に対応しているものですから、買い替えをしなければそれで生活に大きな悪影響を与えるわけではありません。問題は、食料品:6兆7千億円、原料品:5兆6千億円、鉱物性燃料:27兆7千億円、化学製品:6兆9千億円の合計45兆8千億円の部分です。2011年の円高局面の1ドル80円の水準から見ると、現状の1ドル120円は50%もの円安です。現状の1ドル120円の為替が、1ドル200円になるだけでも、約67%の円安で、45兆8千億円は76兆3千億円程度に跳ね上がります。2014年のGDPは500兆円程度ですからはっきりした計算は自分にはできませんが、物価上昇率5%にはなるでしょう。5%の物価高騰は1970年代の狂乱物価と言われた時期と同規模です。あのころは物価と共に給与も上がったのですが、急激な円安による悪性インフレ下では給与を増やす余裕はなく、日本経済は一気に困窮化することになります。インフレ時は値上がりすることが普通の株も円安が進行し、日本経済全体が悪化する状況では値下がりします。
具体的な生活状況を想像してみましょう。
1.生活物資全般が統制され、基本的に配給制になるはずです。レジャー産業はそのためほぼ壊滅になり、観光地は外国人以外ほとんど人が来なくなるはずです。
2.配給制になれば当然闇市場が出てきます。ガソリン1リットル500円とか、砂糖1キロ千円、鶏肉1キロ2千円といった感じで裏取引されるようになるでしょう。
3.都市部では失業者があふれ、一方では介護が必要な老人が施設から強制的に退去を迫られ、行き場のない人々が路上に放置されるという状況がかなり普遍化するはずです。当然、一方でボランティアが組織され、それなりに対処がされるでしょうが、生活物資全般が不足する中ではかなりな困難があるはずです。
4.新聞の購読はどんどんと少なくなり、テレビもコマーシャルが出ないので、マスコミ各社も当然経営に行き詰るでしょう。
原発再稼働は問題解決にはなりません。破局を多少先延ばしするという効果があるだけであり、再稼働した結果の悪影響の方が大きいのです。原発によって経済が上向くというのであれば、大都市近郊に原発を造ればいいのです。40年を超えて原発が稼働してきましたが、その間財政赤字は拡大するばかりでした。原発立地自治体もそれによって社会が原発立地をしていない地域よりも豊かになったという事は全くなく、歪んだ経済構造が定着しただけです。1万キロワット程度の小規模な地熱開発を全国各地で進め、高度化した機械製品の生産と、適度な労働で生産が可能な施設農業へと産業構造を転換することが必要なのです。現状の大都市のような過密な街並みを取り壊し、都市機能の分散化を進め、人口規模5万人から10万人程度の都市を全国展開するのが良いはずです。
原発依存を進めるために今の経済構造はできてきているわけです。一時期盛んに設置された太陽熱温水器は最近ほとんど新規設置が進まない様子ですが、太陽熱温水器はソーラー発電よりもよっぽどエネルギー節減効果があります。コンビニの24時間営業も大都市以外は必要がないはずで、午前7時から午後11時という営業時間で十分すぎるはずです。昭和の40年代、商店の多くは朝10時開店、午後5時閉店が普通でした。週に一度はお休みがあったのです。
戦後の日本経済はある意味原発建設とそれへの依存を進めるために発展してきたと言えると思います。そして、全国的な立地がほぼ決まった1985年以降はどんどんとおかしくなってしまったのです。再び原発依存を強めることは、本格的な原発事故を招き入れ、それこそ、世界の核廃棄物処分場に日本の国土をしてしまうでしょう。今こそ、もともと日本にある地熱資源を生かして、エネルギー自立を果たすべきだと思います。
2015年2月13日08時40分 武田信弘
- 上の記事に一部間違いがあります。狂乱物価は10%から20%のインフレでした。 taked4700 2015/2/13 19:39:42
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