http://www.asyura2.com/15/hasan93/msg/558.html
Tweet |
「多様な働き方」を認める企業しか、もはや成長は見込めない
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/42103
2015年02月13日(金) 長谷川 幸洋「ニュースの深層」 現代ビジネス
なぜ、いま「多様な働き方」が求められているのか。根本的な理由は企業が多様な働き方を認めないと、もはや成長を見込めないからだ。規制改革会議が2月12日午後、霞が関で開いた公開ディスカッションで、そんな実態があきらかになった。
■阪神・大震災から再建した製薬会社のケース
私は規制改革会議委員の1人として司会を務めたが、もっとも印象に残ったのは万協製薬の松浦信男代表取締役社長のプレゼンテーションである。万協製薬の経験は日本企業全般に通じる部分がある。その核心をお伝えしよう。
万協製薬はもともと兵庫県神戸市長田区に本社と工場があったが、1995年1月17日の阪神・淡路大震災で被災し全壊した。翌年、三重県多気郡多気町に移転し、松浦社長の下でゼロから会社を再建した。
「自分がやりたくないことは社員にもさせたくなかった」と語る松浦社長は「社員が生き生きと働ける会社」を目指して、残業時間の削減や有給休暇取得率の向上、職場ローテーション、社員同士の擬似ファミリー制度などユニークな試みと課題に次々と取り組んでいく。
社員同士の食事会や旅行に会社が数万円の補助金を出す擬似ファミリー制度は、社歴が浅い社員の高い離職率を「なんとか低下させたい」という思いで導入した。老若男女、職種も違う4〜5人で班を構成し、みんなで飲んだり遊んだりする。それで仕事もプライベートの悩みも相談できるようにした。
その結果、社員同士のコミュニケーションが高まって2007年に18.3%だった離職率は5年後の12年に4.7%にまで減少した。そんな活動が認められて、14年秋には「子どもと家族・若者応援団表彰」の内閣総理大臣賞を受賞した。
松浦社長が言う。
「移転した多気町には薬や化粧品の仕事に従事した人は1人もいませんでした。田舎の中小企業には性別、年齢、学歴など、いっさい選択できる余裕が初めからなかった。だからこそ『どうすれば社員が楽しく仕事に取り組めるか』を考えた。うちはパートも正社員も区別はありません」
プレゼン資料には、人口15000人余りの多気郡について「みなさんが想像する田舎よりも、もっとすごい田舎です!」とある。被災した会社を見知らぬ土地でゼロから再建するには、初めから社員に「多様な働き方」を認める以外になかったのだ。
「1流の人間が集まって1流の仕事をするのは当たり前。2流の人間が1流の仕事をしたとき『ドラマ』が生まれるのです」。たしかにそうだ。優秀な人材がそろった環境でよりどりみどりなら、それはいい会社ができるだろう。そうではなく「なんとか、みんなが楽しく仕事を」と考えざるをえなかった。制約のある環境だったからこそ、工夫が生まれる素地があった。
■制約のある働き手が、どう生き生きと働くか
多様な働き方を認めざるをえないのは、実は万協製薬に限らない。本質的には、いまの日本で普通の企業も事情は同じである。少子高齢化が進む中、高齢者や育児中の女性など労働時間に制約がある働き手が増えているからだ。
たとえば「非労働力人口のうち就業を希望していながら求職活動をしない理由」をみると、女性は総数293万人のうち「出産・育児」が35%を占め、次いで「介護・看護」が7%である。
男性は113万人のうち「適当な仕事がありそうにない」が34%、「介護・看護」が7%に上っている(総務省労働力調査、2014年7〜9月)。
制約のある働き手が、どう生き生きと働くか。そこに企業の未来がかかっている。いま大企業も同じような問題意識から、さまざまな取り組みを始めている。
経団連の椋田哲史専務理事は2つの事例を紹介した。
1つはメーカーだ。経営トップの号令の下、仕事量を減らす業務と情報の改革とともに働き方改革に取り組んだ。原則として19時以降の残業を禁止し、実現できているかどうかを部長の評価にも取り込んだ。その結果、わずか3ヵ月で平均月30時間の残業が15時間に半減したという。
もう1例は商社である。こちらも22時以降の残業を禁止し、代わりに早朝出勤を奨励し、早朝出社する社員には無料で朝食を提供した。早朝時間帯には従来と同じ時間外手当を支給しているという。こちらもトップのリーダーシップが大きい。
こうした働き方改革の取り組みが示しているのは「制約のある働き手が普通になる中、働き方を多様化しないと会社が立ちいかない。逆に、働き方を多様化すれば大きなチャンスが生まれる」という現実である。
介護や子育てなど会社以外で働き手の負担が増す中、そうした変化に順応した企業こそが生き残る。逆にいつまでも「残業、転勤に制約のない男性正社員モデル」にしがみつく企業は働き手が希少になっていくから、人件費も割高にならざるをえない。結果として競争に負けていく。
■効率のいい仕事をすると、かえって評価されない
一方で、働き方改革を進めるような企業はまだ少数派である点も認めざるをえない。日本労働組合総連合会(連合)の神津里季生事務局長は「正社員の人員が絞り込まれる中、過重な負担を抱えて長時間労働を強いられ、毎年100人以上が過労死している」と訴えた。
悲惨な正社員の裏側では「雇用労働者の3人に1人が非正規労働者で、その6割超が年収200万円以下」という実態がある。まさに「セーフフティネットからこぼれ落ちている」層だ。だから「経営のマネジメントと働く制度の両面から改革が必要」と強調した。
労働問題に詳しい中野麻美弁護士は「日本の企業には隙間の仕事がたくさんある。それが長時間労働に巻き込まれる原因」と指摘した。本来は自分の仕事かどうか分からないのに、つい付き合わざるをえない。これはマネジメント改革の必要性を裏付けている。
半面「効率のいい仕事をすると、かえって評価されない場合もある」とも指摘した。これには思わず「そのとおりだ」と頷いてしまった。ダラダラ仕事をしていると、本当は能力が劣るか仕事の仕方が悪いだけなのに「あいつは真面目だ」などと評価されたりする。あなたの会社にもあるのではないか。
多様な働き方は、いまや働き手側の選択の問題ではない。働き手は否が応でも多様に働かざるをえないのだ。そうであれば、企業もそんな現実を直視すべきである。企業の都合で働き手を選別しようとすればするほど、狭い労働市場から不利な調達をせざるをえなくなる。それでは賢い経営とはいえない。
多様な働き方の導入に柔軟に取り組む企業こそが生産性を向上させ、ひいては日本再生の鍵を握る。そう実感させた公開討論だった。
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。