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存在しない欧州危機、なぜあおられる?ギリシャのユーロ離脱はあり得ない 対立は見せかけ
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150213-00010003-bjournal-bus_all
Business Journal 2月13日(金)6時1分配信
1月25日にギリシャ総選挙で急進左派連合(SYRIZA)が勝利したことを受け、大手マスコミは欧州危機をあおり始めた。南欧では景気回復がもたつき、ユーロ圏全体が停滞ムードを続けている。債務危機の震源地であるギリシャ政局の変化が、同国のユーロ離脱につながりかねない展開に発展している。だが、市場関係者の多くは「ギリシャとユーロ圏の離脱をめぐる対立はプロレスみたいなもの」と楽観視している。
「壊滅的な緊縮は終わった」――ギリシャ総選挙で勝利した左派連合のチプラス党首は投開票の結果を受け、公約である緊縮策の見直しを高らかに宣言。マスコミ各社は、ギリシャの債務削減とユーロ離脱をめぐる駆け引きが本番を迎えると報じた。
実際、ギリシャは2月末に計2400億ユーロ(約32兆円)の融資支援策が終了する。「3月危機説」も流れているほどだ。3月危機はしのぐとしても、夏には欧州中央銀行(ECB)への多額の返済が待っており、青息吐息は当面続く。
新政権は新たな金融支援策を引き出す必要があるが、交渉相手となる国際通貨基金(IMF)、欧州委員会、ECBの「トロイカ」と現時点での主張の隔たりは大きい。
両者は選挙前から、舌戦を繰り広げてきた。チプラス氏は「ギリシャへの財政の水責めをやめるべきだ」と批判。最低賃金の引き上げなど緊縮策緩和と債務減免を主張していた。
一方、ギリシャに対して強硬姿勢を崩さないドイツのショイブレ財務相は「ギリシャ人の問題の原因は欧州連合(EU)でもなければ欧州委員会でもなく、独政府でもない。過去のあやまちのせいだ」と応酬。選挙直後の1月26日にユーロ圏は財務相会合を開き、ギリシャに対して債務削減を認めない方針を改めて示した。翌27日にはユーロ圏のギリシャ支援への不透明感が高まり、欧州株式市場でギリシャの銀行株が大きく下落。欧州危機再燃の構図が一見鮮明になった格好だ。
●ギリシャのユーロ離脱は「ない」
とはいえ、今後も金融市場が動揺する場面は散見されるだろうが、交渉は最終的には軟着陸する可能性が高い。チプラス氏は緊縮策の撤回を求めながらもユーロ残留を繰り返し主張する。ユーロ圏側も債務削減に慎重なドイツですら「どんなかたちの離脱も認めない」(ショイブレ財務相)とギリシャのユーロ離脱を望んでいない。
激しい舌戦を表面上は繰り広げているが、ギリシャは離脱する気もなければ、ユーロ圏側もさせる気はないのが実情だ。金融市場分析を専門にするエコノミストは次のように指摘する。
「選挙前からユーロ残留は既定路線で、激しい応酬は台本ありのプロレスのようなもの。それでも『ユーロ離脱』の喧噪がやまないのは『トロイカ』側も一枚岩ではなく、政治的思惑が錯綜しているのだろう。あとは落としどころ(条件)をどうするか」
ユーロ圏はECBが量的緩和に踏み切ったことで、財政規律ではなく、成長路線の道を選択した。市場もギリシャを孤立させるのではなく、協調路線で復活にかけるだろうとの見方が支配的だ。現実的な着地点としては、ギリシャに一定期間の猶予を与え、新政権の財政再建策を見守る可能性が高い。
交渉がまとまれば、7月以降ギリシャ国債がECBの買い入れ対象になる。債務減免や支払い長期化を選択した場合の枠組みなど懸念はいくつかあるが、欧州経済が混迷から一歩抜け出すことになる。マーケットは選挙前から左派陣営の勝利を織り込み済み。選挙後に対円、対ドルでユーロは急落したが、東京株式市場ではユーロ安円高進行で輸出企業の採算が悪化するとの悲観論は見受けられなかった。
ユーロ圏は11年の欧州債務危機を受け、圏内金融システムの整備を進めた。そのため、ギリシャが危機に陥っても影響は軽微との見方すらある。ソフトランディングが有力視される中、極端なユーロ安円高の局面は想定しにくい。日本の大手マスコミの喧噪をよそに、欧州危機は「杞憂」に終わるだろう。
(文=黒羽米雄/金融ジャーナリスト)
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