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物流崩壊の危機?経済全体に大打撃も 深刻なドライバー不足、救世主に浮上の貨物列車
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150213-00010001-bjournal-bus_all
Business Journal 2月13日(金)6時1分配信
インターネット通信販売がすっかり定着した昨今、物流業者の重要性は高まっているが、その一方で、物流の現場ではトラックドライバー不足が深刻化している。全日本トラック協会が公表しているデータによると、トラックドライバーの平均年齢は43.1歳、勤続年数は12年。年齢の割に経験年数は短い。
「これまで、トラックドライバーの労働環境は、お世辞にもいいとはいえませんでした。長時間労働は当たり前、それでいて給料は少なく、特に長距離トラックの運転手は家を留守にしがちなので、休日に家族と過ごす時間が取りにくいなど敬遠される要素が多いのです。そうした理由から、ドライバーを辞めてしまう人も少なくありません。さらにドライバーになる若者も少ないので、かなり苦しい状況です」(トラック業界関係者)
ヤマト運輸や佐川急便などの大手宅配事業者は、そうした事態を深刻に受け止めており、ドライバー確保に躍起になっている。佐川急便は窮余の策として主婦1万人をパート配達員として採用。パート主婦が自宅付近の配達を担当する。主婦たちは自転車で配達するが、その範囲はトラックに比べれば狭い。それでもトラックドライバーの負担の軽減につながっているという。
●貨物列車への回帰
そんな中、物流業界の救世主として注目されているのが貨物列車だ。貨物列車は1編成でトラック65台分もの荷物を運ぶことができる。
高度経済成長期、日本の道路が整備されると、物流は小口輸送が主流となった。トラック輸送のメリットは、玄関から玄関まで運べるなど小回りが利く点にある。トラック輸送が主流になると、鉄道貨物は衰退した。1987年の国鉄分割民営化時には、まだ貨物輸送量は5627万トン、運輸収入は1568億円あったが、その後減少は止まらず、2012年の貨物輸送量は2999万トン、運輸収支は1124億円と、ピーク時に比べて6割にまで落ち込んでいる。
北海道旅客鉄道、東日本旅客鉄道、東海旅客鉄道、西日本旅客鉄道、四国旅客鉄道、九州旅客鉄道、日本貨物鉄道(JR貨物)から成る JRの線路は日本全国に敷設されているが、JR貨物は旅客列車が走っていない時間帯に運行しなければならない。現在の物流業界は受け取り客が時間を指定できるようになっているため、鉄道貨物は時間通りに集荷し、届けるといったニーズに対応しづらい。そうした時代に合わない点も、鉄道貨物の衰退に拍車をかけた。
JR貨物にとって不運だったのは、国鉄時代に全国の隅々まで敷設されていた線路が、赤字を名目に次々に廃止されたことだ。加えて、都心部にあった汐留貨物駅、飯田町駅といった貨物ターミナル駅が廃止されたことも大きかった。
05年頃、逆境にあえぐJR貨物の巻き返しが始まった。地球温暖化が社会問題として浮上し、トラック輸送より二酸化炭素排出量が少ない鉄道貨物や船舶輸送にスポットライトが当たったことが要因だった。二酸化炭素の削減を大義名分として、国土交通省や環境省は“モーダルシフト”(輸送手段の転換)を推進し、運送事業者もすぐに反応した。04年には佐川急便が世界初の貨物電車、スーパーレールカーゴの運行を開始している。
「スーパーレールカーゴは二酸化炭素削減が叫ばれる中、環境問題を考えて運行を始めました。今般のトラック業界の人手不足まで想定していたわけではなかったのですが、結果的には人手不足問題の解消にも一役買っています」(佐川急便)
佐川に刺激されるかたちで、06年にはトヨタ自動車が愛知県の工場からトヨタ自動車東日本岩手工場がある岩手県まで自動車部品を輸送する貨物列車、トヨタロングパスエクスプレスの運行を開始した。
日本を代表する大企業であるトヨタが部品輸送に貨物列車を選択したことは、物流業界の大きなターニングポイントとなった。二酸化炭素削減から始まった鉄道貨物への回帰は、大きな副産物をもたらしたのである。
「原油高は事業者の経営に大きく響くのです。トラックから鉄道貨物へのシフトには、いわば原油価格に左右されない、物流を安定させるという意図もありました」(国土交通省幹部)
現在、原油価格が下落しているのでトラックの燃料費はあまり心配されていないが、当時はシェール革命前で中東情勢も不安定だった。石油価格の影響を受けにくい鉄道貨物へシフトすることは、リスクヘッジの観点からも推奨された。
●JR貨物の輸送力増強策
そうした要因のほかに、JR貨物の経営努力も見逃せない。鉄道貨物不要論が広がっていた92年前後から、JR貨物は輸送力増強策に着手している。貨物列車は編成を長くすれば大量輸送ができるようになり、輸送効率は高まる。長大編成を可能にするには荷降ろしのできるコンテナホームの延伸や、旅客列車と入れ違いができる待避線の増設をしなければならない。JR貨物はこれら増強策を一気に進め、26両編成の貨物列車の運行を可能にした。
「JR貨物では荷物を積み込むコンテナの大型化も進めて、現在は31フィートコンテナが主流になっています。31フィートコンテナ1台は10トントラックに相当する積載量です。また、コンテナ化によって荷物を積み替える手間や時間が短縮されるようになりました。こうした時間短縮効果も、鉄道貨物が見直されるポイントだと思います」(JR貨物)
かねてより、JR貨物はIT化にも取り組んでいた。GPSとICタグにより荷物を集中管理できるシステムを構築し、輸送の合理化・迅速化を達成した。
メーカーや小売業者にも、トラックドライバー不足は深刻に受け止められている。イオングループは14年にイオン鉄道輸送研究会を発足させ、国土交通省やJR貨物と連携。自らが音頭を取って、ネスレ日本・アサヒビール・花王といったメーカーと共同で鉄道貨物の運行を始めた。貨物列車を共同で運行することによって、輸送効率が高まるだけではなく、輸送費の低減化も図った。
●物流の停滞は、ネット通販も脅かす
モーダルシフトは確実に広まりつつあるが、他方でクリアしなければならない問題も残っている。先にも触れたように、国鉄時代は全国隅々まで線路が行き渡っていたものの、民営化後のJRは次々に赤字路線を廃止したことが、鉄道貨物輸送にとって大きなハンディキャップになっているのだ。
近年は新幹線が開業すると在来線は第3セクターに移管される。第3セクターに移管された路線に対して、JR貨物が支払う使用料は以前よりも高くなる。それは鉄道貨物の輸送費となって、荷主に跳ね返る。せっかく大量輸送で低コスト化を図っているのに、これでは鉄道貨物のメリットを生かせない。
15年3月には北陸新幹線が金沢駅まで開業し、並行在来線はしなの鉄道(長野県)・えちごトキめき鉄道(新潟県)・あいの風とやま鉄道(富山県)・IRいしかわ鉄道(石川県)に分離する。それらも鉄道貨物に影響があるのではないかと心配されている。
「現状、線路使用料が高くなることは決まっていません。また、ダイヤ改正で鉄道貨物が使いづらくなるような懸念もありません」(JR貨物)
新幹線が全国に広がっていけば、不要の烙印を押されて廃線になる在来線が出てくるだろう。特に危険視されているのが、北海道新幹線開業による北海道内の在来線だ。北海道新幹線が札幌駅まで開業すれば、並行在来線は軒並み赤字に転落すると試算されている。そうなれば在来線の廃止は免れない。在来線が廃線になれば、北海道からの食料品・日用品の物流はトラックに依存するしかない。しかし、そのトラック輸送が低迷し続ければ、北海道の物流は止まってしまうおそれがある。
こうして危機に直面し、運送事業者や物流業者、メーカーは必死に物流対策を講じているが、それらも抜本的な解決には至っていない。ある業界関係者は言う。
「ドライバー不足や高齢化は物流業界全体の問題で、業界としてもモーダルシフトを進めようというムードにはなっています。しかし、原油やセメントといったBtoB(企業から企業)輸送と違い、食料品・日用品のBtoC(企業から個人客)輸送はどうしてもトラック輸送に頼らざるを得ません。鉄道貨物や海運に光が当たるのはいいことだと思いますが、モーダルシフトへの転換にも限界があります。ドライバー問題は業界全体が打開策を模索している状態です」
いまや私たちの生活に欠かせないネット通販の市場規模は12兆円に迫り、20年までに20兆円を突破すると経済産業省は試算している。それらを下支えする物流業者の危機はアマゾンや楽天をはじめとするネット通販業者にも直接打撃を与え、購入者の手元に商品を届けるトラックが走らなければネット通販の成長も止まる。物流業界の崩壊は、決して物流業界だけの話ではない。日本経済も大きな損失を被り、私たちの生活も立ち行かなくなる可能性があるのだ。
小川裕夫/フリーランスライター
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