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これは通貨戦争なのか
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/41979
2015年02月08日(日) ドクターZ 週刊現代 :現代ビジネス
ECB(欧州中央銀行)がとうとう量的緩和を実行した。世界を見渡せば、ユーロ圏だけではなく、カナダやインドが利下げに踏み切るなど、各国が金融緩和へと大きく舵を切る時代。一部からは通貨安を誘導する「通貨戦争」へ突入しつつあるとの声もあるが、この現状はすでに通貨戦争といえるのか。だとしたらそれは問題なのか。
一昨年、アベノミクスで日本が金融緩和をしたとき、主要8ヵ国(G8)首脳会議(サミット)で、イタリアのレッタ首相(当時)は「良きお手本として参考にしたい」、カナダのハーパー首相は「積極的な経済政策の成功を祈る」と評価したが、ドイツのメルケル首相は「通貨安競争に陥る危険もある」と批判的だった。
ところが、ドイツを含むユーロ圏もこのほど金融緩和に舵を切った。なぜユーロ圏が金融緩和に踏み切ったかといえば、デフレになりかけたからだ。
「通貨戦争」という言葉を使う人は例外なく、1930年代の大恐慌が各国の通貨切り下げ競争によって激化したという「神話」を信じているタイプの人といえる。
しかし、この「神話」は経済理論的に間違っていたことが研究で示されている。バリー・アイケングリーン・カリフォルニア大学教授とジェフリー・サックス・コロンビア大学教授による研究がそれ。戦間期における各国の為替切り下げ競争は、各国に好ましい結果をもたらしたことを実証的に示したのである。
というのも、為替レートはそれぞれの通貨の相対的な存在量で決まり、相対的に希少な通貨ほど為替レートが上昇する。そのため、金融緩和をすれば通貨安になる。ただし、各国が金融緩和競争状態に入れば通貨を切り下げようとしてもおのずと限界が出てくる。結果、通貨安競争は世界経済に壊滅的な打撃を与えるどころか、よい結果を生むということを示したのだ。
さらに、各国がインフレ目標を持っているときには、インフレ目標を超えて金融緩和をすることはない。そのため、通貨安競争といっても、各国のインフレ目標の上限までしか金融緩和しないという限界がある。
実際、金融緩和の先進国であるアメリカ、イギリス、日本は2%というインフレ目標がある。ユーロ圏は正式にはインフレ目標ではないが、2%になるまで金融緩和するという。カナダも2%のインフレ目標がある。インドは6%と高いが、インフレ目標を大きく超える金融緩和はない。
このようにインフレ目標が各国に浸透した現代では、各国が自国経済を一定のインフレ率と失業率に抑えようと経済運営をして、自ずと為替切り下げ競争にはならない。その結果、通貨切り下げは「近隣窮乏化」ではなく、実は各国経済がよくなるための「近隣富裕化」になって、世界経済全体のためになるわけだ。
各国が金融緩和に一斉に動くこの時代の本質とは何だろうか。
今の時代、モノを作る生産技術が大幅に進歩して、モノが安価に大量生産されるようになった。しかし、金融政策は旧時代のまま、各国の金融当局は過度なインフレ恐怖症状態にあった。このため、カネがモノに対して相対的に過小になって、逆にモノはカネに対して相対的に過大となる。このため、モノの価値が安くなって世界的にデフレ傾向が強まった。
各国の金融緩和には、こうした背景がある。多くなりすぎたモノと少なすぎたカネのバランスを保つために、カネを増やす金融緩和が求められているのだ。
『週刊現代』2015年2月14日
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