04. 2015年2月10日 17:01:16
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過去を蒸し返すのは、破綻国家の常套手段だが、戦後賠償問題は日本にとっても他人事ではないな今後も、統一朝鮮や中国が請求してくるリスクは大きい http://jp.wsj.com/articles/SB11815783148186973545804580452903571376626 ドイツはギリシャに戦争賠償金を払うべきなのか By ALEN MATTICH 2015 年 2 月 10 日 15:11 JST ギリシャのチプラス首相は8日、ドイツは第2次世界大戦中の占領軍として発生させた債務をギリシャに返済すべきだとし、欧州に厄介ごとをぶちまけると脅した。同首相は国際債権団が課した緊縮策を撤回し、債務に関して新たな取り決めを求める議会演説の中で、「われわれの歴史的責務は占領融資と賠償金の支払いを請求することだ」と強調した。さまざまな法的理由、現実的理由からみて、賠償が認められる公算は極めて小さい。それにドイツはこれらの賠償を支払っているのではないだろうか(国民がそれを認識していないとしても)。読者の皆様は混乱したかもしれない。以下に疑問点とその答えを挙げてみたい。 1.第2次大戦のような災厄に対する賠償はどう算定するのか。 大戦中にドイツが破壊した全て(ナチスは約3500万人の死について責任があると推定されている)を払うとしたら、同国は何度も破綻することになる。ギリシャが第1に目指しているのは、大戦中にドイツに提供を強いられた信用の返済だ。これは基本的に、ドイツ中央銀行が発行した信用で「購入」されたギリシャの物資への支払いだ。ギリシャの急進左派連合(SYRIZA)政権は、ドイツのギリシャに対する借りは1500億ユーロ(約20兆円)に上ると主張しているが、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの経済歴史学者アルブレヒト・リッチュル氏が国内総生産(GDP)を用いた推定では、実際の数字は110億〜130億ユーロと、10分の1以下になる。 2.これはギリシャの債務を減らすのに十分なのか。 これは非常に大きな数字に聞こえるが、3000億ユーロを超えるギリシャの国家債務の文脈の中では小さい。本当の懸念は、ドイツがギリシャに支払えば、フランスなどもっと工業化された被占領国もドイツに同様の支払いを要求するのではないかということだ。これらの債務は2兆ユーロを超え、ドイツのGDPの70〜80%に達する。リッチュル氏は「欧州の債務危機を根絶」するには十分だが、ドイツ経済にとって大きな負担になると指摘する。 3.ギリシャには法的根拠があるのか。 おそらくないだろう。戦後欧州復興のために米政府が主導したマーシャル・プランの条項は賠償や過去の債務についての検討を先送りした。その後1990年、ソ連圏の崩壊を受けた東西ドイツ統一が実現した条約は第2次大戦の債務や賠償についての言及を慎重に除外し、ドイツの法的体制に関する限り、実質的に永久にこれを法的アジェンダから排除したのだ。 4.ギリシャに倫理上の根拠はあるのか。 あるだろう。戦争に関する倫理問題を考慮しないとしても、なぜギリシャは戦後ドイツの経済的軌跡の土台となった債務再編・免除と同じような恩恵を被るべきではないのか。SYRIZA政権はいみじくも、ドイツが1930年代に第1次世界大戦の債務でデフォルトになり、その後大部分が53年のロンドン協定で棒引きや非常に長期の債務に再編されたという事実を指摘している。 一部では、これはささいな問題で、ドイツの債務はGDPの数パーセントにすぎず、これに対してギリシャはGDPの175%もの債務の半分程度を免除するよう要求している、との指摘もある。しかし、リッチュル氏は、ロンドン協定の交渉担当者らはドイツの債務残高の価値を最小限に抑えるため可能なことは何でもしたと話した。同氏の概算では、ドイツは当時の西ドイツのGDPの約280%の債務を免除されたという。ドイツの債務負担をなくすことで、米国は実質的に欧州全域の経済協力を確保することができた。ドイツが債務免除の恩恵を被ることができたなら、なぜギリシャはできないのだろうか。 5.より良い方法はあるのか。 多くのエコノミストや政策担当者は、ギリシャが借りたもの全てを返済することはないとみている。返済を強制すれば、生産年齢人口の4分の1が失業状態という6年間にわたる大不況からの脱却にただでさえ苦労しているギリシャ経済で、潜在成長率を下回る成長と大量の人口流出が定着することになる。 急進左派連合(SYRIZA)政権はギリシャの債務を直ちに再編・免除するよう訴えているが、ギリシャの国外で政治的により好ましい結果は、一段の先送り(extend and pretend)だろう。つまり、ギリシャ債務は先延ばしされ、その条件は戦後のドイツ債務と同じくらい完全に消えるまで徐々にかつひそかに緩められる、というものだ。 要するにギリシャは、ドイツが大戦中に決して返済されることのない信用と引き替えにギリシャから物資を奪い取った、と訴えているのだ。これは(主客が転倒するが)ドイツが今訴えていることと同じだ。ギリシャはユーロ導入後の好況時にドイツ製の高級車や高級家庭用品をツケで購入したが、返済できなくなったのだ。 結果はプラスマイナスゼロだ。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのリッチュル氏は、基本的にギリシャ人は既にドイツ人から賠償を受け取ったと主張している。もちろんその数字は完全には一致しないが、それは誰が算定するかによって異なる。 6.ギリシャが今後返済しようとしないなら、今債務を帳消しにしてしまえばいいではないか。 リッチュル氏によると、返済不能が不可避であることを認めてギリシャ債務の元本を一挙に帳消しにした場合の問題は「銀行のバランスシートへの影響があること」だという。これはギリシャだけでなくドイツなどの債権国でも銀行危機を引き起こすことになる。第2次大戦の債務の個別的な無視は数十年にわたってドイツに役立った。ギリシャも同じことで恩恵を被るだろう。
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