http://www.asyura2.com/15/hasan93/msg/525.html
Tweet |
「外務省HP」-「我が国の取組:TPP交渉参加に向けた関係国との協議等」より
TPP、合意目前か 日本はコメ、米国は自動車で大幅譲歩が焦点 合意への5つの鍵を検証
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150211-00010002-bjournal-bus_all
Business Journal 2月11日(水)6時1分配信
アジア太平洋地域の自由貿易を高らかに謳い上げる合意ができるのか、それとも先の見えない漂流の道をたどるのか――。あのTPP(環太平洋経済連携協定)交渉が、ついに大詰めを迎えている。
新聞報道によると、先週金曜日(6日)17時半過ぎのこと。首相官邸を訪ねたロバート・ルービン元米財務長官は、安倍晋三首相に「劇的に機運が変わった。オバマ米大統領も一生懸命やろうとしている」と強調し、全体合意の前提となる日米2国間協議の合意に向けた首相の政治的決断を懸命に促したという。
元来、TPPは2006年5月に発効したシンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの4カ国(P4)の経済連携協定だ。同協定には、加盟国間のすべての関税の90%を撤廃することなど自由貿易を拡大する意欲的な規定が含まれている。日本は歴代政権の優柔不断と通商官僚のサボタージュが重なり、アメリカ、オーストラリア、マレーシア、ベトナム、ペルーが加わって10年3月にスタートした「拡大交渉」に乗り遅れた。交渉への正式な参加が初めて許されたのは13年7月のこと。参加が遅れた分だけ、不利な交渉を余儀なくされてきたのは周知の事実だが、当初からそれぞれの国内の反対派をおもんぱかって反目を続けてきた日米の2国間協議が、ここへきて大きく進展し始めたという。
とはいえ、高まる期待とは裏腹に、今秋までに合意できなければ、米国で来年の大統領選挙に向けた動きが活発化して協定そのものが宙に浮いてしまうのは確実だ。今、参加12カ国が合意するには、いったい何が必要なのか。今回は、大きな鍵となっている5つの争点を整理しておこう。
●牛豚肉の関税を引き下げか
よく知られているように、日本は拡大交渉への参加に当たって、農業分野を聖域としていた。同分野でこれまで通りの保護貿易を温存することを「国益を守る」と称し、それを条件に反対派を抑えて交渉に臨んできたのだ。このため、米国は対抗上、弱体化した「デトロイト・スリー」を保護するために自動車分野を聖域とすると主張し、日米2国間協議は最初から険悪なムードの中でスタートしたのだった。
ところが、ここへきて両分野で大きな進展があったと米国側が高く評価しているという。いずれの分野でも関係者は「交渉内容は言えない」と固く口を閉ざしているが、30年以上にわたって日米貿易摩擦の消えることのない火種だった牛肉分野で、日本は現行38.5%の関税を今後十数年かけて9%まで引き下げる提案をしている模様だ。
これと同様に、懸案だった豚肉では、全米豚肉生産者協議会(NPPC)が1月26日に米議会に送った書簡で「重要な進展があった」と述べるほどの提案を日本がしているらしい。報道によると、1キログラムにつき最大482円を課す差額関税制度を50円の従量税に切り替える案が話し合われている。
この2品目が大きく進展した結果、農業分野で日本の守るべき問題として最後まで残ったのは、ただひとつ。コメの問題だけとなっているという。コメについては、各国に割り当てる低関税の輸入枠(77万トン)に加えて、5万トンの米国産輸入特別枠設置を検討している模様だ。これがTPP交渉を合意に導くための第一の鍵で、安倍首相が政治決断を迫られる問題となっている。
●最後の焦点は日本車と農産物
日本側の決断と表裏一体の関係になっているのが、オバマ大統領と米議会が決断を求められている2番目と3番目の鍵だ。このうち2番目の鍵は、農業を聖域と主張していた日本への対抗上、米国が聖域としていた自動車の関税を引き下げられるかどうかだ。現在、米国は日本車(完成車)に2.5%の関税をかけているほか、部品にはより高率の関税をかけている。そして、米国は日本車の関税撤廃を、日本が関税撤廃・引き下げに最も時間をかける農産品に合わせて行う腹案を持っているとされている。米国内の根強い反発を抑えて、こうした方針をオバマ大統領が決定できるかどうかが問われている。
さらに、3番目の鍵が、TPPを早期にまとめるため米大統領に強力な通商交渉権限を委任する大統領貿易促進権限(TPA)法案をめぐる米議会の動きだ。昨年の中間選挙の大勝利で上下両院を支配することになった共和党は、自由貿易の促進が伝統的な党の主張だけに、もともと比較的柔軟とされている。加えて、強硬な反対派とみられていた前述のNPPCが日本の対応を評価して態度を一変、「法案成立に向けて、業界を挙げ、全力で議会に協力していく」と語り、ワシントンでは一気に成立期待が高まっていると聞く。
4番目と5番目として残る2つの鍵は、日米両国とマレーシア、ベトナムなどの新興国の間で大きな溝となっている知的財産権の保護と国有企業の扱いだ。特に知財では、著作権の保護期間を作者の死後70年間とする方向で調整が始まっているものの、医薬品開発データの保護期間では日米両国と新興国のにらみ合いが続いているとみられる。また、国有企業改革では、改革の例外としてよい企業のリスト作成をめぐり、マレーシアやベトナムの抵抗が根強く、作業が大きく遅れている模様だ。気掛かりなのは、米国側の交渉団が、知財や国営企業をめぐる争点で、自国企業の利益ばかりを代弁していると報じられている点だろう。
●TPPの意義とは
ここで想起したいのが、過去の日米経済摩擦をめぐる交渉では、ほとんどの場合、解決策を日本側が策定して、米国側の理解を得るかたちで決着させるケースが多かったことだ。今回のような局面では、日本が当事者である新興国に代わって新興国がとるべき措置の具体策を立案し、それらを米国と新興国の双方に提案して合意に導くような役割を果たす必要があるのかもしれない。
TPPは交渉参加12カ国の自由貿易を進展させるものだが、目的はそれにとどまらない。アジア太平洋諸国の自由貿易をめぐるルールの国際標準をつくることが重要なのだ。将来、巨大市場を持つ中国をTPPに取り込んで、悪名高い外資規制など中国独自の慣習を改めさせたり、中国が主導して自国の常識を押し付けようとしている経済連携協定のあり方に影響を及ぼすことができるからである。WTO(世界貿易機関)加盟交渉の際に、中国の取り込みを焦るあまり、随所に中国優遇策を残してしまったことへの日米両国の反省も生かさなければならないのだ。もちろん、ブロック経済に代表される保護主義の台頭が太平洋戦争につながったという歴史的教訓も忘れてはならない。各地できな臭さを増す安全保障の担保として、TPPのような自由貿易の維持・拡大の試みは重要だ。
昨年末から、中国が積極的に外資の導入に努める姿勢に転じつつあるという。ギリシャ危機再燃を発端とした欧州経済の混乱や、FRB(米連邦準備理事会)の利上げに伴う国際通貨の動揺を懸念しての措置らしい。日本は雪解けムードを経済にとどめず、領土問題で自制を促す材料にもしたいところだ。
この機を逃さず、TPPを国際標準になり得るものとして議論を深めて、12カ国の最終合意を実現してほしいものである。
(文=町田徹/経済ジャーナリスト)
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。