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三井住友銀行、認知症女性に執拗な投資勧誘で2千万円の損害与える 虚偽の社内資料作成
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150205-00010002-bjournal-bus_all
Business Journal 2月5日(木)6時1分配信
メガバンクの三井住友銀行が、あろうことか認知症の高齢女性にファンドを勧め、その結果2000万円近い損害を発生させたとして、全面敗訴判決が下った事件がある。実態は次の通り。
判決文や陳述書などの裁判資料によると、被害に遭ったのは大阪府在住の80代後半のAさん。Aさんの姪のBさんによると、Bさんが結婚した1994年頃からAさんは様子がおかしかったという。例えば、電話を切った直後にまたかけてきたりするようなことがあった。その後、Aさんの症状は徐々に悪化していき、2003年には軽度のアルツハイマー型認知症と診断され、「要支援」とする要介護認定を受けた。翌年には、さらに悪くなったため、ヘルパー2級の資格を持つBさんが週5日世話をするようになった。
その頃のAさんは、「友人のお金を立て替えた」として、当の友人は返したと主張しているのにしつこく請求してトラブルになったり、自宅でテレビを見る際に音量が大きすぎるとして隣から苦情が来たりしていた。
06年、症状は進行し、要介護度は「要介護2」に変更となった。その頃にBさんはAさんと養子縁組をして家族全員で同居し始めた。
事前にAさんの兄C氏が、「娘たちが引っ越してくる」と説明すると、「はい、わかりました」と言っていたAさんだが、いざ荷物が運ばれてくると非常に驚いて「こんなことは聞いていない」と叫んで怒り出した。
その後、1階にAさん、2階にBさんの家族が住むようになったが、Bさん家族がいない時にAさんは2階に上がり、冷蔵庫やパソコンのコードをすべて引き抜いて冷蔵庫内の食品が傷んだことが何度かあったため、2階を施錠するようになった。
誕生日に御馳走をつくって祝った際、Aさんはすごく喜んだが、食事が終わり食器を下げると、食べたことを忘れていた。正月にも、Aさんはおせち料理を喜んで食べたがBさんが片付けようとすると、「今年の正月は何も出なかった。つまらん」と言い出すようになった。ほかの食事のときも、食べ終わった直後に「食べていない」と叫び、Bさんが「大声を出さないで」と制すると、近所に聞こえるほどの大声で「助けて」とさらに叫んだこともあった。
また、尿や便の失禁をし、晩には奇声を上げ、何度も同じ質問をし、突然「何がなんだかわからない」と叫び、昼夜問わず机や自分の肩を激しく叩くなど、手に負えなくなることが頻発した。
そうした振る舞いをする一方、Aさんは子供の頃のことは鮮明に覚えているようで、兄とけんかしたことなどをよく話していたという。
●三井住友銀行に勧められるまま投資
そんなAさんは40代のときに夫を亡くし、それ以降は養母と2人暮らしをしていたが、60代のときに養母が死亡し、不動産を相続していた。その資産は1億円弱。資産を持ったAさんは当時、色々な勧誘を受けてお金を出して損をしたり、政党に寄付をさせられたりしていた。見かねたC氏は、90年代後半からAさんの財産を管理するようになった。
01年5月、AさんとC氏が預金をしていた三井住友銀行の行員が、「銀行の預金は利率が低いので、MMFのほうが有利だ」と投資を勧誘してきた。MMFとはマネーマネジメントファンドの略で、安全性の高い債券中心の投資信託だ。行員のしつこい勧誘に根負けし、C氏はAさんの分を含め契約した。
C氏は、投資の際の様子を次のように陳述している。
「妹は金融商品の複雑な話を理解できないので、行員は妹には直接勧誘せず、私に対して妹の取引を勧誘して、妹は私が判断した取引に書類上の署名・押印をするだけ」
「妹は、常に私が同席する場所で、行員が『Aさんの分もどうぞ』と勧誘し、私が従うことで取引させられた。妹の意思はまったく入っておらず、単に言われるままに必要書類に署名押印するだけ」
C氏は「大手銀行の行員が勧めてくれる商品なので、悪いようにはしないだろう、との信頼のもとに」取引をしたという。
当初の投資金額はAさんの分は1200万円だった。同年10月と翌02年1月に追加で約700万円分の債券ファンドも買った。以後、行員は1年ごとに買い替えを勧め、Aさんの投資金額は徐々に増えて行き、07年7月には、不動産投資信託証券のグローバルREITオープン6000万円分を借り換えて買わせた。これがサブプライムローンで大幅な評価損となり、分配金を相殺したAさんの損益は大幅にマイナスとなり、損失は約2000万円に達した。C氏もマイナスとなった。
こうしてAさんとC氏は11年4月、三井住友銀行を相手取り、損害の支払いを請求する裁判を大阪地方裁判所に起こした。
なお、法律上、Aさんの資金をC氏が代理して契約するためには、成年後見人になる必要があるが、その手続きはしていない。従って、Aさんは自らの意思、判断でファンドを売り買いしていなければ契約は成り立たない。そのため行員はアリバイづくりをしていた形跡があることが、裁判で明るみになった。
それは、三井住友銀行内部で作成している「コンタクト履歴」という書類に見られた。そこにはAさんが認知症であるにもかかわらず、明晰に話しているかのように記載されている。例えば、行員が「いいものがありますよ」と勧めると、Aさんは「兄と一緒に聞きます」と答えるといった具合だ。ほかにも、次のような記述が見られる。
「兄も売ると言っていますので、私もここで売ります。よろしくお願いします」
「私も兄と相談しながら、同じもので運用したい」
「(目論見書を)よく読んでおきます」
「はい、兄と同じように投資させてもらいます」
「私はいつも兄と同じ取引をしているのです。いつも相談しているのでね。預金で置いていても取り崩していくばかりで意味がないので、投信で運用しているのです。発展途上国より先進国で運用しているファンドで運用したほうがいいかもしれません」
「では、私もピムコ(※金融商品)を売却して、もう一度グローバルREITを購入しましょう」
Bさんによると、この履歴の中にはAさんがデイサービスに行っていた時間に、自宅でAさんと会っていたことになっているなど、少なくとも6回、虚偽の面談が報告されているという。「なぜ被告のような大企業で、このような虚偽の資料がつくられ続けるのか、不思議でなりません」とBさんは述べている。
対する三井住友銀行サイドは、「Aさんは自身の判断で取引をしていた」との一点張りだった。
●三井住友銀行の全面敗訴
13年10月21日、一審判決が下った。判決文には、医療機関の診断からみて、Aさんは「本件商品の各種リスクを理解することができる状態であったとは考え難く」「Cに投資信託取引を事実上委ねていることを認識していたかどうかすら相当疑わしい」として、「このような状態にある原告Aに本件取引を勧誘したことは、顧客の意向と実情に反して明らかに過大な取引を積極的に勧誘し、適合性原則に著しく逸脱したものというべきである」と断じた。
また、被告のコンタクト履歴については「Aの発言内容等について虚偽の記載をするなどその信用性は乏しい」と言及。そして被告に対し、Aさんへ2055万円の支払いを命じる判決が下った。この判決を下したのは大阪地裁第18民事部の佐藤哲治裁判長、諸岡慎介・鎌田育巧美裁判官だった。その後の控訴審で、三井住友銀行がAさんに2400万円を支払うとして和解に至った。
メガバンクであっても、このような事件が起きるということを消費者にぜひ知ってほしい。
佐々木奎一/ジャーナリスト
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