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任天堂、もう沈みゆくしか道はない スマホゲーム制覇戦略を採用できない構造的欠陥
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150212-00010002-bjournal-bus_all
Business Journal 2月12日(木)6時0分配信
任天堂が1月28日に2014年度第3四半期(4-12月)の決算を発表した。営業利益が316億円と黒字を計上したのは、実に4年ぶりのことだという。しかし、同社の事業が実質的に改善したというわけではない。というのは、今期の損益改善は、13年度に据え置き型ゲーム機「Wii U」の在庫損を一括処理した恩恵によるところが大きいからである。
14年度(15年3月期)通期決算予想としては、営業利益を400億円程度の見込みから200億円へと下方修正したが、果たして通期での黒字達成は可能なのだろうか。
今回の決算発表を受けて、年末商戦での不調などと関連して任天堂ゲーム機個別製品の競争力分析が数多くなされているが、同社の不調は構造的なものであり、経営者が変わらない限り状況は変えられないと考えられる。また、経営者が変わったとしても、実は同社の構造的問題から状況改善が難しいといえる。
11年に任天堂が上場後初の赤字決算見通しを発表した際、筆者はブログ記事『任天堂 岩田聡社長 潮目の会見』(11年10月28日)で 「大きな時代の、終わりの始まり」「任天堂のような専用ゲーム機の時代は終わりはじめた、と思う。時代はスマートフォン(スマホ)でのゲーム提供となっていくだろう」と分析した。専用ゲーム機とスマホゲームの関係は、米ハーバードビジネススクール元教授クレイトン・クリステンセン氏の著書『イノベーションのジレンマ』に載るべき典型的な事例なのだ。
任天堂は専用ゲーム機というセグメントの中で、ひたすら勝者になるべく、使い勝手や魅力的なゲームソフトの開発、見やすい画面などの改良に励んできた。つまり同書でいう「持続的イノベーション」(よりよい製品を既存市場にもたらす)だ。ここでの競合はソニーのプレイステーションや以前のセガのゲーム機などだった。
ところが、各社が既存市場で「持続的イノベーション」でしのぎを削っている間に、消費者をスマホ向けゲームに奪われていったのである。同書で、スマホ向けゲームは「ローエンド型破壊的イノベーション」とされる。任天堂の専用機ほどの使い勝手はないけれど、価格は安く手軽に使える。「持続的イノベーション」に励んでいるそのセグメントでの勝者、あるいは有力者は、「ローエンド型セグメント」には目をくれようともしない。実際、1月28日の会見で任天堂の岩田聡社長は、「スマートデバイスには物理的なボタンがない。『スーパーマリオ』などを楽しく遊べない」と語っている。
●組織全体に刷り込まれた「価値基準」
任天堂は、スマホゲームに参入できる、そして制覇できるすべての経営資源を有しているにもかかわらず、なぜ参入しないのか。
岩田社長の言動は「成功の復讐」的に解説することもできるが、「イノベーションのジレンマ」的には同社の組織全体に刷り込まれた「価値基準」がローエンドへの参入意思決定を阻止していると説明できる。デジタル・カメラを発明したのはコダックだったが、銀塩フィルムのトップメーカーだったコダックはデジタル・カメラに力を入れることなく倒産してしまったのと同じだ。
このような構造の中で、任天堂が選択できる企業戦略としてはM&Aである。同社の財務諸表を見ると、現金と有価証券でなんと約9000億円も保有している。これを有効活用して、世界中のゲーム開発会社や関連するIT企業を早期に10社以上買収することだ。そして同社に統合することなく、それらの会社を活性化させてローエンド・セグメントを席巻する。人事交流は行わないほうがいい。任天堂本社の現在の「持続的イノベーション」のモメンタム(惰性)が、それらの「破壊的イノベーション」を担当すべき企業の風土を阻害してしまうからだ。
だが、このような戦略的な打開策を任天堂は採用することができない。なぜなら、岩田社長自身が現在の同社の「価値基準」の創出者であり、専用ゲーム機ビジネスのアイコンだからだ。経営者が替わらなければ新しい戦略を選択できない典型的な事例でもある。「大きな時代の終わりは加速している」のである。
(文=山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役)
山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役
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